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第93話

グラタンの第二陣が出来上がり、ナナ達も食べ始める。


「アツツツ・・・ホッホッホ・・・んー!あの白いのがこんな味になるのね!!」驚きのナナ。

「牛乳を使ってどうしてこんな味になるのかしらぁ?」エリーもハフハフと食べながら不思議そうな顔をしている。

「それでもこんなに美味いものになるんだから、やっぱりドモンは大したもんだよアチチチ」ヨハンは根性を見せてガツガツと食べた。


サンもナナの横に座らせグラタンを食べる。

フーフーとしてるサンを見てニコニコしているドモンを見たナナが、チラッとドモンを見てから真似をして可愛くフーフーするも、ドモンは大笑い。


「なんで笑うのよ!」

「だってお前、鍋食う時ズルズル~って昨日思いっきり食ってたじゃねぇか」

「それがどうしたのよ」

「俺と同じ物ずっと食べてたから、もう熱いのも慣れてんだろ本当は。さっきも上手に食ってたじゃねぇか俺みたいにホッホッホって」


ナナにそう言ったドモンもホッホッホとしながら食べた。


「私も御主人様や奥様みたいにハフハフホッホッホって食べたいです」と猫舌のサンに言われ、ナナが勝ち誇ったように「これは日頃の鍛錬の賜物なのよサン!ドモンは熱い物が好きだから覚悟しないと」と言って、大口を開けてグラタンを大量に口へ放り込む。




「まったく無茶しやがって・・・」ドモンがカウンターを拭きながらため息を吐き、サンが冷たい水を持って走ってくることとなった。



結局最後に食べ始めたはずのドモンが一番に食べ終わり片付けを始めると、カールがドモンに声をかけた。


「ところでドモンよ、例の施設の事なんだが・・・」

「それ今日じゃないと駄目なのか?せっかく子供らがお泊まり会で楽しんでいる時にわざわざ」

「確かにそれはそうであるが・・・早く詳しく聞きたいのだ。間違いなくそれは領民のためになるのか?」

「ああ、間違いないと思うぞ。きっと人も集まる」


ドモンの言葉にカールが腕を組み「うーむ」と真面目な顔をした。


「ただ・・・豊富な水が必要だぞ?温泉があるなら最高なんだけれども」とドモン。

「水源なら地下水で事足りるであろう。温泉は流石に・・・」とカール。


噴水もあるくらいなのだから、水の問題はないだろうとドモンも思っていた。

川もないこの場所に街が出来たのは、豊富な地下水があったためだろうと推測していた。


「ドモン、温泉は流石に無理よ・・・」とナナ。

「温泉自体はこっちの世界にもあるんだな?あれは体にもいいし久々に入りたいなぁ」とドモンが思いに耽る。

ドモンは温泉が大好きだった。


「温泉はあるにはあるが・・・」グラタンを食べ終えたヨハンも会話に加わる。

「温泉には魔物が集まるのよ。獣もね」ナナも片付けをしながらドモンにそう言った。

「え?!そ、そうなのか・・・」


確かに元の世界でも温泉に動物が集まることもある。

猿が温泉に入ってるところなど、観光名所にもなっているくらいだ。

暖を取れるということもあるし、餌としての草木が冬の間も育つこともあり、動物が集まるのだ。

ただドモンの興味はすでに別のところにあった。



ドモンは未だに魔物を見ていないのだ。まるで魔物から避けられているかのように。



「魔物かぁ・・・一度会ってみたいな」


そんなドモンの言葉に全員が驚きの声を上げた。


「何だってそんな危険なことを」とヨハン。

「そうよぉ!襲われたらどうするの!ナナと結婚するんでしょう?ナナだって本当はそろそろお家に戻っておいでと言いたいくらいなのよ私は」エリーが今の正直な気持ちを打ち明けた。


「ナナも魔物と会ったことあるのか?」

「そりゃあるわよ。すぐに逃げたけどね」

「なんかナナを見たら魔物も逃げそうだけどな」と男の子が茶々を入れた。こら!とナナに怒られ男の子が舌を出す。


「でもなんか魔物に襲われたって話あまり聞かないよな」とドモンが疑問をぶつける。

「魔物も人間を恐れてるのが多いからね。お互いに避けるというかそんな感じよ」


「やっぱり言葉は通じないのか?」

「言葉が通じる魔物は襲ってこなくて、通じない魔物が襲ってくることが多いわ。言葉の通じる魔物は顔も体も人間みたいなのよ」

そうナナがドモンの疑問に答えた。


「え?言葉が通じる襲ってこない人間みたいな魔物って・・・ただ種族が違うってだけで俺らと一緒じゃないの?」

ドモンが更に疑問をぶつけると「でも肌の色が違うじゃない。怖いわ」と女の子が嫌そうな顔をする。

それを聞いたドモンの顔つきが一気に変わった。


「ちょっと待てよ。それは聞き捨てならねぇな」

「何が?」とナナも不思議そうな顔をした。



「俺はどうなんだよ。それなら俺もお前らにとって魔物と一緒じゃねぇか」



不機嫌そうにタバコに火をつけたドモン。

サンが急いで灰皿を用意する。


「ドモンは少し日焼けしているだけでしょう?魔物は緑色だったり赤かったりするのよ?」

「俺は日焼けじゃねぇよ。元々肌はこの色だ。お前らとは多分人種が違う」

「え?!」


「私は御主人様がそうでも平気です!関係ありません!」サンがドモンの横に来て叫ぶ。

「それをその言葉の通じる魔物にも最初から出来るか?って話なんだよサン」

「・・・・・」


言葉が出ない一同。

ドモンはますます魔物達に会いたくなった。


「まあ魔物が本当に人間達を憎んでいるなら敵対するのも仕方ない。だけどそうじゃないなら、それはただの差別だ」

「・・・・・」

「今日からみんな俺の事は魔物だと思ってくれ。緑や赤色の肌になったっていい。ナナはそんな俺と結婚できるか?」

「す、するわ!ドモンはドモンだもん!うぅ・・・」


少し怒気を込めた言い方となってしまい、ナナを泣かせてしまったドモン。

「すまない、ちょっとナナに当たっちまった。ごめん」とすぐに謝り反省した。



「うーむ・・・魔物も種族によっては我らと同じということか・・・ドモンよ、これはなかなか難しい問題だぞ」と、カールが過去一番に大きな唸り声を上げた。


「それは百も承知だ。向こうの世界でも肌の色の違いは問題になっている。だがそれはいつか乗り越えるべき問題なんだ。人間も魔物もな」

「どうしてそこまでするのだ?」カールも素直にドモンへと質問をぶつけてみた。



「どうしてって、人間と魔物とで奪い合うより、みんなで仲良く温泉に入った方が絶対に楽しいからだ」



そう答えたドモンに「私はとても素敵な考えだと思います」とサンも涙を浮かべながら同意していた。





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