第一章 だから私は
高校二年のこの夏、私は様々な異常性癖者と出会った。
男装メイド、露出女子高生、そして人間椅子。五月から六月後半までの短い期間だったが、覚えた事は幾つかある。
一つ。人は誰しも、なんらかの性癖を持っているという事。私にも恐らく、何かあるんだろう。それが例え一般的な常識から逸脱していたとしても受け入れてしまうしかないのだ。そうやって前を向いていくしかないのだと思う。
一つ。性癖はその人の、ほんの一部でしかないという事。それがどんなに変態的で、理解し難いものだったとしても、その人物を全否定する材料にしてはいけない。というか成り得ない。
一つ。性癖に限らず、色々な人がいるという事。三者三様、十人十色、百人百様、千差万別、様々な人間が私達の周りにいる。正常も異常もへったくれも無いのだ。自分が良いと思ったものを、信じて生きていくだけだ。
エイミーも、嘉靖さんも、椅子の中の彼も、笑って生きている。
消えない火傷の痕があるかも知れない。それ自体を消してあげる事も、共感してあげる事も出来ないかも知れない。
ただ、そんな彼らの隣人でいる事は出来る。
理解しようとする事は出来る。
側で寄り添う事は出来るのだ。
だから私は、今日も【彼】に座るのだった。