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夏休み短編1 すいません大将

 これは、私の高校二年生の夏休みの記録の一つである。

 この世の中には、私の知識の埒外にある性癖が無数に存在しており、実際私が会ったことのある異常性癖者だけでも、驚かされるものばかりであった。

 今から紹介する人物も、私の知らない性癖を有する者だ。

 彼の性癖は【Sitophilia】と呼ばれるもので、日本語で【食物性愛】と言うらしい。

 曰く、飲食物の咀嚼や、塗布したり、ぶち撒けたりする行為に性的興奮を見出す性癖との事だ。

 この高校二年生の夏休みに出会ったその【すいません大将】は、人が料理を食べている様を見ると興奮する性癖の持ち主である。


 詰まる所、『いっぱい食べる君が好き』ってやつだ。


 これは、そんな異常性癖者のお話。


……………………


 茹だるような湿気と蝉の大合唱、照り付ける陽差しと焦げ付くアスファルト、遥か前方で揺らめく陽炎が、綿飴みたいな入道雲と、その足元の家や木々を霞ませては揺らしていた。

 毎年ニュースで猛暑だ、気温上昇だなんだと騒がれているが、調べてみると我が国の平均気温は百年間でプラス一度程度にしか上昇していないそうだ。

 本当かよ。

 まあ、そんな緩やか過ぎる右肩上がりのグラフより、暴落する日経平均株価の右肩下がりのグラフに注目していた方がより建設的だし、ある種寒気も覚えて夏には丁度良いのかも知れない。

 まあ、何が言いたいかというと、とにかく暑いという事だ。

 例年夏休みと言えば、私にとっては引きこもり休暇と言っても差し支えないレベルで引きこもっており、陽が沈んだとしても極力外に出ないよう努めていた。

 冷房をガンガンに効かせた部屋で氷菓を貪っては寝て、本を読んでは寝て、テレビを見ては寝ての繰り返しだった。

 しかし、今年はどうも引きこもり続けている訳にもいかなくなってしまったのだ。

 理由は幾つかある。

 一つは、私が五月にアルバイトを始めたという事。

 数年前流行っていた感染症は鳴りを潜め、皆以前と変わらず外に出て学校に通い、又は仕事に勤める風景が日常となっている。勿論私も例外では無く、アルバイトをするには外に赴かなければならない。

 もう一つ、友人が増えた事。

 増えたと言うか、今年になって生まれて初めて友達が出来て、そして現在急増している。彼ら彼女らは度々私を外に呼び付けては、あちらこちらに連れ出してくる日々だ。

 まあ、本当に迷惑だったり、嫌だったら断るから、これに文句を付けるのは御門違いか。

 そして最後に、これが何よりの問題だった。

 母がこの夏の間、長期出張をしなければならなくなったという事だった。

 元々うちの家は共働きで、父は北海道で単身赴任、母は東京で働いているのだが、急遽出張に行かなければならなくなったとの事だ。

 普段料理は母が簡単なものを作って置いておいてくれていた。

 勿論用意できない時もあったし、私が致し方なく用意する時もあった。

 しかし、今回はレベルが違う。

 まず私が食材を買いにスーパーに行かなければならないし、母が居ない間に日用品が無くなったら買い足さなければならない。食事の用意も、家全体の掃除も私の仕事だ。

 詰まる所、家を出る機会が例年の何倍以上にも膨れ上がっているという事だ。

 これは由々しき事態である。

 私はそもそも料理が好きでは無い。

 何故かと言うと、興味がないからだ。

 美味しいものは好きだし、同年代の女子と比べてよく食べる方だが、あれこれ食材を用意して、調べて、凝ったものを作ったりなんてのは面倒で嫌いだ。

 野菜なんてカットサラダで十分だし、包丁は疎かフライパンなんて使いたくもない。

 しかし、貴重なビタミン源であるサラダも、買ってから二日程度しか消費期限が保ないので買い溜めも出来ない。サプリメントで補おうとも考えたが、あれは高く付くし母が置いて行った生活費を使い込み過ぎるのも良くない。

 とにかく、最悪だ。

 なんて事を考えながらリビングのソファで横になっていたら、もう昼時をとっくに過ぎてしまっていた。

 十四時過ぎかあ……。

 何か食べるものはないかと冷蔵庫を開けるが、がらんとしていて、ある物と言えばドクターペッパーくらいのものだ。

 仕方がない……買い物ついでに何処かで外食でもするかな……。

 私はテーブルの上に放り投げてあった財布を掴んでポケットにしまい、家を出ようと玄関に向かうが……。

 あ、寝巻きのままだ……まあ良いか。

 長期休暇の間は、学校の体操着を寝巻きとしているので外出する分にも問題ないだろう。それに近所でご飯食べてスーパー行って帰るだけだし。

 適当なサンダルを履いてドアを開けると、熱された空気が顔に飛び込んで来て大変不快だ。

 本当に暑いな、どうせ夏休みが明けた所でまだ暫くは暑いだろうし……私が外に出る間だけ太陽消滅してくれないかなあ。

 さあ、そんな事はさておき……なるべく外にいる時間を減らしたいので、ここから一番近いスーパーへの最短ルート上にある適当な飲食店へ入ろう。

 サンダルの底が焦げ付いて剥がれるんじゃないかってくらい熱そうなアスファルトの上を、ペタペタ音を鳴らしながら歩く。

 程なくして、一軒の定食屋さんが見えてきた。

 あー……そういえばここ入ったことなかったな。

 パッと見た感じはよくある昔ながらの定食屋さんって感じだが、外観はまだ新しい感じだ。そういえば数年前に出来たばかりだったかな。

 そして、少し変わっているのが店名。入り口に暖簾が掛かっており、そこには【食事処 すいません】と大きく書いてある。

 変わった名前だなあ。とりあえず暑いから入るか。

 ガラス格子の引き戸をガラリと開けると、涼しい冷房の風が漏れ出てくる。

 よし、いいぞ。こういう自営業っぽい飲食店は冷房がちゃんと効いてない所が多いからな。

 「いらっしゃい!どーもすいません!」

 とカウンター席の奥の厨房にいる店主と思われる男性が大きな声で挨拶してくる。

 なんかいきなり謝られたな。

 特にその時は気にする事も無く、とりあえずカウンター席に腰掛ける。

 十四時半になろうかって時間という事もあり、客は私一人だけだ。落ち着いて食べられるな。

 卓上にあるメニュー冊子を手に取り、広げてみると……なんだこれは……。

 よくわからないのだが、チキンカツ定食とか、唐揚げ定食とか書いてある横に、値段が二つ記載されてあるのだ。

 例えばチキンカツ定食なのだが、黒文字で七百円。そしてその隣に赤文字で三百五十円と書いてあるのだ。

 訳がわからないな。

 「あの、すいません」

 「はい、すいません!ご注文で?」

 と、またすいませんと謝りながら大将がこちらにやってくる。

 短く切り揃えた黒髪と、太った大きな体が特徴の優しそうな人だ。歳は三十代くらい。何故かとにかく申し訳なさそうな顔をしている。

 「あ、えっと……なんで値段が二つ書いてあるんですか」

 メニューを彼に見せながら、指を差して尋ねてみる。

 「ああっ!すいません!一ページ目に説明が書いてありまして!ほんと、すいません!」

 む、何か見落としていたか。

 言われたところを見やると、『黒文字の値段はお一人様で一人前のお値段。赤文字の値段はお一人様で三人前のお値段です。すいません!食べきれなかったら、三人前のお値段頂戴いたします!すいません!』と大きく表記されている。

 三人前?一人で通常の三倍量食べただけで半額になっちゃうのか?どうなってるんだ。

 しかも残してもそのまま三人前の料金で勘弁してあげてるのか?大丈夫かこれ。

 とりあえず、メニューにある写真を見やるに、私的には一人前だと全然足りなそうに見えるので……。

 「あー……じゃあ、チキンカツ定食の三人前の方で……」

 「はい!チキンカツ定三人前一丁!すいません!」

 元気よく謝りながら、大将は料理に取り掛かる。

 不思議な店だなあ、メニューも大将も。

 三人前が一丁なのがもう不思議だ。

 このご時世、定食一セット七百円も結構安い方じゃないか?よくやるなあ。

 適当にメニューを捲っていると、『お持ち帰り用のタッパーあります!』との文言が書かれているのを発見する。挑戦して残していく人が多いのだろう。

 「あ、お客さん!今日暑いんで!良かったらこれ!」

 すると、突然カツを揚げていた店主が、そう言って奥からサイダーのペットボトルと小さめのグラスを渡してきた。

 「えっいいんですか」

 「ええ!すいません!どうぞどうぞ!」

 「はぁ……ありがとうございます」

 なんかサービス精神豊富だなあ。

 店内は綺麗だし、テーブルと、カウンターにも等間隔でティッシュと使い捨ておしぼりが備え付けられている。ラーメン屋とかもそうだけど、飲食店にこれあるの結構ありがたいんだよな。

 他にも、『女性用の髪留めあります!』とか、『紙エプロンあります!』とか書いてある張り紙があちこちにあるし。

 あ、今のうちにトイレ行っとこ。

 席を立ってトイレに入り、ふと洗面台の方を見やると驚かされる。

 なんか……アメニティが沢山ある……。

 マウスウォッシュに始まり、綿棒や爪楊枝、果てはポケットティッシュやあぶらとり紙、ヘアピンまで常備されている。

 なんだこれ、高級ラウンジか?いや、行ったことないけどさ。

 爪楊枝なんかミントのフレーバーが付いてるやつだし……この店赤字なんじゃないか?

 首を傾げながら用を足して、席へ戻ると丁度定食が出てきた所だった。

 「すいません!お待たせ致しました!すいません!」

 いや、全然待ってないですよ。と思ったが、口には出さずに定食に目を落とす。

 うん、まぁまぁの量だな。余裕で食べれそうだが、やはりこれで三百五十円はやり過ぎだ。

 まぁでも、ここは有り難く頂くとするか。

 「いただきます」

 「はい!すいません!」

 ほんと、なんで謝るんだこの人。

 とりあえずはチキンカツを頂こう。

 私はソースよりは塩派なので、置いてある卓上調味料から塩の瓶を選んでカツに振り掛ける。

 「あっ大きかったら小さくカットしますんで!すいません!」

 と言ってくれる気遣い上手な大将に軽く会釈して、私はチキンカツに齧り付く。

 ん〜。美味しいなあ。

 揚げたてサクサク。鶏肉もジューシーで下味もしっかりされてるから少量の塩でもめちゃくちゃ美味い。

 ふんわり極細にカットされたキャベツの千切りも良く合う。今時期高騰してるマヨネーズはたっぷりと、そしてトマトも半分量くらいカットして添えてくれてるし、言う事無しだな。

 む、?これ味噌汁かと思ってたら豚汁じゃないか。しかも肉も野菜もゴロゴロ入ってるぞ?

 ほー、いいじゃないか。こういうのでいいんだよ、こういうので。

 終いにはきゅうりのヌカ漬けまで大変美味で、至れり尽せりの定食に箸がもの凄い勢いで進んでしまう。

 「お客さぁんっ!良い食べっぷりですね!すいません!」

 「……はあ、どーも」

 なんか、大将がめっちゃ笑顔で喜んでるなあ。

 「あっ!ご飯!お代わり無料ですよ!」

 と今しがた私が食べ切ってしまったご飯茶碗を見た彼が声を掛けてくる。

 「へぇ、じゃあお願いします」

 「はい!すいません!」

 大将に茶碗を手渡すと、最初来た時よりも大盛りになって返ってきた。

 ありがてぇ。

 「いやあ!良い食いっぷりだあっ!お客さぁんっ!賄いでポテトサラダ作り過ぎちゃいましてねえ!良かったらどうですか?」

 「え?……ああ、じゃあ」

 「はい!すいません!」

 そう嬉しそうに返事をした大将は、奥から山盛りになったポテトサラダを差し出してくる。

 おい大丈夫かこれ、私太らされて食われるんじゃないだろうな。

 まあなんか凄い喜んでるし、素直に受け取っとこう。

 ポテトサラダは刻んだニンジンとパセリで軽く彩りを入れてる程度で、あとは角切りにしたベーコンが主な具材だ。私はポテトサラダに入ってる玉ねぎやきゅうりが好きじゃないのでこれは凄く嬉しい。ベーコンも軽く炙ってあって、賄いとは思えない丁寧な仕事振りが伺える。

 「美味しいです」

 「そいつぁ良かった!誠にすいません!」

 その後、全て綺麗に平らげた私は驚愕の三百五十円だけをレジで支払う。

 この際サイダーとかポテトサラダの料金上乗せされても文句言えないレベルだったけど、本当に三百五十円とはな……ここなら家から二、三分だし、量は多いのに安いから食費は浮くし……また来よう。

 「ご馳走様でした」

 「毎度!すいませんでしたー!」

 ついに大将が「ありがとうございました」と言う事は無く、私は店を後にした。

 いやあ、最高だったな。偶には外に出てみるものだな。

 今度エイミーにも教えてあげよう。


 あの後、スーパーで買い物をした私は、買い物と掃除だけでなんだか一日やり切った感がして料理を作る気になれなかったので、本日二回目の【すいません】に向かうことにした。

 最早量とか関係なく味が美味かったな。麻薬でも入ってるんじゃないだろうか。

 やたらすいませんを連呼する大将も面白いし。

 サービスを期待する程浅ましくもないが、あんなのサービスが無くても百点満点だろう。

 現在時刻は二十時過ぎ、比較的夜は気温も低いので私は昼間より軽い足取りで定食屋へと向かう。

 引き戸を開くと、この時間は流石にお客さんで一杯だった。

 仕事帰りのサラリーマンや、地元のおじ様連中が所狭しと座って呑んだり食べたりしていて大変な賑わいを見せている。

 さらっとメニューを見た限り、他の料理やお酒もかなり安い部類だから人気なんだろうな。

 「あれぇっ!お客さんっ!また来てくださったんですか!すいません!」

 「はい、お昼はどーも」

 私を見て嬉しそうにする大将に軽く返事して、私は空いているカウンター席に座る。

 「可愛いお嬢ちゃんだねぇ。こんな所で一人かい?」

 と、右隣に座っている四十代くらいのほろ酔いサラリーマンが声を掛けてくる。

 「はい、昼間来たら美味しかったので」

 「あ〜、わかるよ、ここうめぇよなあ。二年前にここ出来てから、俺しょっちゅう通ってて、十キロも太っちゃったよ」

 「いやあ、ほんと毎度すいません!」

 ぽんと腹を叩いたサラリーマンに、大将は嬉しそうな顔で謝っている。

 しかし、ふと思えば私もかなり対人スキルが高くなってきたな。以前だったら、いきなり初対面の人に話しかけられたら「はあ?」って顔して適当にあしらっていたかもしれない。

 まあ、相変わらず愛想は無いんだけどね。

 「お前何女の子に声掛けてんだよ」

 「一人でいるんだぞ?珍しくて声掛けちゃったんだよぉ」

 と腹太鼓さんの隣にいるハゲのサラリーマンが楽しそうに話している。大衆食堂って感じだなあ。

 「お客さん!何にしますか!」

 と大将が厨房から尋ねて来る。

 ん〜、どうしようかなあ。

 「君、ここの餃子、食べた?」

 と、私が悩んでいると今度は左隣の細身で眼鏡を掛けたサラリーマンが声を掛けてきた。

 「いえ、まだ食べてませんが」

 「まじ、ここの餃子、本当に美味……ぶっ飛び、ぶっ飛び」

 とボソボソと喋りながらメガネをくいくいと上げるサラリーマン。この町は変な人がいっぱい住んでるんだなあ。

 「じゃあ、餃子定食の三人前で」

 と、私は大将に向かって注文する。

 「はいよぉ!餃子定三人前一丁!すいません!」

 と返事をした彼は、意気揚々と厨房へ引っ込んでいった。

 流石に夜はこの繁盛具合というのもあって、二人程アルバイトが居るみたいだ。

 「お嬢ちゃん、ここの三人前やばいよ?一人前だってあんなの他所だったら二人前レベルだよ?」

 と腹太鼓さんが心配そうな顔でそう言ってくる。

 「あ〜……昼食べたチキンカツの三人前は行けたので、多分大丈夫だと思います」

 「へぇ〜!凄いねえそんなに細いのに」

 私の言葉に腹太鼓さんは目を丸くする。

 「君、ファイター?」

 と、今度はメガネさんが眼鏡をくいくいと直しながらよく分からない事を聞いて来る。

 「は?ファイター?」

 「フードファイターのこと。大食い対決とか、やってる感じ?」

 あ〜、テレビで偶に出てるのを観たことがあるな。

 「いえ、特にそういうのは……」

 「じゃあ、野生のファイターだ。ぶっ飛び、ぶっ飛び」

 何言ってんだこのメガネ。

 「あ!お客さぁんっ!これ良かったら」

 と今度は大将がコーラの瓶とグラスを手渡して来る。

 「いや、ちゃんとお金払いますよ」

 「いやぁっ!日に二度も来てくれたんで!嬉しくて!すいません!」

 一度目からサイダーくれたでしょうよ。

 まあ、本当に嬉しそうなんで私はとりあえず受け取っておくことにした。

 暫く腹太鼓さん達や、ぶっ飛び眼鏡さんがやたら話しかけて来るのでそれを適当にあしらっていると、料理が出来上がったようだ。

 「はい!おまちどぉ!すいません!」

 大将がそう言って出して来た餃子には圧巻だ。大体どこの店も餃子一人前だったら五、六個が相場だろう。それがなんとこの餃子定食、ぱっと見る限りでも円盤焼きにされたものが三十個は重なって乗っているぞ。

 「おお……いただきます」

 「はいよぉ!すいません!」

 私は手を合わせてから、小皿に醤油を垂らし、そこに餃子を付けてまずは一つ口にする。

 おお……うますぎて、心がついていけない。

 なんだこれは、とんでもなく美味しいぞ。

 まずサクッとパリッとした表面とモチッとした皮のバランスが素晴らしい。中の餡にはキャベツやニラ等の野菜と少量の肉。ニラや香辛料の辛味がキャベツと肉本来の甘みを存分に引き出している。

 「どう、ぶっ飛び?」

 「いや、今食べてるんで」

 「あ、すいません」

 ぶっ飛びメガネさんが口の端を引き上げ、ドヤ顔で尋ねて来たが、一旦黙らせておく。

 前言撤回。やっぱり対人スキルはそんなに上がってない気がするな。

 しかし、付け合わせのサラダも凄いな。レタスや細切りにしたニンジンの上に分厚めのチャーシューが何枚か乗っている。ドレッシングの代わりに掛かっている中華風の甘辛く煮たタレも絶品だ。

 スープも良い。牛肉と思われる肉団子と、ゴロゴロ入っている野菜、あっさり目の味付けの奥に、ガツンとしたニンニクの旨味が顔を覗かせている。

 これも箸が進むなあ。

 そして何と言ってもこれがヤバい。白米じゃなくて炒飯だ。高火力で中華鍋を用いて仕上げているのだろう。パラパラとしていて本当に美味しい。

 パクパクと食べる私を見て、昼間同様大将は大変嬉しそうだ。

 「いやあっ!やっぱり良い食べっぷりだあっ!すいません!すいません!」

 ペコペコと平謝りする彼を他所に、私は餃子を喰らい、炒飯で掻き込んだ後にコーラで喉を潤す。

 「いや凄いねぇ。そんなに細いのによく食べるねぇ」

 と腹太鼓さんも私を見て目を丸くしている。

 「お客さぁん!炒飯お代わりいけますよ!」

 え?炒飯もいいのか?

 「じゃあお願いします」

 「はい!すいません!」

 昼間同様バカ盛り炒飯をよそって頂き、また餃子と掻きこむ。

 「お客さぁん!まぁた賄い作り過ぎちまって!唐揚げ、どうですか!」

 「じゃあお願いします」

 「はい!すいません!」

 と、今度は大将が通常一人前はありそうな唐揚げを皿に乗せて差し出してくれる。

 「き、君、ぶっ飛び……」

 「おいおい、とんでもねぇぞこのお姉ちゃん」

 「なんだなんだ?」

 「おいこの子めっちゃ食うぞ」

 「すげえ……」

 と、メガネさんに始まり、腹太鼓さんやその他の酔漢達が私に注目し始める。

 五月蝿いな。静かに食べたいんだよこっちは。

 混み合う時間に来るのは避けようかな、やはり人の多い所は苦手かもしれない。

 そんな事を考えながら、私はもう一度炒飯をお代わりした後、餃子をもう十個何故かサービスして頂き、全て完食する。

 「すげぇ!食べ切ったぞ!」

 「おい大将サービスし過ぎだろ!潰れちまうぞ!」

 「こいつぁたまげたなあ」

 「お嬢ちゃんとんでもねえなあ」

 と、コーラも全て飲み干した私を見て外野が再び騒ぎ出す。

 「ご馳走様でした」

 私はそう言って席を立ち、レジに向かう。

 あ、そうだ。

 「お勧めしてくれてありがとうございました」

 と、一応メガネさんにお礼を言っておく。

 彼は面食らった顔をした後、口の端を吊り上げて、サムズアップを返事の代わりにして来た。ちょっとウザいね。

 「いやあ!ほんとすんげぇ食べっぷりだ!また来てください!すいません」

 「どーも」

 と、レジ越しに大将に代金を支払おうとすると、突然外国人の大きなイケオジが私の横に立った。高級そうなスーツに身を包み、サングラスの奥の鋭い眼光で私を見下ろしている。多分ヨーロッパ系だと思う。

 「……なにか」

 私がそう尋ねると、彼は徐に口を開いてこう言った。

 「良いモノ、見せてもらいマシタ。アナタの食べるトコロ、とってもキュート。コレ、そのお礼ネ」

 と、何故か彼は一万円札を大将に手渡そうとする。

 「いや、あの、いただけません」

 礼ってなんだよ。私ご飯食べてただけだぞ?どいつもこいつも騒ぎ立てやがって。

 「最近、My 娘がダイエットだって言っテ、ぜんぜんゴハン食べまセン……すごく痩せてるノニ、見ていてツライデス。だからヒサビサに、イイモノ見させていただきマシタ」

 「はあ……」

 彼はそう言って大将にしっかりと一万円札を握らせる。

 「それに、サンビャクエン、ヨンヒャクエンくらいだかラ、遠慮はNOネ?」

 「はあ……じゃあ、ありがとうございます」

 何故か分からないが、無料になった。

 おじさん達の思考回路は理解不能だ。

 「ご馳走様でした」

 「まいどぉ!すいませんでしたぁ!」

 おじさま達からの拍手喝采と、大将のすいませんをこの身に浴びながら私は店を後にする。

 なんかタダ飯になっちゃったな。

 あの外国人のイケオジさんにまた会ったらお礼を言っておこう。

 さてさて、とんでもない所を見つけてしまったぞ。

 量は然る事乍ら、各種サービスと、何よりあの味は無類だ。

 正直明日も行きたいな。ご飯作るの面倒くさいし。


 こうして私は、【食事処 すいません】にどっぷりとハマってしまった。

 この時の私はまだ知らなかったのだ。

 何故大将はあんなに嬉しそうだったのか。

 何故大将は「ありがとう」ではなく「すいません」と言うのか。

 この時の私はまだその意味を知らなかったのだ。


 それから一週間と少しの間、私は少なくとも日に一回、多くて二回はあそこで食事をする事になった。

 私が来る度に、こっちも思わず嬉しくなっちゃうような笑顔で大将がご飯を食べさせてくれるし、美味いし、メニューも豊富で飽きない。

 そして私は、一つ悪い事を覚えてしまった。

 それは何かというと、所謂【パパ活】である。

 何故かおじさんという生き物は、私のような細身の女子高生が大量のご飯を食べていると、代わりにお金を払いたくなる性質を持っているようで、昼だろうが夜だろうが近くにいたおじさんが奢ってくれるのだ。

 お陰様でこの一週間でお金を払った回数はなんと初回を含めて二回のみ。最初は人気の無い時間を狙って行こうと思っていた私も、味を占めてしまい客の多い時間に顔を出すようになってしまった。

 これをパパ活と呼ばずしてなんと呼ぶのだ。

 初のアルバイトに、異常性癖者との邂逅、初めての友人と、新しい事尽くめの今年の夏に、ついに私はパパ活デビューまで果たしたのだ。

 特にあの外国人のおじ様がいると必ず奢ってくれる。娘があんまりご飯を食べないから心配なんだそうだが、年頃の娘なんてそんなものだろう。

 そんな私は、例年と比べて外に出る回数がとんでもない勢いで増えている。これはすごい事だ。母が知ったら驚くだろう。

 さて、今日も今日とて、私は【すいません】へと足を運ぶ。

 現在時刻は十四時半、少し寝過ぎてしまった為にこんな時間になってしまった。この時間は殆ど人がいないから今日は素直に代金を払おう。

 ……いや、まあそもそも全然払えるんだけどね?安いし、お金はあるし。

 ガラリと引き戸を開けると、私の予想に反して男性客が二人もいた。

 何故かカウンターで肩を組み合って昼間っからビールを飲んでおり、ジョッキを振り上げながらゴキゲンに「ヨホホホ〜♪」とかなんとか歌を歌っている。

 なんだこれ、ワンピースか?

 一人はあの外国人のおじ様、そしてもう片方は……。

 「慎也さん?」

 「ビンクスの酒を〜♪……って、お嬢⁈」

 私を見て目を丸くして驚いたのは、どこからどう見ても慎也さんだ。今日も今日とてスーツ姿だ。おじ様もスーツだし、夏だと言うのにこいつら暑苦しいな。

 「オーゥ!キュートなオジョーさん!コンニチワ〜」

 「こんにちは」

 既に出来上がっているおじ様に軽く挨拶して、とりあえず私は慎也さんの隣に腰掛ける。

 「お客さぁん!いらっしゃい!本日は?」

 「唐定三の米特盛のマヨぶっかけで」

 「あいよぉ!毎度すいません!」

 もう手慣れた具合で大将に注文をする私に、慎也さんは更に目を丸くする。

 「お嬢、ここ通ってるんすか?」

 「喋りかけて良いって言ってないけど」

 「ワンッ!申し訳ありやせん!」

 挨拶代わりに適当にかましてやると、慎也さんは吠えながら床に這い蹲る。

 もうここ最近の彼はずっとこんな感じだ。エイミーと私に迷惑を掛けてからというものの、服従の意を示し続けている。

 「おや?シンヤさんとオジョーさんはオシリあいだったのデスネ?」

 と、おじさまが私達の様子をみて声を掛けてくる。

 「ええ、まあ」

 「彼、イヌのマネしてますネ?ドウシテ?」

 「ああ〜、えっと……」

 「俺がお嬢の犬だからだぜ、ブレイデンの旦那」

 「余計なこと言うな」

 「ワンッ」

 私が蹴りを入れると、慎也さんが吠え出す。

 うるせーなこいつ。

 しかし、このおじ様はブレイデンさんと言うのか、名前的にカナダ系かな?

 「オゥ、もしかして、SMプレイデスカ?」

 「プレイ?遊びじゃねーぜ、お嬢も俺もマジだぜ」

 おいやめろこのバカ犬、変な誤解されるだろ……いや、誤解じゃないのか……。

 「えっと、その……なんて言いますか……」

 とりあえずどうにか誤魔化そうとしどろもどろになるが。

 「大丈夫デスヨ、オジョーさん。別に、ハズカシがる事、アリマセン」

 「はい?」

 ブレイデンさんは優しい笑顔で私にそう言った。

 「人はそれぞれ、チガウ生き物デス。SでもMでも、ハズカシがる事、アリマセン。My娘も、ちょっと変わってマス。でもそれ個性ネ」

 と、彼はそう持論を語る。

 大らかな人なんだなあ。

 まあ、私はサディストではないんだけどね。

 「しっかし、お嬢とブレイデンの旦那が知り合いだったとはねぇ」

 と、椅子に座り直す慎也さんが私達を見て言う。

 「お互い、ジョーレンなのですヨ」

 「あ〜……お嬢めちゃくちゃ食うからなあ」

 「まあ、そこそこです」

 「それでこの店かあ……まぁそりゃ互いに打って付けだわな……」

 「?」

 互いに打って付け?どういう意味だろう。

 と、慎也さんの発言に疑問を抱いていると、丁度大将が定食を持って来たので思考を遮られる。

 「唐揚げ定食おまちぃ!すいません!」

 「どーも、いただきます」

 手を合わせてそう言ってから、箸を取って唐揚げに齧り付く。

 う〜ん、やはり最高だなここの唐揚げは。

 そして唐揚げにはマヨネーズ。これは外せない。油が高いこのご時世に大盤振る舞いとばかりに掛けてくれていて有難い。

 「いやぁ!毎度毎度良い食いっぷりだぁ!すいません!すいません!」

 と、相変わらず謝りながら嬉しそうな大将。

 「お嬢はよく食うからなあ、しかもこれだけの美人だ。良かったなあ大将」

 と、慎也さんが大将と私を交互に見てそんな事を言う。

 ……良かったって何がだ?

 「いやあ、ほんとすいません!」

 「そんじゃ、俺もまたなんか頼もうかな……舞茸の天ぷら三人前と生ビールくれ」

 「あいよぉ!いやあ、慎也さん良い食いっぷりなんで助かってます!すいません!すいません!」

 助かる?何がだ?

 「では、ワタシはそろそろオイトマしますネ」

 と、ブレイデンさんはそう言ってカウンターにお金を置いて立ち上がる。

 「なんだよ、もう終わりかよ旦那ぁ」

 「ソロソロMyワイフが帰って来るので、お昼から飲んでるのバレたら、殺されちゃいマス」

 「妻子持ちぁ大変だねぇ、あばよ」

 「ではマタ。ゴチソウサマデシタ。オジョーさんもマタ」

 「どーも」

 そう言って彼は店を出て行った。

 「毎度すいませんでしたー!」

 と、カウンターから大将が顔を出す。

 「しかし、お客さんと慎也君が知り合いだったなんて、驚きましたよぉ」

 その流れで、私達の顔を見た大将がそんな事を口にする。

 「慎也さんもよく来るんですか?」

 「え?……おれぁボチボチ……ん?お嬢、この大将の事何も知らねぇんで?」

 私の言葉を聞いて、何か引っ掛かったのか慎也さんがそんな事を尋ねて来る。

 「ん?どういうことですか?」

 「いや、この店……誰から聞いたんです?」

 「誰にも……ここ近いんでたまたま」

 「あ〜、なるほど……」

 と、慎也さんは何か納得したように独り言ちる。

 「おい大将、聞け。こちらのお嬢はなあ、あの椅子野郎の『椅子の君』だ」

 と、突然慎也さんがそんな事をぶちまける。

 「ちょっ……慎也さんいきなり何言って……」

 「ええっ⁈お客さぁん!あんたあの『椅子の淑女』だったんですか⁈」

 は?

 え?この大将、サロンの事知ってるのか?

 「お嬢、この男……異常性癖者ですぜ」

 「えっ」

 ええええええええ?

 「いやぁ、まさかお客さんがそうだったなんて!すいません!すいません!」

 この大将が、サロンのメンバーだったなんて……。

 まったく気が付かなかった。いや、まあ性癖なんて語られなければ気が付くものでもないが。

 「お嬢、この大将はねぇ……Sitophilia……詰まるところ食物性愛者でさぁ」

 と、慎也さんは私に対して聞き慣れない言葉を発する。

 「食物性愛?」

 「ええ、食べモンに関する事なら色々あるんすけど……この男に関しては……」

 「そのぉ……ご飯食べてる人見てると興奮すると言いますか……いやぁ!ほんとすいません!すいません!」

 と、大将は照れてるのかよく分からない顔でペコペコ謝って来る。

 人が食事をしている所を見て、興奮する性癖……これまた凄いのが出て来たなあ。

 「まさか、それでこの量の食事をこの値段で?」

 「ええ……!まぁその……はい!すいません!」

 へぇ、成程合点がいった。

 「お嬢、この店名もねぇ……そこから取らてんですわ」

 と、慎也さんが私に向かってそんな事を教えてくれる。

 「どういう事ですか?」

 「いやぁ、こちらの都合で勝手に興奮させて頂いてるので……!なんか申し訳なくてぇ……すいません」

 「……だから「ありがとうございます」じゃなくて「すいません」なんですか?」

 「いやぁ、はい!すいません!」

 なんだそりゃ。

 なんでだろうなあって何となく思っていたけれど、ずっと突拍子もないような話だったな。

 「いやぁ、すいません……ほんとに……いやぁ……キモいですよね……!すいません!すいません!」

 「いや、別にそこはどうでも良いですけど」

 「えっ?」

 またペコペコしている大将に私がそう言うと、彼は素っ頓狂な声を上げる。

 「それより、大将の性癖に興味が湧きました」

 「え?ええ?」

 私の発言に、大将は目を丸くしている。

 「大将、うちのお嬢はこういう御方だ。海より懐がでけぇ」

 海は言い過ぎだ。海程の懐を持っていたら、慎也さんの股間を蹴り飛ばしはしなかっただろう。

 「俺のサドマゾの中に隠された真のマゾヒズムを見抜いたくらいだ。相当な異常性癖性癖者だぜ」

 「調子に乗るな、伏せっ」

 「ワンッ」

 私が慎也さんに向かってそう言うと、彼はその場でうつ伏せになる。

 まったく、本当に反省しているんだろうな。

 「いや、お客さぁん……僕は自分勝手にサービスのフリをして料理を出して、食べてもらって、厨房の奥で勃起してマス掻いてたんですよ?キモいですよねぇ」

 「そういう言い方されるとまあ、多少はキモいですかね」

 あと、料理する前に手は洗ってね。

 「ですよねぇ……」

 と、大将はがっくしと肩を落とす。

 「でもまあ、特に誰にも迷惑掛けてないし、いいんじゃないですか。現に私も気が付いていませんでしたし……それに何よりこちらとしては安くて美味しくて有難い限りなので」

 「お……お客さぁん……!」

 私の言葉に、分かりやすく笑顔になる大将。一喜一憂……いや、一憂一喜かな。

 「いや、僕こんなんなんで……今まで結婚は疎か彼女の一人も出来ず……嬉しい言葉を……!いやぁ!本当に出来たお嬢さんだぁ!どうぞ、これサービスです!すいません!」

 と、感極まった彼はポテトサラダを厨房から持って来てくれる。

 「またこれで興奮するんですか?」

 「えっああ!ええと、すいません!」

 「別に構いませんが、慣れてますし」

 「そいつぁすげえや!」

 愉快な人だなあ。

 まあ、他人に性的な目で見られるというのは、確かに気持ちの良い事ではないかもしれないが、エイミーと一緒に歩いていると、割と男性のそういう視線というのは気になるもので、これはこれで仕方がないのかなあと思う。実際エイミーは服を着ていてもエッチだし。なんか雰囲気とか。いつも足放り出してるし。

 「そうだぁ!お客さぁん!シンヤ君!折言って相談があるんですが……」

 「なんだい大将」

 「相談?」

 改まる大将を前に、私と慎也さんはそれぞれ首を傾げる。

 「いやあ、実はですねえ……新メニューの試食に協力して頂きたくて」

 「新メニューですか」

 「はい、結構時間かかるかもなんで、量もそれなりになるので出来れば味見、消費役をお願いしたく……すいません」

 「なんだよ、自分で食えるだろ大将。そんな立派な腹があるんだからよ」

 おい失礼だぞバカ犬。

 「いやあ、自分……こう見えて小食なもんで……すいません」

 なんでだよ……って突っ込むのは私も失礼か。

 「いつも二回くらい試作した所でお腹いっぱいになってしまって……捨てるのも勿体無いし、捗らないんですよ……どうかお願い出来ませんか?すいません!」

 そう言って頭を下げる大将。

 私は別に構わないが……。

 「別に良いぜ、タダ飯にあり付けるってんなら大歓迎だ」

 お前もうちょっと言葉選べよ。まぁ私も同じ気持ちだけど。

 「私も構いません。どうせ暇なんで」

 「やったぁ!こいつぁすいません!ほんとすいません!これ、サービスです!」

 感極まった大将は今度は角煮を差し出してきた。

 「明日は臨時で店閉めさせて頂くんで、十二時くらいに来て頂けると助かります。すいません」

 「おうよ」

 「分かりました」

 こうして、私達は大将の新メニューの試食をさせて貰う事になった。

 メニューの試作という事は鱈腹食べられるぞ、しかもタダで。本当にこの店来て良かったなあ。これからもパパ活に精を出してお腹いっぱい生きていこう。


 翌日の十二時になり、私と慎也さんはすいませんに訪れ、それぞれ厨房の中に通される。

 中は意外と広くて、ビールケースをひっくり返した簡易的な椅子と机が二人分並んでいた。私達はそれぞれそこに腰掛ける。

 「おい大将、ビール飲んで良いか?」

 「はい!いいですよ!すいません!」

 「良いわけないだろ」

 開口一番そんな事を口走る慎也さんに蹴りを喰らわし、樽生を開通しようとする大将を急いで止める。

 お酒は試食と関係ないだろ。ちょっとは遠慮しろ。

 「ほんと、大丈夫なんで」

 「いやぁでも、やっぱお酒あった方がいいんじゃ……」

 「ならせめてビール代は払わせますから」

 蹴られて喜んでいる慎也さんを睨み付けながらそう言うのだが。

 「お嬢……今俺、素寒貧です」

 と、返して来た。

 「なんでだよ……アルバイトしてるんでしょ?」

 「酒と煙草で消えました。次の日雇いまで無一文です」

 「チッ……とりあえずここは私が払うから、今度返してよ」

 「すいやせん、恩に着ます」

 ここで「いや、それならビールは辞めときます」とならないのが桃瀬慎也という男だ。反省してる風で結局根っこは変わってないんじゃないかこいつ。頭上げた瞬間に思いっ切り煙草に火付け始めたし。

 「そんで大将。今日は何作んのよ」

 「はい!オムライスです!すいません!」

 おお、オムライスかあ。そういえば最近食べてないな。うちの家じゃあんまり出てこないメニューだ。私も面倒臭いから作らないし。

 「子供の頃に、飲食やってた祖父がよく作ってくれましてねえ……そん時の味を再現したいんですが、なかなか上手くいかなくて……もうだいぶ昔に亡くなってるんでレシピも聞けないんです」

 「なるほど」

 「まあとりあえず、一回目作ってみます!」

 そう言って彼は中華鍋でケチャップライスを作り始める。まずは刻んだ玉ねぎと豚肉を放り込んで炒め、ケチャップを投入し、炊き上がったご飯を一人前、そしてバターと刻みパセリを入れて再度炒める。軽く胡椒と塩で味を整え、今度は隣の火口にあるフライパンにバターを敷いて、塩胡椒で下味を付けた溶き卵を入れて焼き始める。回しながらある程度固めて、先程のケチャップライスを真ん中に置くようにして入れる。軽くフライパンを振るとひっくり返り、オムライスの完成だ。

 流石料理のプロ。流れるような見事な手捌きだ。

 「どうぞ、すいません!」

 今回は試食がメインなので量は普通の一人前だ。私と慎也さんで半分ずつ、大将は二口分位をそれぞれ取り分ける。

 「頂きます」

 「んじゃ頂くぜ」

 「はい!どうもすいません!」

 出来立てのオムライスを口に運ぶと、フワフワの卵が口の中で蕩ける。

 うん、美味しいなあ。入ってる調味料は一般家庭にある物ばかりだが、量の加減なのか火力の問題なのか物凄く美味しい。バターでしっかりとコクを出しているが、それでいてしつこくはない。

 「こりゃあうめぇな!」

 と、慎也さんもビール片手にご満悦だ。

 「美味しいですね」

 私も大将に声を掛けるが、彼は一口食べると表情を曇らせて首を傾げた。

 「う〜ん……これじゃないんすよねぇ」

 どうやらお爺さんの味とは違うようだ。

 「もっとなんか色々入ってんじゃねぇか?変な香辛料とか」

 早くも半人前を食べ終えた慎也さんが煙草に火を付けて意見を述べる。

 「う〜ん、特にエスニック感が強かった記憶は無いんですよねぇ。強いて言えばもう少ししょっぱかったような……」

 「塩の代わりに醤油を使っていたとか?」

 今度は私が意見を述べると、大将は手をポンと叩いた。

 「そうかも知れませんね。次、醤油で行ってみます!すいません!」

 今度は同じ行程で塩を醤油に入れ替えて作る大将。

 素早く作り上げ、私たちの前に取り分ける。

 うん。香ばしくて美味いな。醤油も合うもんだ。

 「おお!俺ぁこっちの方が好きだぜ!なんせ俺は醤油大好き人間だからなあ」

 「私もこっちの方が定食屋っぽさもあって良いと思います」

 私達二人は再び好感触。しかし、大将は今度も首を傾げる。

 「う〜ん、近付いた感じはするんですけどねぇ。なんかもっとこう……風味ですかね?違ったような……すいません」

 どうやら今回も違ったようだが、方向性は間違っていないようだ。

 「具材が違うとかじゃねーの?」

 「いやあ、確かこんな感じだと思うんですけどねえ」

 「ニンニクとかはどうですか?」

 「ニンニクかあ!ちょっとぶち込んでみます!すいません!」

 次は油を熱している間に、そこに刻みニンニクを入れて香り付けをしてから先程の行程を繰り返す。

 「おまちどぉ!」

 出来上がったそれを口にして再び吟味する。

 うん、旨味が増して美味しいな。

 だが、大将はやっぱり今度も何かが違うとの事だ。「ケチャップの量が多いのかも知れない」という見解に至り作り直す。

 しかし、四回目、五回目、六回目と作り直すが、まだ何かが違うとの事だ。

 メニューの考案というのは大変なんだなあ。

 「いやあ、すいません!何度も突き合わせちゃって……なにぶんかなり昔の記憶で、ただただ美味かった事しか覚えていないもんで」

 「気にすんな大将」

 「いつもサービスしてもらってるので」

 「ほんとすいません!」

 オムライスを作り続けながらペコペコする大将。

 「ケチャップの量はかなり減らして……醤油使って……う〜ん」

 そんな感じで大将は唸りながら七回、八回目、十回目と繰り返す。しかし、ここで慎也さんが口を開いた。

 「いや、俺もう腹一杯だわ」

 と、腹を押さえながらそう口にする。

 ビールなんか飲んでるからだろ。と、言いそうになったが、よくよく考えたらそれぞれ五人前程食べてるから仕方がないか。

 「私はまだ行けます」

 「おお!そいつぁすいませんっ!相変わらず良い食べっぷりだぁ!量増やしますか⁈」

 「いや、私にも限界は存在するので」

 「それもそうですね!すいません!」

 しかし、なんだろうな。何が足りないんだ。

 味の記憶は大将しかもっていないから、そう的確なアドバイスがしてあげられる訳でもないしなあ。

 「大将、お爺さんはなんのお店をやってたんですか?」

 「え?ああ、普通の町中華ですよ」

 町中華か、じゃあ特にオムライスとは関係無さそうだな。

 「うちの祖母と一緒に切り盛りしてましてね。うちの親共働きで、店も家からも近かったもんですから夕飯はいつもそこで食べてたんです」

 共働きか……うちと同じだな。まあ、祖父も祖母も、父方も母方両方共地方の人なので私は滅多に会わないが。

 「僕、そん時そこでバイトしてた近所の姉ちゃんが好きで、なんでか忘れちまったけど店閉めた後に僕が賄い作る事になって……それを「美味しい」って言って笑ってくれた時……なんていうか……その…下品なんですが…フフ……勃起……しちゃいましてね………そんで料理人になろうって決めたんです。すいません!」

 やめとけ!やめとけ!あいつのモノマネは。

 しかし、そういうきっかけだったのか。それとも先天的に持ち合わせた性質だったのか。まぁ分からないけど良い話じゃないか。好きな人に料理を食べてもらって嬉しくて料理人になったなんて。

 その後、あと何回か様々な調味料や具材で作り直したが、どうやら遠ざかっていっている気がすると大将は述べる。

 流石に二十回目に至る頃には、私もお腹一杯になっていた。

 「すいません、もうギブです」

 「っかぁ〜。すげえや、一人で十人前以上食べちまった……」

 「いやあ、ほんとすいません!」

 もう少し行けるかと思ったんだが、オムライスをパクパク食べる私に興奮した大将が何故か途中で量を増やして来た為限界になってしまった。何やってんだこの人。

 「どうすっか、時間開けて夜もやるかい?」

 「と言ってももう十八時回ってるよ」

 そう提案した慎也さんだが、今私が言ったように殆ど夜みたいな物だ。お腹が空く頃には日付が変わってしまう。

 「いや、今日はこの辺で……すいませんしでした!付き合って頂いちゃって……!」

 「気にしないで下さい」

 「そうだぜ、タダであんなうめぇオムライス何杯も食えるんだ。寧ろありがとな」

 「そう言って頂けると助かります!すいません!」

 結局今回はお開きとなり、私達は軽く洗い物もを手伝ってから店を後にした。

 私を送って行くと聞かないので、すぐ近くなんだが慎也さんと共に帰路に着く。

 「しっかし、何が足りねぇんすかねぇ……大将の爺さんのオムライス」

 「う〜ん……調味料の比率なのか、具材なのか……」

 正直私はプロではないので分からない。慎也さんもかなりグルメだし、途中途中でかなり的確な意見を言っていたが、結局正解には辿り着かなかった。

 「じゃあ、私ここなんで」

 「押忍!お勤め、ご苦労様っした!」

 慎也さんは私が扉を閉めるまで頭を下げて見送ってくれる。ほんと何の極道だよあいつ。

 ふぅ、それにしても久々にお腹はち切れそうになるまで食べたなあ。満足満足。

 しかし、結局大して力にはなれなかったなあ。別に異常性癖は関係なく力になりたいし、そのお爺さんのオムライスとやらも食べてみたい。

 お袋の味……ではなくお爺さんの味か……。そういえば、うちの家庭の味ってなんだろう。

 カレー……は違うな。市販のカレールウに何か足してるわけでも変わった具材を使ってる訳じゃないから私が作っても変わらないし。揚げ物はキッチンが汚れるからって言ってやりたがらないし、共働きって事もあって凝ったものは作らないし基本的には冷凍食品だしなあ。

 まぁ、冷凍食品は普通に美味しいからな。買って来て温めてくれるだけでも感謝している。

 そういえば、前に兄が一度だけ炒飯を作ってくれた事があったな。あれ好きだったなあ。

 題して『俺流アホクソバカ盛り炒飯の食べ放題』。何故料理名に『食べ放題』という言葉が入ってるのか分からないが、とりあえずあれは美味しかった。

 その後、お風呂に入って適当に読書などで時間を過ごした私は、変な時間にお腹が空いてしまった。時刻は二十二時半。

 「……オムライスでも作るか」

 ふと思い至って私はキッチンへと趣き、オムライスを作る事にした。

 ご飯は面倒くさいのでパックのやつで良いだろう。具材も出来合のもので、切るのが面倒だから買っておいたカットベーコンと刻みネギで良いかな。

 卵を予め溶いておき、フライパンに油を入れてベーコンとネギを炒める。

 あれ……ケチャップが無い。しまった、見落としていた。どうしよう……卵二個分くらい溶いちゃったし……まぁここは炒飯に方向転換するか。洋食から中華へ……。

 「……オムライス……チャーハン……」

 洋食の代表格であるオムライス。そして中華の代表格の炒飯。

 大将が言っていた。「風味が違う」「ケチャップは少なめの方がそれっぽい」「祖父は町中華を営んでいた」と。

 もしかして、関係ないと思ってた洋食と中華は、実は混ざり合っていたんじゃないか?そして、ケチャップは少なめではなく、最初から入っていなかったのではないか?何かが足りていないのではなく余計だった?

 思い至った私は、フライパンにご飯を投入し、醤油や鶏がらスープの素、ニンニクで軽く味付けしたチャーハンを作る。皿に盛り付けて、空いたフライパンで卵を焼く。ある程度固まったところでチャーハンに被せて完成だ。

 オムチャーハンである。オムライスと炒飯のちゃんぽんだ。前にテレビか何かで見かけた記憶がある。

 とりあえず私は一口食べてみる。

 うん、普通に美味いな。

 すいませんの餃子や炒飯等の中華系のメニューは絶品だった。恐らくこの辺はお爺さんのお店のレシピが残っていたんだろう。そのチャーハンでオムチャーハンを作ったらどうなる?

 私は気が付いたら昼間に教えてもらった大将の連絡先に電話を掛けていた。

 『はい!もしもしすいません!』

 「あ、夜分遅くにすいません大将。今何処に居ますか?」

 『ああ、ちょっとまた店でオムライス作ってます……まぁ上手くいかないんですがね』

 と、彼は自嘲気味に笑っている。

 「あの、今からそちらに伺っても大丈夫ですか?」

 『え?構いませんけど……』

 「じゃあ向かいます」

 『え?あ、ちょ』

 私は一方的に電話を切り、素早くオムチャーハンを平らげて家を出る。

 すぐ近くにあるから走れば二分だ。程なくしてすいませんに辿り着き、私は引き戸を勢い良く開いて中に入る。

 「あっ!お客さん、じゃないや篠嵜さん!」

 「すいません、急に」

 「いや僕は大丈夫ですが……どうしたんです?」

 私は後ろ手に扉を閉めて、カウンターの方に近寄って大将にこう言った。

 「大将、ちょっと炒飯作ってみて下さい」

 「え?炒飯?」

 突然そんな事を言い出す私に、彼は首を傾げる。

 「とりあえず作ってみて下さい」

 「え?ああ、はい。すいません」

 真顔で詰める私に気圧されたのか、大将はとりあえず炒飯を作り始める。

 中華鍋に溶き卵と米を投入して、焼豚の切り落としと刻みネギを放りこんで炒めた後、醤油やオイスターソース、その他の調味料で味付けして完成だ。

 「すいません、出来ましたけど……」

 「大将、これに卵乗っけてみて下さい」

 「え?卵……?卵……ああッ!」

 何かに気が付いたのか、彼はひっくり返りそうになりながら急いで火口の側に寄って、卵を溶いて下味を付けた後にフライパンで焼き始める。軽く火を通してチャーハンに乗せて完成だ。

 彼は恐る恐るスプーンでそれを拾い上げると、勢い良く口に放り込んだ。

 「あっ!これだ!この味!これだぁ!」

 飛び上がって換気口の所に頭をぶつけそうになりながら、大将は満面の笑みでそう言った。

 どうやら当たりだったようだ。彼のお爺さんは、オムライスでは無くオムチャーハンを作っていたんだ。

 「今家でオムライス作ろうとしたらケチャップが無くて、チャーハンに切り替えようって思った時に思い付きました。当たってたようで良かったです」

 「いやほんと、すげえや篠嵜さん!これだ!爺ちゃんの味だ!うめぇっ!うめぇっ!」

 バクバクと食べながら、大将は感極まったのかその優しそうな瞳から涙を溢し始めた。

 「いや……!ほんと……!二度と食えねえんじゃないかって……!諦めかけてたんで……!良かった……!本当うめえや!うめぇ……!」

 泣きながら、すごく嬉しそうにそう言うので、なんだか私にも込み上げて来るものがある。

 良かった、偶々思い付いて、彼がお爺さんの味に辿り着いて。本当に良かった。

 彼はその後も一頻り泣いた後、オムチャーハンを平らげると私に向き直った。

 「篠嵜さぁん……本当に、本当に……ありがとうございました!」

 勢い良く頭を下げる大将。

 「……ようやくありがとうって言いましたね大将」

 「え?……ああ、えへへ。す、すいません」

 あ、なんか照れ臭かったのか戻っちゃった。まあ良いか。

 「私にも食べさせて下さいよ、お爺さんのオムチャーハン」

 「はい!今作ります!」

 急いで厨房に戻った彼は、生き生きとした様子で鍋を振るってオムチャーハンを作り始めた。

 油と焼豚と、ネギと卵の焼ける匂いが店内に漂う。程なくして、私の前に出来上がったそれが置かれた。

 どこからどう見ても三人前だった。

 「えっ良いんですか?」

 「そりゃあ勿論!」

 先程家でちょっとしか食べてなかったから、返ってお腹が減っていたから丁度良かった。

 「頂きます」

 両手を合わせて、差し出されたスプーンを受け取って、一口掬って食べる。

 「ッ!……凄く美味しい……」

 「本当ですか⁈そいつぁ良かった!」

 私の言葉を聞いて、更に嬉しそうな大将。

 驚きの美味しさだ……しかし、驚いたのはそれだけじゃなかった。この旨味は……。

 「あの、これ普段の炒飯の味と少し違いますよね……」

 「おお、気が付きましたか!なんか食べてたら思い出したんですよ。そういえば爺ちゃん、コレ入れてたなぁって」

 そう言って彼がカウンターに置いたのは、蓋付きの赤い缶だった。

 「創味シャンタン?」

 「そうです!コレ入れると旨味が増すんですよ!」

 この味……所々違うけど、似ている。特にこの旨味というか風味というか……兄の作ってくれたあの大量の炒飯に似ている。

 確かに、兄が実家にいた頃は冷蔵庫に入っていた記憶がある。母はあんまり創味シャンタンを使う人ではなかったので、今のうちの冷蔵庫にはないから忘れていた。

 そうか、兄もコレを入れていたんだな。

 さっき大将が言っていた。「二度と食べれないと思っていた」という言葉。

 なんだかそれが遅れて私の中に刺さった。

 そっか……そうだな。こういう偲び方もあるんだ。少しだけ、ほんの少しだけ今更、兄が居ないことを寂しいと思ってしまった。

 「どうかしました?」

 黙りこくる私を不思議に思ったのか、大将が私にそう尋ねてきた。

 「いえ、なんでも」

 そう返して、私はオムチャーハンを食べ続けた。

 刻み葱の抜ける香りと、ニンニクと創味シャンタンのガツンと来る旨味。ゴロゴロ入ってて嬉しい焼豚と、香る醤油とふわふわの卵。うん、コレは絶品だ。

 少しして全て平らげると、再度大将にお礼を言われた。どういたしまして、と返して私は店を後にする。

 空を見上げると、雲の隙間から少しだけ月が顔を覗かせていた。

 湿気と、緩い風と、虫の声。私の嫌いな夏の夜だ。まぁでも、今は少しだけ機嫌がいいから許してやろう。

 明日の夜は、チャーハンにしてみようかな。たまには料理をするのも良いだろう。とりあえず今は、そんな気分だ。


……………………


  私の住む街に一軒の定食屋がある。

 そこはサービス精神が豊富な店主が営むお店で、とにかく安くて量が多くて大人気だ。何故そんなにサービスしてくれるのかという理由は、また別の機会に。

 それはさておき、このお店の一番人気のメニューは『オムチャーハン』。定食屋にも関わらず本格的な味のチャーハンと、フワフワの卵が相性抜群で絶品だ。大将の祖父から受け継がれたその料理は、とにかく旨味がガツンとして好評らしく、注文する客が後を絶たないらしい。

 この旨味には秘密がある。その隠し味を知っているのは、その店の大将と、近所に住む一人の女子高生だけだ。

 その定食屋の名前は【食事処 すいません】。

 いつも大将が謝ってばかりいる少し風変わりなお店だ。

 近くを通り掛かったら、是非とも入ってみて欲しい。

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