閉店セール
『本日は~当デパートにご来店いただきまして~誠にありがとうございます』
「テレビ、テレビ、テレビ!」
「バンティのバッグ! バッグ!」
「スマートフォン売り場はどこだぁ!」
「化粧品は!?」
「ステレオ!」
「おもちゃはー!?」
『当デパートは~本日開店と同時に、全売り場でセールを行っております』
「はははは! このカメラ、欲しかったやつだぁ!」
「これ、ずっと欲しいと思ってたのぉ」
「詰め込めるだけ詰め込め!」
「ねえ、おもちゃはー!?」
『日頃より~当デパートをご愛顧いただき~誠にありがとうございます』
「おい、おれのだぞ!」
「よこせよ!」
「あっちにもあるだろ!」
「どけ! 邪魔だ!」
「この服、あたしが先に掴んだのよ!」
「おもちゃはぁ!?」
『当デパートは~本日をもちまして~閉店とさせていただきます』
「ははははははっ! 壊れちまった! はははは!」
「おい、この鞄に詰めてまとめて持って行っちまおう!」
「ほぉ、高級ワインかぁ……割ろー!」
「最上階からテレビ落そうぜ!」
「健康食品? トイレに流してやろう! ウンコウンコォ!」
「おもちゃあったぁ!」
『よって~全品、100パーセントオフとなっております』
「レジにまだ金が残ってたぞぉ!」
「燃やせ燃やせ! 金は人間を縛る悪魔だ!」
「はははははっ! はははは」
「おほほほほほほ! おほほほ! 化粧水ビチャビチャよぉおほほほ!」
「はははははは……」
「おもちゃ、いらないや……」
『当デパートはもう間もなく~本日の営業を終了させていただきます~。来世でまたお会いできることを~心より願っております。本日のご来店~まことにありがとうございました。ほーたーるのーひーかーりぃーあは、あははははははははは!』
「はははははは!」
「あははははは!」
「おおほほほ!」
「ははははっ」
「はーあ、ははは……」
「ああああぁぁぁぁ」
「うぅぅぅうぅ」
「あはははは!」
今日という日まで、暴徒と化した人々による略奪、破壊、放火に耐え抜き、原型を残している店は一斉に閉店セールを謳い、営業を再開していた。
一人で死ぬよりはいい、商売人の矜持、どうせなら派手に、お祭り騒ぎで、など、その理由は当人にもわからない。ただ笑えた。であるならば、これは盛大なジョークのつもりだったのかもしれない。
宇宙局の予報通り、巨大隕石が衝突して地球は砕け散った。
あとには何も残らなかった。ただ一つだけ、どこかの店の閉店セールの看板が宇宙空間を漂っていた。