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第755話

ドモンのいる王宮の方でも当然すでに異変を察知しており、情報集めに様々な人が走り回っている。

過去にこんな事例があったかどうか?他の地域や他国はどうなっているのか?

ドモンにも意見を求められたが、ドモンももちろんわからない。


「ドモン!なんか空の様子がおかしいの!」帰ってきたナナがドモンのいる部屋に飛び込んできた。

「わかってるよ。こんな気味の悪い空見るのは俺も初めてだ」

「っていうか、どうして私裸だったのよ!!あの後大変だったんだから!みんなに触らせてあげて」

「お前だってサンとシンシア相手に何やってたんだよ!しかもあんなに例のキノコ・・・ん?みんなに触らせたってなんだよお前」

「わ、わかんない酔ってたから・・・」


胸の間に顔を挟んでぱふぱふとするだけで銀貨1枚貰っていた事実をケーコから伝えられ、お尻が倍に腫れ上がるくらいドモンに叩かれたナナ。

時給銀貨1枚が平均的な収入のこの世界で、たった二時間で元から貰ったチップも含め、銀貨150枚ほど稼いでいた。


酔ったはずみとはいえ、売春の一歩手前のグレーゾーンに足を突っ込んだのは看過できない。

ついでにケーコもお尻を叩かれお仕置きは終了。


時刻はすでに22時を回っているが、空は夕焼け空のまま。

入ってきた情報によると、街はかなりの混乱を見せた後、今は皆家の中に閉じこもり、ゴーストタウンのようにどこもひっそりした様子らしい。



そうして真っ赤な空のまま、五日が経過。

それまでの間、各地域各国からの使者が次々とやってきて、深刻な顔で現状を報告しながら、ドモンに救いを求めてきた。


もうドモン討伐派も擁護派もなにもない。

あるのは絶望のみで、女神の加護を受けたとされるドモンだけが唯一の希望の光。


完全にこの世界の命運はドモンに託されたのだ。



それよりも悲惨なのは元の世界。

あちらも世界中の空が真っ赤に染まり、大混乱を起こしていた。


ドモンのいる世界のような希望の光がない状況に、皆がこの世の終わりだと自暴自棄になり、自ら命を絶つ者、暴徒化し犯罪を犯す者などが多数続出。

SNSでは悪魔探しが頻繁に行われ、情報は錯綜。私刑を行う者も増え続けた。


仲間になれば助かると信じる悪魔崇拝者も現れ、殺人を犯し生贄として捧げる行為も世界中で行われた。

主に犠牲となったのは、弱い立場である老人や子供、女性である。


悪魔に魂を売った者と、偽善の死刑を繰り返す者達が殺し合い、ついに世界の人口は半分にまで減った。


ドモンの父親が言った『救済』を求め、悪魔と思われる人を殺しウオンに辿り着いた者達は、ドモンの父親自ら『魂の救済』を行い、醜い肉の塊となって、もがき苦しみながら死んでいった。


そこまでになってようやく『翌日の0時に救世主が現れる』という情報が拡散され、世界は少しだけ落ち着きを取り戻し始める。

その情報を流したのはドモンの父親。



「いよいよね。今晩の夜0時だったわよね?」とナナ。

「多分。一日間違えてるかも知れないけど、特に連絡もないしあってるはずだ」


ドモンもちゃらんぽらんなら、当然父親もちゃらんぽらん。

長く生きてるのだろうし、一日くらい間違ってもどうってことないだろうとドモンは考えていたところ、「今晩でいいぞ。確かに0時ってのはわかりづれぇなガハハ」とドモンの頭の中にだけ声が聞こえた気がした。


救世主だなんだと崇められ、皆が皆ドモンを応援してくれるが、当の本人は浮かない顔。

それはもちろん、ドモンがただのおじさんだからだ。


どうして俺が戦わなければならないのか?と自問自答を繰り返し、何度も対策を練っては嫌になって、酒を飲んでふて寝する。


「あーもうやだなぁ・・・」

「まーたブツブツ言ってる。私達もついて行ってあげるから頑張ろうよ。ドモンならきっとなんとかなるってば」

「サンも頑張ります!」「ワタクシも出来る限り力になりますわ」「なんとかしなさいよね」


結局ケーコを含む女性陣も一緒について行くこととなり、ドモンは渋々父親である悪魔と対峙することを了承した。

ナナは持ち前の能天気さから本気でどうにかなると信じ、サンとシンシアは、死ぬ時は一緒と覚悟を決めた。


覚悟さえ決まってしまえば女は強い。

太古の昔から、メスはオスに我が身の命運を託してきたのだ。まさに命懸けで。

その覚悟がなければ妊娠して子孫を残すことなど出来ない。


ちなみにケーコだけはそこまで深刻に考えておらず、「あのバカ、なんかやってきたら引っ叩いてやる」と息巻いている。

ケーコにとってはドモンじゃない方のドモンであり、子供達の父親でもある。ある意味恋人か内縁の夫のようなものだ。

みんなから恐れられるヤクザの親分やマフィアのボスでも、家庭に入ればただの男といったところか?


晩の食事を終え午後8時頃、自動車に乗り込んだドモン達。空はやはり赤いまま。

大勢の騎士に先導されながらゆっくり進み、沿道に並ぶたくさんのドワーフ国民に見送られた。


もうすぐ長かったドモンの異世界への旅も、終わりを告げる。



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