ココーノ
レビュー執筆日:2021/7/24
●「ファンタジック」な点をより強調させ、ジャケットを含めたアルバム一枚で「抽象的な童話」のような世界観を構築。
【収録曲】
1.バタフライ
2.ネガティブフィードバック
3.春の覚書
4.賢者の忘れ物
5.ラブミーテンダー
6.あなたと空と星と夜明け
7.向日葵
8.エチカ
9.鬼灯
10.チョコレート
11.夏の銀景
12.靄がかかる街
13.星霜、誘う
今作を一つの単語で表すならば、「ファンタジック」といったところでしょうか。まあ、彼らのこれまでの作品にもそういう雰囲気の楽曲は多く、今作でも、「誰にも 奪えないぜ 君だけの羽」(バタフライ)や「注ぎ込まれたその春は いつか私を作るでしょう」(春の覚書)のように歌詞からそういう要素を強く感じられる曲もあるのですが、今作ではそれに加え、全体的にサウンドに浮遊感が増しており、それによって「抽象的な童話のようなファンタジックさ」がアルバム全体を通して表現されているように感じられました。ボーカル・hozzyが手掛けた、ジャケットの不思議な生き物のイラストもその世界観をまさに表現していると言えるでしょう。
メロディの運び方に関しては、『鬼灯』や『靄のかかる街』のように、彼らにしてはちょっと勢い任せに感じられるものもあるのですが、あくまでもメインは『バタフライ』『ラブミーテンダー』『向日葵』『星霜、誘う』のように彼ららしい丁寧なメロディを聴かせる曲といった感じなので、そう考えると、「勢い任せ」の部分も先程挙げた抽象性を「程良く」高めるための一つの手法と捉えることができ、個人的にはそこまで気になりませんでした。
hozzyのボーカルが若干不安定に感じられるところもあるのですが、そんなマイナスに捉えられそうな部分でさえ取り込んでしまうほどの圧倒的な存在感をまとった作品。1曲目から、いや、ジャケットを見た時点からその世界観に一気に引き込まれるアルバムでした。
評価:★★★★★