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第二章 下手くそな笑顔

 慎也さんにご馳走になり、店を出た私達は帰路に着いた。なんだかんだ二十三時前という時間なので、補導されることを避ける為に彼が送ってくれるそうだ。

 ここからの方角だと、エイミーの家が手前にあるので、彼女とは先にさよならだ。

 「んじゃケーコちゃんまたあしたー!シンヤさんごちそーさまでした!」

 「また」

 「じゃあな〜」

 挨拶を済ませ、ブンブンと手を振りながら家の中に入る彼女を見送り、私達は歩き出す。

 「改めて、今日は助かったぜ」

 横を歩く彼が、煙草を咥えながらそんな事を口にする。

 「いや、あの場では私は特に何も出来てなかったと思うんですが」

 ヘルメスの知能指数が足りなかったせいで。

 「いやなに、結果はどうあれ手伝ってくれたじゃねーか。普通だったら面倒だとか、用事があるからって断るだろ」

 「……そう言う慎也さんだって、放っておけば良かったんじゃないですか?」

 「あ〜……まぁな。そりゃそうなんだが……ほら、誘拐とかされたらヤベーだろ」

 「まあ、そういう可能性もあるかも知れませんが」

 「だろ。最悪、二度と親と会えなくなるかも知れねーってなったら流石にほっとけねーだろ」

 それは飛躍し過ぎではないか?

 だが、なんだか今の話の流れに違和感を覚えた気がして、私はまた、つい悪癖を出してしまう。

 「……親御さん、居ないんですか?」

 「……ああ、親父は知らねー女と駆け落ちして、母親は死んだ。俺がガキの頃の話だ」

 「……」

 やはり私のこの性分というか、彼らへの興味を表に出しすぎるのは良くないな。不躾が過ぎた。

 「そうでしたか、失礼な事を聞きました」

 「気にするこたぁねえよ。遅かれ早かれ親なんてのは大抵自分より先にくたばるんだ。親が死んでる大人なんてそこら辺にうじゃうじゃいるぜ」

 強がりだ。何故だか、そう思った。

 なんていうか、そう言って笑う彼の笑顔が嘘臭かったからかも知れない。

 さっきの居酒屋での笑顔とは、何処か違って見えた。戯けたり、ヘルメスちゃんを励まそうとして作った笑顔が今の笑顔と似ていると思ったのだ。

 「そうですね」

 まぁ、だからと言って今の私から掛けられる言葉は無い。同情や哀れみは好きじゃ無いから。

 「ここ、私の家なんで」

 そんな事を考えていたら、自分の家に辿り着いたので慎也さんの方に向き直る。

 「送ってくれてありがとうございました」

 「いや、俺の礼のせいで遅くなっちまっただけだしな、気にすんな。そんじゃまたな」

 「おやすみなさい」

 片手を上げて立ち去る彼を見送り、私も自宅へと入る。

 さっき見た、彼のちょっぴり下手くそな作り笑いが、何かと重なるのは気のせいだろうか。

 上手く思考が纏まらず、答えも出せないので、とりあえず考える事をやめた。

 今日はドッと疲れた……。やっぱり子供の相手は、私には向いていない。

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