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第89話

「ドーモーン!元気出して!」とナナが大きな声を出す。


屋敷でドモンが辛そうな顔をしていた時のように、明るく声をかけるナナ。

こんな時こそ私が支えなければならない。

たとえ何かがおかしくても、ドモンを支え続けるとナナは決めたのだ。


「そうだぞ?ドモンらしくもない」

「私達は気にしてないわよぉ?」


ヨハンとエリーも元気づけ、「私は実はちょっとだけ嬉しかったです。叫んじゃいましたけど」とサンが笑顔を見せた。


「なんで嬉しいのよあなた」

「そう言えば前もこの人にお尻を叩かれて喜んでいたって聞いたけど?」

「そ、それは言わないで下さいお嬢様!」


女の子達の言葉に顔を真っ赤にするサン。そして男の子達も顔を赤くした。


「実際にドモンのお仕置きはすごモガガガ!」


親の前で暴走しそうなナナを寸前でドモンが止め、なんとか事なきを得た。

そして「フフ」とドモンは小さく笑う。



「さて・・・せっかくこうして集まったんだから、みんなで鍋でもつつこうぜ?」とドモン。

「鍋を・・・突く?剣の練習??」と、ナナがとんでもない勘違い。


「鍋料理をみんなで食べようってことだよバカだなお前は」

「だってそんな言葉知らないもの!」


ふくれっ面になったナナを無視し「あんなハンバーガーだけじゃまだ腹一杯じゃないだろ?」とドモンが立ち上がる。


「まだまだ食べられるぜ!実はもう腹が減ってたんだ」

「よくわからないけど僕も食べる!ドモンさんの料理ならきっと美味しいからね」

「私達も食べるわよぉ」


ドモンが元気になった様子を見て、安心した一同。

それを見たドモンがもう一度「フフフ」と笑い、そして心の底から皆に感謝をした。


「美味いもの作るからな。ナナ、サン手伝え」

「うん」「はい!」


ナナはドモンの右腕につかまり、サンはドモンの左腕の袖をつまんで、三人一緒にキッチンへと向かった。



「何をしたら良いの?」

「ナナは長ネギと白菜と人参とキノコ、そして豚肉と鶏肉をそれぞれ持ってきてくれ」

「わかった!」と階段を駆け下りていく。お肉は下の冷蔵庫に入っている。


「サンは少し大きめの鍋に水を入れて湯を沸かしてくれ。あとで具材を切るのを手伝ってくれな?」

「かしこまりました御主人様」

「うんうん。やっぱり本物じゃねぇか」


本物のメイドに相変わらず感動をするドモン。

不思議顔をするサンを見ながら、笑顔を見せた。

よくわからなかったがサンもニコッと笑い返す。



ドサドサとまな板の上へと持ってきた材料を置きながら「持ってきたよー。どうすんのこれ?」とナナ。

「じゃあまず鶏肉を包丁で叩いてミンチにしてくれ。ほら今日作った肉みたいな感じで」

「あー両手で包丁を持ってタンタンしてたやつね!分かったわ!」とドモンの言葉を聞き、二本の包丁を取り出した。


「お鍋の準備が出来ました。ご指示をお願いします御主人様」とサン。

「白菜をザク切りにして洗ってくれ」と指示を出すと、返事をするなりすぐに作業に入る。


今更ながらその振る舞いに感心するドモン。ナナとはあまりにも違う態度と言葉遣い。

思わず頭を撫でると、横のまな板からトントントントン!!というナナの包丁を叩く音が一段と大きくなった。


「もうっ!この鶏肉ぜんぜん切れない!切れないのっ!いやっ!」

「皮を外してないからだ。ほら貸してみろ」


包丁を受け取り、スッと皮に沿って身を剥がす。


「よしこれで大丈夫だ・・・・ナナ、ありがとな」

「え?」


サンに嫉妬して、思わずヒステリーを起こしてしまった事は自分でもわかっていた。

どうしても我慢が出来なくて声も上げてしまった。

なのにドモンから感謝をされ、ナナは困惑した。


「お前がお前でいてくれるから、俺は俺でいられる。その役目はやっぱりナナじゃないと駄目なんだ」


ドモンの言葉の意味がナナにはわからなかった。

が、ポンポンと頭を撫でられ、ナナも笑顔になった。


ドジで天然で泣き虫で癇癪持ちで、実はドモンと同じくらいスケベで、嫉妬深くて乱暴だけど優しくて、そして誰よりもドモンの事を好きなナナ。

ドモンは『ナナが好きなドモン』でありたいと思った。


いつものナナでいてくれる限り、いくら道を間違えそうになっても、ドモンはいつものドモンに戻れる。その事にドモンは感謝した。



お尻を振りながら機嫌よくトントンと包丁を叩くナナを見ながら「じゃあサンは生姜をすり下ろしてくれ」とまた指示を出すドモン。

「はいかしこまりました」と去っていったサンを見ながらナナのお尻を触り、「だーめーよ!今日は子供達もいるんだからん」と優しく手を払うナナ。ナナのお尻の振りがより一層速くなる。フンフンフン~♪という鼻歌が、鼻歌のくせに音痴だった。


その横で野菜をザクザクと切って、豚肉をドモンが薄切りにしていく。

「肉をスライスする機械を今度鍛冶屋に頼んでみようかな?」と文句を言うドモン。


サンがすり下ろした生姜とナナが叩いた鶏肉を合わせ、ネギやにんにく、塩胡椒と醤油でドモンが味を整えていく。つなぎの片栗粉と卵も入れた。

右と左にナナとサンがくっついて見ながら、目を輝かせる。


「うふぅん~美味しそうな匂いねドモン。ちょっと食べちゃ・・・」

「駄目だよ生は。やめとけ」

「お腹を壊しますよ奥様」


暴走しそうなナナを止めるドモンとサン。

鍋の方に鶏団子以外の具材を入れ、味噌を溶かす。

醤油はもう少ないのでこの日は味噌ベースの鍋となった。

隠し味で唐辛子を少し入れようと思ったが、子供達もいるのでこの日はやめる。


グツグツと煮える鍋の前に立ち目を瞑り、延々とクンクンクンクンと匂いを嗅ぎ続けるナナを後ろから見て笑うドモンと、プルプルしながら必死に笑いを堪えるサン。

煮えたところで鍋をドモンが持ち、鶏肉が入ったボウルをナナ、お椀と箸をサンに持たせてリビングへと戻ってきた。



「うわあ!なんだよこれ!!」

「あぁ・・・もう美味しいわ食べる前から」

「いい~にお~い!」


ナナのように子供達がクンクンと匂いを嗅いだ。


「これは前に作った豚汁というやつか?」とヨハン。

「似てるけどあれとはまあちょっと違うな。これは味噌ちゃんこ鍋ってところかな?」


ドモンがそう答えながらもう一度キッチンに戻り、何かの準備をコソコソと行っていた。


「お米がないのが残念ねぇ」とエリーが悲しそうに微笑む。

「俺らもすっかり米好きになっちまったな。ドモンに教えられて」

「体が・・・体がお米を欲してるわ・・・今まで私達どうして平気だったんだろうね?」


ヨハンとナナも同意したが、子供達やサンにはよくわからなかった。


「お前らにもその内美味しい米を食わせてやるからな?もう少し待っててくれよな」ドモンがそう言いながら、真っ赤に焼けた石をフライパンの上に乗せて戻ってきた。


「何その焼けた石は!!」女の子が思わず椅子から立ち上がって逃げる。

「ドモンお前そんなもんどうすんだ?!」とヨハンやエリーまで立ち上がり、それを見たナナやサン、他の子供達も逃げた。


「ドモン!そんなものどうするのよ?!」

「ま、まさか?!」


ナナとエリーがムニムニと抱き合いながら更に後ろに下がり、ヨハンも叫びながら一緒に後ろへと下がる。

サンが子供達を抱きしめるようにして背を向け、ガードをした。



「イッヒッヒ!そのまさかよ!」



ドモンがトングで焼けた石を掴み、高笑い。

皆「やめてー!」と叫びながら、ドモンがいつもの調子を取り戻したことを喜んでいた。





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