12 コンラッド
俺に領地の経営が出来ないことは、同期のフレッドと一緒に勉強した時に分かった。
それでも子爵家の嫡男、誰かに任せる訳にもいかずフレッドの父に教えを乞う事になった。
初めて領地を訪れた時、小さな子がフレッドの隣に座っていて、
「初めましてコンラッド・フロイドです。お名前は?」
と聞くと、しっかりとした礼を取りながら
「マーガレット・ゾーロイと申します。今日はお兄さまにお願いしてご一緒させて頂きます。」
彼女は弟のアランより二つ下と聞いた時も驚いた。とても勉強熱心で、領地経営もすでに理解しており純粋にこの子が来たら楽出来るのでは?と思った。
その後は両親に話し、両親からゾーロイ家に婚約の打診をして貰った。
すぐに結べると思った婚約も、ゾーロイ家からはあまり良い返事をもらえなかった。
(何故俺を断る?どの令嬢も俺の妻になりたいと言っているのに)
自分から行くのがバカらしくなり、ゾーロイ家には行かなくなった。
その内ゾーロイ家から婚約の話をしてくるだろう。そう思っていたが一向に話が来ない。
学園も卒業し、そろそろ領地に帰らなければいけないのに。
フレッドは優秀だったから第二王子殿下の目に留まり、卒業後も側近として働く事が決まった。
何故かアランもフレッドの目に留まり、卒業後は王宮務めが決まったと聞いた。
(何がいけなかった!俺なりに一生懸命に努めたのに)
マーガレットが学園の入試のため王都へ来たと聞いた時、俺の婚約者になるよう説得する為にゾーロイ家に向かった。
そこに居たのはフローラだけで、会わない間に綺麗になっていて驚いた。
小さな頃からマーガレットと違って可愛らしい容姿をしていたが、これはこれで・・
そこからはそれなりに楽しんだ。
田舎領地から出た事が無かったフローラは、何処に連れて行っても素直に喜んだ。
少し着飾らせてパーティーに連れて行けば、その容姿に皆が見てきた。
気分がよかった!
フローラも楽しんでいた。
でも、同級のフレドリックが何故かマーガレットにに目を付け、寄越せと言ってきた。
マーガレットは真面目でしかも、フレッドとアランが守っていた事もあり近づけなかった。
フレドリックに借金をしていた俺は、あいつの要求をどう断るか!しか考えれなかったそんなある日。
フレドリックから仮面パーティーをするからマーガレットを連れて来い!と手紙が来た。
俺は何度も断ったが、
「何度も伝えたけど、今度仮面パーティーを我が家で開催する。彼女を連れて来てくれないかい?これはお願いじゃ無いよ」
無理なら借金の事をを両親に伝えるしか無いね。
決定打だった。
高位貴族と近付きたいフローラに伝えれば、何の疑いもなく着いて来た。
俺は内心
[今回はあの薬は使わないよな?]
と思いながら嬉しそうな顔で着いてきたフローラを見つめた。
まさか、未婚の女性に対しあんな事をするなんて思いもせず・・
「コンラッド様、子供が出来ました。フレドリック様の所へお連れください」
恐れていた事が起きてしまった。
あいつは結婚が決まっていて、子爵家のフローラを妻にするつもりは最初から無い。
そう、最初から遊びだったんだ・・
「責任は・・俺が取る。俺の子として両親には伝えよう。だからフローラもこの事は・・」
「誰に言えると思っているの!?最初から私を騙して・・」
泣きながら責められると、可愛いと思っていたフローラも煩わしく思う。
でも、フレドリックに
「君が彼女の責任を取ってくれたら、借金はチャラにするよ」
そう言われては受け入れるしか無い。
領地の両親には伝えた。
フローラに私の子供が授かった。結婚を許して欲しい・・・と。