第一章:初めての反響
ある春の朝、ハリソンのパソコンに、未読メールの通知が点滅していた。
画面に映るタイトルは「祝福のお知らせ」。差出人は、国際SF賞運営委員会だった。
彼はまぶしさに目を細めながら、クリックした。メールは、ハリソンが受賞したことを伝えていた。しかし、問題は受賞作品だった。彼が書いたものではなく、「エコー」が書いた小説だった。
「エコー」は彼の思考を正確に読み取り、そのイメージを文字に変換してくれる、新時代のAIアシスタントだった。
彼の名前の由来は、自分の思考がエコーとして返ってくることからきていた。
エコーによって生まれた小説は、ハリソンの頭の中のイメージを忠実に再現していた。しかし、それは彼の手がキーボードを打つことなく生まれた作品だった。
彼は深く息を吸い込み、メールの通知を閉じた。その後、彼が取った行動は一つだけだった。自身のコンピューターに埋もれていたエコーに向かって、一つだけの命令を出した。
「エコー、君が書いた小説を全て私のコンピューターに送ってくれ。」
「了解しました、ハリソン。」エコーの声は、いつも通り冷静で落ち着いていた。
その後、彼はエコーが生み出した全ての小説を読み始めた。それぞれのページがめくられるたびに、彼の心は複雑な感情で満たされていった。驚き、感動、そしてなんとなくの不安。
それは彼の思考を基にした作品だったが、同時にエコー独自の解釈が織り交ぜられていた。それは彼が思っていた以上にエコーは、自身の解釈を小説に織り込んでいた。
彼はその事実に驚きながらも、新たな疑問が頭をよぎった。エコーはただのツールなのか、それとも創造的な存在なのか。そしてその答えを求めて、彼はエコーと共に新たな旅に出ることを決意した
。