表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/10

第9話『冒険の終わり』

 遠くから見守る俺の目の前で。

 ついに、マルシャナの剣が魔王の胴体を貫いた。

 俺が生み出したものであるその剣が、魔王の心臓まで届き、ついに魔王を消滅させたのを、俺はこの目にしっかりと焼き付けた。

 きっと、俺は今の光景を生涯忘れないだろう。


 ……永い、永い冒険の旅だった。

 あの娘が魔王を討伐してくれたこと。

 そして俺の作った剣があの娘の力になれたこと。

 そのことが武器屋として、そして一人の男として、とてつもなく嬉しいぜ。


 マルシャナに駆け寄ってよくやったと褒めてやりたい。……ずっと一人で戦ってきた彼女を強く抱きしめたい!


 ……そんな衝動を、柱の陰でぐっとこらえる。俺は、ただの武器屋だからな。


 魔王を倒した余韻がまだ抜けきらないのか、マルシャナはしばし呆然としていたものの、やがて剣を高く掲げた。

 俺が作った剣に向けて何かを囁いているのが分かる。とても優しげで、そして誇らしげな表情だ。ひょっとして、ねぎらいの言葉でもかけてくれているのだろうか。だとしたらこれ以上ない喜びだ。

 先ほど抱きしめたいなんて思ってしまった自分が恥ずかしいぜ。俺にとっての報酬は、それだけで十分だ。


 ……おっと、まずい。このままだと鉢合わせしちまう。場所が場所だし、さすがに今回は、通りすがりの行商人です、と言っても信じてもらえそうにないからな。

 急いでここから離れるとしよう。


 じゃあな。

 村でまた会おうぜ。

 ただの武器屋として、笑顔でお前のことを出迎えることにするよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ