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15

 今舞台の上で繰り広げられているのは、次期伯爵とその婚約者による余興。


 領民たちが二人に拍手を送っている。

 フロイド領は今年豊作だったらしく、数年ぶりにお祭りを開催したらしい。


「少し見ない間に二人の距離が近くなったな」


 私の隣で舞台を見つめるアラン様は、感情も無く言った。


「叔父様たちとは会ったの?」

「ああ、この後領民たちに報告するらしい」


 アラン様の言葉が終わると同時に余興が終わったようで、先ほどよりも大きな拍手が湧き上がった。

 すると領主夫妻が舞台に上がったと思うと、二人を真ん中にして並ぶ。


「今年は皆の力のおかげで豊作となった。ありがとう。そして喜ばしい事にゾーロイ領の令嬢、フローラがコンラッドの妻となった。」

「なった?」


 領主の言葉に違和感を感じた。


なる! ではなくて なった。

 いつ結婚したの?


「更に後継にも恵まれた!どうか二人を温かく迎え見守って欲しい!」


 ワーーー!

と領民たちが盛り上がる。


 私はアラン様を見つめると、ただ黙って家族を見ていた。


「アラン、マーガレット。今から家族の話し合いが始まる。こちらにおいで」


 お兄様の言葉に従い二人で付いていく。

 屋敷の応接室にはお互いの家族が集まっており、

テーブルを挟んでフロイド家とゾーロイ家で分かれて座っていた。

 フローラもフロイド家の方に座っていて、それを見たお母様は良い顔をしていなかった。

 私とアラン様は少し離れた位置に用意された椅子へ腰掛けた。


「まずはゾーロイ卿、この度は息子コンラッドがフローラ嬢に対し申し訳ない事をした。本来なら筋を通すべきと思ったが既にコンラッドの子を孕んでいると聞きこのようにした次第だ。許して欲しい」


 とアラン様以外のフロイド家が頭を下げた。


「順番が逆だが二人の婚姻証明書の手続きをしたい。署名を頂けるか?」


 と、用意してあった証明書を出してきた。

 私の両親は差し出されたペンを受け取ったが机の上に置いた。


「まずはフローラ、なぜ我が家に帰って来ずにこちらの屋敷に来たんだ?あんな手紙で納得すると思ったか?親をバカにするな!コンラッドくんもだ!まずこちらへ挨拶するのが筋だろう!」


 お父様の怒りももっともだ。

 フローラを見ると真っ青な顔で俯いている。

 それを見たコンラッド様のお母様が肩を抱き、


「フローラさんは今、コンラッドの子を孕っています。どうか・・」


 フーッと息を吐くお父様。

 他にも言いたい事はたくさんあったが、安定期に入ったばかりと聞き落ち着かせた。

 しでかした娘でも大切な娘に変わりは無い。


「出来てしまったなら仕方ない。責任を取ってくれるならこちらも何も言わない事とするが・・フローラ」


 急に名を呼ばれビクッと肩を震わせる。

 なぜあそこまで怯えるのか?

 先ほどは舞台の上で元気に動いていたのに・・


「これでお前はフロイド家の人間となる。何かあっても戻る家は無いと思いなさい。お前がマーガレットにした事は人としてやってはいけない事だった。それは理解出来るな?」


フローラは黙って頷き、私に謝ってきた。


「我が家はこれに署名した時、フローラを勘当する事とする。良いか?戻る家はここしか無いと思いなさい」


 お父様とお母様がサインをする。

 コンラッド様の婚約者となる筈だった私は、フローラのおかげで婚約者を探さなくてはいけなくなった。

 が、不思議と悲しいとか悔しい気持ちは無かった。



 宴に参加して欲しいと言われたが、私たち家族は帰る事にした。

 その際お父様がフローラ達に


「明後日、フレッドが婚約する事となり相手の家族が来るから失礼するよ。」

「お兄様、婚約されるの?お相手は?」


 フローラが嬉しそうにお兄様に駆け寄る。

 お兄様は少し考えたが


「宰相閣下のご令嬢、フローレンス様だよ。」

「えっ?」

「ご縁があってね、婿入りする事になるだろう」


 そう言い残し馬車へと乗り込む。

 コンラッド様はお兄様を睨むように見ていた。

 フローラは詳しい話が聞きたいと、その場に同席したいと言ってきたが


「お前は今日、フロイド家に嫁いだんだ。直ぐに領地を離れる事は許されないぞ」


 と、お父様に一喝され黙った。

 私はそれを横目で見ながらも、領地に残るアラン様へ別れの挨拶をしていた。


「アラン様はいつまでこちらに?」

「明日には・・フレッドさんが王都に帰られる時に一緒に戻ろうと思ってるから。またゾーロイ領へ行くよ」


 私はまたアラン様に会えるのが嬉しくて


「お待ちしてますね」


 と言い残し馬車へと乗り込んだ。


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