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「マーガレット大丈夫かい?」


 あの後アラン様と食堂へ移動した私は、目の前に 湯気が立ち昇るお茶を口にした。

 お茶を飲んだおかげで少し落ち着きを取り戻した私は、疑問に感じた事をアラン様に聞いた。


「アラン様、テリー卿はどんな方なのでしょうか」

「・・テリー卿は侯爵家の次男で確か、伯爵家の令嬢との婚約が破棄された方だよ」


 去年・・もしかしたらこの方との結婚が決まったからフローラは・・

 でもそうしたらなぜコンラッド様と?


「あの方、私とフローラを間違えたの・・私とフローラは似てない事で有名な双子なのに・・私を見て賢そうだって・・」


 あの目を思い出しまた身体が震える。

 アラン様は私の隣へ移動すると優しく手を握ってくれた。


「マーガレット、領地の父から手紙が来た。フローラの産んだ子が兄にもフローラにも似ていなかった。と・・」


 アラン様も気付いたのだろう。

 フローラの産んだ子の本当の父親はテリー卿なのでは無いのか?と・・

 でも確証はない!


「実は・・テリー卿にはある疑いが掛けられていて、もしかしたら二人は巻き込まれた可能性があるんだ。第二王子殿下とフレッドさん、俺とで調べてるんだけどこれと言った手がかりが掴めなくて・・」

「二人が・・巻き込まれた・・?」


 アラン様は頷いた。


「無いとは思うけど、マーガレットも気をつけて欲しい。相手は格上の貴族だ。何かあっても僕たちでは手が出せない。それに・・」


 真剣な顔で言われたら頷くしかない。それに、最後の言葉が聞き取れなかったし・・

 せっかくアラン様と会えたと喜んでいたのに、あの目を思い出す度に気分が悪くなってしまう。


「今日の事はお二人にも伝えておくから」


 馬車乗り場まで送ってくれたアラン様と別れ、母の待つ屋敷へと向かった。




 それから数日の間は特に何も起こらなかった。

 私は母と二人で買い物へ出掛けたり、フローレンス様に誘われて観劇を見に行ったりとそれなりに忙しい日々を送った。

 特に緊張したのは、公爵家で開かれたお茶会に母と呼ばれたこと。

 今後の私のためと、色々な方と交流を持たせて頂いたが・・


「お母様・・私たちやっぱり場違いよね?」


 と、毎回胃が痛む思いをした事は二人の秘密だ。

 そしてある日のお茶会で、


「今度我が家で二人のお披露目パーティーを開こうと思っておりますの。お二人にはぜひ出席して頂きたいわ」


 公爵夫人の言葉に集まった婦人たちが歓声を上げた。公爵家のパーティーは貴族の中でも最高で、演出、料理、招待客。どれを取っても最上級と興奮しながら教えてもらった。

 私とお母様は招待されても着て行くドレスもない為、諦めていた。のに?



「まぁぁ、マーガレット!見て見て!貴女のドレスが届きましたよ!」


 部屋で読書をしていたら、興奮したお母様が飛び込んで来た。

 お母様のドレスは公爵夫人のお下がり(と言っても生地も装飾も最高級)を頂き、今はサイズ直しに出している。

 私のドレス?


「フローレンス様のお下がりかしら?きっと素敵なんでしょうね!」


 なんて呑気に返すと、フローレンス様では無いけれどとても素敵よ!早くいらっしゃい!と、腕を引かれて応接室へと連れて行かれた。

 部屋に入るとトルソーに掛けられたドレスを見る。


「ふぇぇぇ、誰が着るんですか?こんな素敵なドレス」

 

 あまりの豪華さに近付くのも怖くなる。

 そのドレスは、見て分かる程の最高級ベルベットの深緑色の生地に金色と銀色の糸で刺繍が全体に施された物だった。

 お母様はクスクスと笑っていて、独占欲の塊ね〜 何て言っていた。


 深緑色はアラン様の瞳の色・・


 アラン様の顔を思い出し顔が熱くなる。

 その後、ドレスに合わせた装飾品と靴も届いたのだけれど・・とても見習い子息が買える代物では無かった。


「見てマーガレット。この宝石傷一つ無いエメラルドよ!アランさんはどうやって手に入れたのかしらね?」


 確かに何故である。

 変に見栄を張って借金したとあれば、この先何年かけて返済するのだろう・・

 嬉しいけど不安・・


 ドレスを前に困っていたら、


「ドレス届いたんだね!うわぁ、アランの欲が表れてるなぁ」


 笑い声と共にお兄様の声が聞こえてきた。

 私は赤くなった頬を両手で隠しながらお兄様を迎える。お兄様は胸元から一通の手紙を差し出し、


「アランから預かってきたよ。彼は今、マーガレットをエスコートする為に仕事を片付けてるから、待っててあげて欲しいな」


 私はアラン様の手紙を受け取ると、その足で自室へと走った。

 私はソファーに腰掛け息を整えると、ゆっくりと手紙を読み始めた。



 マーガレットへ


 あの日から忙しく連絡も出来ずごめん。

 バルディ公爵家のパーティーへ出席すると聞きました。

 僕からのプレゼントは届いたかな?

 君を誘うと決めた時、イエイン嬢に頼んでドレスを用意しました。相談もなく勝手に作ってごめん。

 でも、どうしても初めてのパーティーにプレゼントしたくて、気に入って貰えたら嬉しい。


 当日、そのドレスを着たマーガレットをエスコートさせてください。

 本当なら直接お願いに行きたかったけど、殿下とフレッドさんからの宿題を終わらせることが先だから、ごめん。

 返事はフレッドさんへ伝えて欲しい。

 はい か  ダメ でお願いします。

 

 出来ることならなら、良い返事を期待して・・


     アラン・フロイド



 私は立ち上がるとお兄様の元へ走り、


「お兄様!はい!です!はい!はいとお伝えください!」


 と、叫んでいた。





 

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