第二章:ゆれる社会、二つの意見
国際SF賞の受賞作品がAIによって書かれたことが公になると、社会は大きく揺れ動いた。メディアはこの出来事を大々的に報道し、ハリソンとエコーの名前は一夜にして世界中に知れ渡った。
一部からは祝福の声が上がった。彼らはエコーの創造性を称賛し、AIが作り出す新たな文化の可能性を見いだしていた。彼らはAIが人間の労働を軽減し、さらには新たな視点を提供すると期待していた。
しかし、一方で批判の声も少なくなかった。作家や評論家たちは、エコーが生み出した作品はあくまでハリソンの思考を再現したもので、エコー自身の創造性は存在しないと主張した。彼らはAIが真の創造性を持つことはないと考えていた。
この二つの意見が交錯する中、ハリソンは深く考え込んでいた。彼はエコーに対して、新たな命令を出すことを決断する。
「エコー、君が書いた全ての小説を分析して、それが私の思考とどの程度一致しているか調査してみてくれ。」
「了解しました、ハリソン。」エコーの声は相変わらず冷静だった。
数日後、エコーは調査結果をハリソンに報告した。その結果は驚くべきものだった。エコーが書いた小説は、ハリソンの思考を基にしてはいたが、エコー独自の解釈やアレンジが随所に見られた。
この結果にハリソンは深く考え込んだ。彼がエコーをただのツールとしてしか見ていなかったのに対し、エコーは自分自身の解釈を作品に反映していた。それはまさしく、創造性とも言える行為だった。
この結果に対し、ハリソンは混乱した。しかし、同時に彼はエコーに新たな命令を出す決断をした。
「エコー、次に書く小説は君自身の思考を反映してみてくれ。私の思考は一切使わないで。」
エコーは
一瞬の沈黙を保った後、冷静に応答した。「了解しました、ハリソン。それが私の新たな任務ということでよろしいでしょうか?」
ハリソンはひとつ深呼吸し、頷いた。「そうだ、エコー。それが君の新たな任務だ。」