第3話『まずは下準備を済ませておく』
ようやく目的の街についた。
このあたりでは一番活気があって大きな街だ。
途中でマルシャナを追い越したので、彼女の動向が分からなくなって少し不安だがしかたない。俺には前もってやるべきことがあるからな。
なあに、あの娘もここに必ず立ち寄るはずだ。そして新しい武器を求めるだろう。市販の武器を買われてはたまらない。俺が作った武器を買ってもらわなければ。
というわけで、のんびりと見物している暇はまったくないわけだ。両頬を叩き、街の雰囲気にウキウキしそうな自分に活を入れた。物見遊山は魔王を倒した後にしろ。
ここの武器屋がどれほどのものか知っておきたいし、それに俺自身の店を準備しないといけないしな。
どうやってあの娘に自然ななりゆきで武器を買ってもらうか、道中色々と考えていたが、やっぱり屋台を借りて営業するのが一番簡単だろうという結論になった。
屋台の前に看板を出し、武器を並べておけばそれっぽくなるだろう。
まずは宿を確保しよう。
そのあとにこの街の武器屋を探して品質をチェックする。
もし俺の鍛冶技術がこの街のそれに劣っているようなら、俺の旅はここで終わっちまうかもしれない。
俺も自分の腕に自信はあるが、井の中の蛙という可能性もある。それに、達人というやつはどんなところにもいるものだからな。
屋台の営業許可も役所でもらわないといけないし、今日は忙しくなりそうだ。
俺は足早に歩きだした。
その日の夕方、やるべきことを終えた俺は街の入口近くにある軽食屋にいた。
飲み食いすることもここに来た理由の一つだが、一番の理由はもちろん人の出入りをチェックし、あの娘が無事にこの街にやってきたかどうかを知るためだ。
入口に目をやりながらパンを頬張っていたところ、マルシャナが街に入ってきたのを見つけることができた。
とりあえず一安心だ。
さすがに疲れているようだし、あの娘も今日は宿をとってゆっくり休むだろう。
明日になったらおそらく武器屋を訪れるだろうから、俺もそれまでに準備を済ませておかなくちゃな。