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第2話『付かず離れずの距離で』

 そういえば、勇者ってのは何人もいるらしい。

 一つの村、一つの街ごとに勇者がそれぞれ一人ずつ選ばれ、旅立っていると聞く。

 そしてうちの村で勇者として選ばれたのが、マルシャナだったということだ。


 魔王の根城に到達するまでに訪れるはずの各街にはもちろん武器屋があるはずだが、勇者たちはそこで装備を整えるだろう。

 あの娘にはそういった武器屋で買い物をするよりも先に、俺の武器を買ってほしいところだが……。

 武器屋の隣に屋台でも立ててみるか? ……営業妨害になるかもな。


 そんなことを考えながら、俺は少し先を歩く小さな後ろ姿を見つめた。

 俺はマルシャナに気づかれぬよう、しかし見失わないよう、付かず離れずの距離で尾行を続けている。


 村から出てしばらくは安全な道中が続いたものの、さすがにずっとモンスターに遭遇しないということはなく、彼女はたびたびモンスターとの戦いに巻き込まれていた。

 ここに至るまで、あの娘がモンスターと戦っているのをずっと物陰から見ていたが、最近は少しずつ苦戦し始めている。

 初めのころのモンスターは一撃で倒せていたが、最近は二撃でも致命傷にならないことが目立つ。

 村の近くでは見たことのなかったモンスターが増えてきたからな。今使っている剣ではそろそろきついってことか……。さすがにちょっとショックだ。自信作だったのに。


 ちなみに俺も、彼女ほどの頻度ではないがモンスターに襲われて戦うはめになることがしばしばあった。一応戦いの心得は最低限あるのでなんとかなっている。それに、俺が進む前に彼女がそこら一帯の敵を倒していることが多いからな。

 とはいえ、やはりモンスターと戦うのは生きた心地がしない。

 とつぜん勇者に選ばれた彼女は、いったいどんな気持ちで剣を振るっているのだろう?


 色々と不安を覚える旅路ではあるが、それでも俺は合間を見つけて、持ってきた鍛冶道具一式で新しい武器を作っている。

 モンスターの部位から使えそうなものをはぎ取るのに加えて、希少な鉱石を採取したりして、新たな素材を手に入れることも抜かりない。

 おかげで、村にいた時より格段に良いものを作れそうだ。

 今作っている武器が完成すれば、きっとあの娘の戦いも少しは楽になるだろう。

 次の街に着いたあたりでどうにかして買わせたいものだ。

 待っていてくれ。

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