第6話『やらかした!』
やばいやばいやばい!
今日の俺は目覚めてからずっと、これ以上ないくらいに慌てていた。
うっかり寝過ごしてしまい、マルシャナの姿を見失ってしまったからだ。
急いで次の街にやってきたのだが、結局それまでに彼女を追い越すことはできなかった。
つまり、すでにマルシャナはこの街に入っているということになる。
彼女が向かう先はいつものように、武器屋に決まってる。
周りの人に武器屋の場所を尋ねながら、俺は息も絶え絶えで走り続けた。
……いた!
マルシャナの後ろ姿が見えた。ちょうど、武器屋の前だ。
「……すみません」
店員がいないのか、奥に向かって声を張り上げている。
くっ……こうなったら非常手段だ! 裏口から入って……。
「はいはい、少々お待ちくだ……はうっ!?」
出ていこうとしていた武器屋の主らしき男が、どさりと床に倒れ伏す。
へっ、こんな時のために麻酔針の吹き矢を用意しておいて正解だったぜバーローwww
「はいはい、お待たせ。ここは武器の店だ。どんな用だい?」
俺は何食わぬ顔で、いつものように一般的な武器屋の口上を述べながら彼女の前に姿を現した。
「新しい武器、買いたい……。見せてもらえる?」
「これなんかはどうだ?」
取り出したのはもちろんこの店で売っている武器ではなく、俺が作り出した武器だ。
売り上げを奪ってすまん、と心の中で店の主人に詫びておく。
いつものように、彼女は俺が差し出した武器を気に入ったようで、満足げにうなずいた。
「これにする……」
「まいどあり、お代は6000ゴールドだ」
「今使ってる武器があるんだけど、引き取ってもらえる……?」
「もちろんだ。そのぶんを代金から引いておいてあげよう」
「ありがとう……」
「こちらこそ、お買い上げありがとな!」
「……」
買い物も終わって、もう用はないはずの彼女が、首を少しかしげてこちらを見ている。
……まさか、何か違和感を覚えたのだろうか?
気を失ったままの本物の店主を背後に隠している俺としては、気が気じゃない。つ、通報とかされないよな……?
動揺を必死に押し隠しつつ、俺は口を開いた。
「……他に買いたいものでもあるのかな?」
「……ううん、なんでもない……」
幸い、本当になんでもなかったのか、彼女は俺に一礼するとそのまま去っていった。
「ふう、やれやれ……」
さすがに今回のような失敗はもう二度としないようにしなきゃな。
麻酔の時間もそろそろ切れるはずだ。
俺は店主が目覚める前に、そそくさと立ち去った。