1
新連載です。
読んで頂けるよう頑張ります!
喝采を浴びる二人の男女。
領地での豊穣祭で披露された演劇に、領民達からの拍手が鳴り止まない。
注目を浴びているのは領主の息子とその婚約(予定者)の姉。
いずれは家族になる二人だが、何故かその距離が
「近いよね」
「!!!」
私の心を読まれたのか?声のした方を振り返ると、領主の次男がすぐ横に立っていた。
「アラン様・・そんな事を言ってはダメよ。今日は豊穣祭で、神に感謝する日なのだから・・」
「・・」
アラン様は何も言わず、私の横で喝采を浴びている二人を一緒に眺めていた。
私ことマーガレット・ドーロイとフローラ・ドーロイは双子の姉妹だ。
私と婚約予定であるコンラッド様は、兄フレッドと学園で親しくなりその縁で真面目でおとなしい方の私と、婚約を結ぶ話になっている。
いずれ爵位を継ぐコンラッド様は、自分一人では領地運営は難しい!との判断で、休みの日に兄と一緒に経営を学ぶため我が領地へと遊びに来た。
その際、兄と一緒に領地経営を学んでいた私に目を付けたのか?領地経営が出来る事が良かったのか悪かったのか・・
翌年にはコンラッド様のご両親からも婚約の打診を受けてしまった。
ただ、我が家族は正直あまり旨味の無い話しだったのか?私がまだデビューする年齢では無く、学園も入学していない事を理由に「保留」として話を進めてくれた。
もちろん婚約するにあたり条件を付けて。
① 学園は必ず卒業すること
② 年一回は学園の休みに我がドーロイ領へ経営を学びに来ること
③ マーガレットと共に学ぶこと
④ マーガレットを一番に考え、想い行動すること
これが、婚約する条件となった。
学園は13歳〜18歳までの五年間。
最初の二年は皆同じクラスで学び、その後の二年は普通科と騎士科に別れ残り一年は特別科と普通科と別れる。
特別科は普通科の中でも特に優秀とされる五名で、卒業後は王宮務めが、しかも王族の側近となる事が確定するクラスだ。
お兄さまとコンラッド様は普通科へと進む。
そしてその年にコンラッド様の弟、アラン様が入学された。
アラン様は伯爵家の次男で継げる爵位も無いため、下っ端でも良いから王宮で働きたいと言っていた。
お兄さまの話では、アラン様はコンラッド様とは違いとても優秀で、第二王子殿下も目を掛けていると聞いたのは領地経営を学んでいる時だった。
「アランには才能がある。特別科に入れたら間違いなく王宮の、第二王子の側近になれるだろう」
と話してくれた。
もちろんコンラッドには内緒だよ。と、付け加えて。
「マーガレットにはコンラッドでは無くアランと婚約を結んで欲しいくらいだけど、殿下が離さないかも知れない。それくらい優秀なんだよ」
「でも、私はコンラッド様のが見た目は好きよ。だってアラン様は地味ですもの。お顔が・・」
「まぁフローラ、アラン様は素敵な方よ!ただコンラッド様に遠慮してお顔を隠しているだけだわ」
兄が来年入学する私たちの願書を受け取りに帰宅した、ある日の夕食の時だった。
「私は学園で将来の旦那様を見つけるわ!もちろん王都で暮らせて毎日夜会へ行くの!だから高位貴族の子息か、お金持ちなら低位貴族でも・・」
「フローラは何しに学園へ行くんだい?残念ながら高位貴族の子息たちは、ほとんどが婚約者がいるんだよ。いないのは継ぐ爵位がないか本人に問題があるか・・」
「フローラ、お願いだから問題だけは起こさないでね。我が家は子爵位だけど、貴女の行動でフレッドにお嫁さんが来ないのは困るわ」
母は真剣に悩んでいる様子だ。
兄は来年特別科へ入る予定になっている。
そして、卒業後は第二王子殿下の元で働くことも・・その事で最近ではコンラッド様が兄と距離を置いているのか?我が領地にも顔を出していない。
「お兄さま、少しお時間良いかしら」
夕食後に兄へと声を掛けると、そのまま兄の自室へと向かった。
コンラッド様の話が聞きたかったから。