第8話『魔王の城』
魔力がこめられた剣を手にしたマルシャナは、ふたたび遭遇したあの硬い虫型モンスターも瞬く間に倒していた。
もちろん未知のモンスターもまだまだ現れたが、彼女は大して苦戦もせずにあっさりと斬り伏せていく。
俺が作った剣が、彼女の力を最大限に引き出しているのが分かる。
ようやく、勇者としての彼女の実力に、俺の鍛冶の腕が追いついたのかもしれない!
そしてついにマルシャナは魔王の城にたどり着いた。
魔王が住むというだけあって、おどろおどろしさだけでなく、一種の気高さや荘厳さが感じられる城。
しかしマルシャナは臆することもなく、堂々と正門から乗り込んでいく。
ここまで来たら、あとはもうあの娘の活躍を見守るだけだ。
必ず、魔王を倒してくれると信じている。
そんなことを考えている俺の周りを、いくつもの影が取り囲んだ。それぞれが、獲物をどうやっていたぶってやろうかという残忍な気配を放っている。
……あの娘が魔王との闘いを邪魔をされないよう、後顧の憂いくらいは断っておくか。
俺は体の向きを変えながら、腰から剣を引き抜いた。
これは先日折れてしまった剣を元に、一から鍛えなおしたものだ。マルシャナのおさがりだと言えるかもしれない。
今のマルシャナの剣と同じように魔力も込められている。世界で二番目に強い剣と言ってよいだろう。一番は、もちろん言うまでもない。
周囲のモンスターをぐるりと見まわす俺。
どいつもこいつも、巨大な体躯に恐ろしい面構えをしている。
魔王の城にいるということは直属の配下たちだろうに、負ける気がまったくしない。
俺も、旅を続けてずいぶんと強くなったもんだ。
呆れたような笑みが自然と浮かぶ。
笑う俺が癇に障ったのか、モンスターたちは威嚇するかのように四肢を震わせ、口から異音を発する。
俺は、武器屋が使うにはもったない剣を構え、武器屋が吐くには勇ましすぎる言葉で啖呵を切った。
「かかってきな。お前たちは俺がまとめて相手をしてやるぜ!」