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第94話

「ところで魔物にも女っているんだよな?」とドモンが言った瞬間、全員のジロリという冷たい視線が集中する。

「ハァ・・・あんたって、ほんっ・・とうに節操がないのね」と言いながら、ナナがカウンターへ突っ伏した。


「そうじゃなくて本当に人間と変わらないのかなと素直に思っただけだってば。オスメスがあるのか?あと見た目もほぼ同じならば、服はどうしてるのかとか」

「肌の色以外はほとんど違いはないわ。服というより草を編み込んだ腰みののような物を付けていたと思うけど」


「お、女は?おっぱ・・・胸は出しっぱなしなのか?」

「ちょっとドモン!・・・胸もあるしきちんと隠しているわよ。下と同じような感じだけど」

「そ、そりゃ一緒に温泉入った方がいいなやっぱり。うんそうするべきだ」


ナナに腕をつねられ叫ぶドモンと呆れる一同。


「イテテ・・・どうせならその魔物達に温泉を管理してもらう温泉宿でも建てりゃいいんだよ。そしたら旅の途中で野宿しなくて済むし、風呂も入れるじゃねぇか」

「!!!!!」


ドモンは当たり前のことを言っただけだ。

その魔物がそこに住み着いているのなら、いつものようにそれを利用するまで。

話が通じるのだから何も問題はない。


「ま、魔物が管理する宿って・・・」

「まあ魔物って言い方が悪かったかな?違う種族の仲間達が運営する宿だ」


その言葉に皆更に驚いた。

ドモンは魔物をもう『仲間』と断言したのだ。



「少し長い休みを取って、温泉宿まで新型馬車を走らせてさ。ゆっくり温泉に浸かるんだよ。ナナとサンと。エヘヘ」

「昨日言ってた混浴ってことになってるじゃないのよそれ。まあ・・・悪くはないわね」

「他の人にも裸を見られるけどな」


ドモンのその言葉にサンが思わず胸を隠した。


「そのかわりこっちもあっちの裸を見られるんだからおあいこだよアッハッハ!」

「もう!」とまたナナが呆れた。


「魔物の中にもエリーみたいなでっかいおっぱいの女いるのかな?」

「もうドモンさん!いたとしてもきっと女だけのお風呂に入るわよぉ!」

「いいだろ別に。娘もやっぱりナナみたいな体してて、仲良くなっちゃうかもしれないな?」

「なんか腹がたつけど、その魔物なら私も少しだけ仲良くなれそうだわ」

「父親の魔物はやっぱり・・・」

「おいドモン!どこを見てるんだ!」ヨハンが禿頭をペチンと叩いた。


ドモンがナナ達とそんな話をしている間、カールはずっと唸り続けていた。

ドモンの言っていることは常識外にも程がある。

今までの考えで言えば、これはとんでもないことなのだ。


魔物とどう戦うか?を考え続けてきたのに、魔物とどう向き合うか?どう共存するか?をドモンは考えていた。

そして温泉宿の話を聞いている時、カールは素直に『それは楽しそうだ』と思ったのだ。


またドモンがこの世界の常識を破壊しようとしている。


それはいつでも心地が良い。

カールは苦笑した。



「フフ・・・まあまずはこの街の施設からだな・・・」カールがニヤッと笑う。

「おい、本当に作る気なのかよ」

「ああ、だがそのためには協力が・・・」

「また俺じゃねぇだろうな」

「貴様しかおらんだろう」


また変なことに首を突っ込んでしまったと後悔するドモン。

ただ事が欲しかった風呂なだけに、いつもよりは真剣に取り組もうと考えた。


とは言っても、建築技師でも建築デザイナーでもないドモンは、今まで行った温泉やスーパー銭湯の話をするだけだ。



「なんと・・・貴様が言っている風呂はそこまで大きなものであったか・・・」

「そうそう。で、そういった施設を街外れにいくつか作るんだよ。それぞれ特色を変えてな。こっちは風呂上がりに綿あめ作りしたり、火おこし体験や職業体験、小さな子供を安心して預けられる場所とか用意するとか、お祭りをやったりとか、舞台でダンスや音楽を披露したりとかな」

「なによそれ!面白そう!」


カールとドモンの会話に女の子が目を輝かせた。

お風呂上がりにくつろいでいる大人や子供達の前で、得意のダンスを披露しているところを想像する。


「あっちの施設では完全に大人向けで静かな雰囲気にしたりしてさ。風呂上がりにゆっくりくつろげるラウンジみたいのを用意したり、女の子が、う、薄着の店も用意したり」

「ハァ・・」

「向こうの温泉には本当にあったんだよ・・・」


ナナに言い訳をするドモンだったが、本当のことだから仕方がない。


「他に、一般庶民が利用できないような超高級宿なんかがあってもいいんじゃないか?大風呂の他に各部屋に屋敷よりも大きめのお風呂を用意してさ。露天風呂なんかでもいいな。そしたらカールも奥さんと行けるだろ。あの奥さん方だけで利用してもいいだろうし、誰にも聞かれたくない重要な会議をする時にも使えるしな」

「!!!!!」

「他の貴族や王族が来た時には貸し切りにしたりさ」

「ちょちょちょっと待て!だ、大体の設計図とかは描けるか?それぞれもっと詳しく・・・」

「もうかなり前向きねぇカールさんったらウフフ」


ドモンの話に一気に食いついたカールにエリーが笑う。



「フゥ・・・参ったなこれは。頭がパンパンだ。悪いがヨハン、エールを一杯貰えるか?」とカールが銀貨を一枚出した。

「お?俺の分も奢ってくれるみたいだな。ヨハン頼むよ」

「何なのよあんた達朝っぱらから」

「もうすぐ昼になるだろ」

「じゃあ私も飲むわ」

「え?ナナも飲むのぉ!それなら私もいただこうかしら!」

「エリーが飲むなら俺も飲むか」

「ついでだからサンも飲めよ。命令だ」

「ふぇ?!私もですか御主人様」


カールが銀貨を引っ込め金貨を出した。


「これはとりあえず貴様への協力要請の契約金も含むという事でよいな?」

「まあ仕方ねぇな。よしとにかく乾杯しよう。かんぱ~い!」


「なにこの大人達!」


子供達はヤレヤレとしつつも、こんなにも楽しそうなカールの様子を見て驚いていた。

屋敷では見られない素顔である。ドモンが来た時にはその顔を見せてはいたが。


そして屋敷では一度も見たことがない、サンの泥酔した姿も見ることとなった。

とんでもない甘えん坊となってしまい、ドモンに抱きついてはナナに引っ剥がされるということを繰り返し、結局サンは記憶が無いままファーストキスを終えてしまった。


それを見たナナがやけ酒を飲んでしまい、結局ナナも泥酔。

ナナは全員が予想していた通り、脱ぎたがりの痴女であった。





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