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第748話

「おい!なに勝手に決めてんだよ!あとついでに魂を入れ替えたってなんだよ!お前絶対クソ親父だろ!なあ!」と窓の外に向かって叫ぶナナ。

「やだ、私が目の前で叫んでる。どうなってるのこれ?てか口の中タバコ臭っ!オエッ!」ドモンが自分の口を両手で可愛く押さえた。


「うわ体が重てぇ!どうして胸にこんなオモリがくっついて・・・ん?」右胸を持ち上げナナは首をひねった。

「ヤダすごい吐き気。それに顔と耳が抓られてるように引きつるし、背中や胸やお腹が剣が突き刺さってるみたいに痛い。それになんなの?この左脚!痛いどころじゃないし、グラグラして立ってらんないじゃない!オエッ・・あ、吐いちゃうゴメ・・・サンお願い」ヨロヨロと椅子に腰掛け、サンが用意した桶に嘔吐したドモン。


他の者達は、それらの様子をキョロキョロと不思議そうに見守った。

そして本人達も、その周りの者達も、本当にドモンとナナの中身が入れ替わったのだと、しばらく考えようやく理解した。



「あ、あの野郎~!とんでもないことしやがりやがって!あイテ!」

「ちょちょちょ!ドモン様いけませんわ!まず脚を閉じてくださいまし!」


ナナの隣の椅子にふんぞり返るような格好で腰掛け、行儀悪く片足を椅子の上に上げたドモン。

自分の胸を膝で蹴飛ばすという、生まれて初めての経験。

その際に見えてはいけないものが色々見えてしまい、シンシアが慌てて隠しながら注意した。


「うぅあちこち痛い・・・気持ち悪い・・・ハァハァ」

「御主人様、じゃなくて奥様大丈夫ですか?!」

「もう死んじゃうかも・・・スンスン・・・サン、いい匂いがするハァハァハァ」

「ごしゅ・・・お、奥様?!皆様が見てらっしゃいます!」

「ああもうどうしたらいいの!これ!」


ドモンの体になったナナは、猛烈な吐き気と体の痛みに『死』を感じていたのだが、そこで男の『種を残す』という強烈な本能により発情。

生まれて初めてのとんでもない性欲に見舞われ、脳が身体を制御出来ずに、ナニかをものすごく元気にしながらサンに襲いかかった。

猿のように腰を振ってサンにナニかを擦り付けるも、性欲はどんどんと高まる一方で、ナナは大混乱の中恐怖に包まれた。


「サン!ナナを水浴びにでも連れてって、鎮めてやってくれ!」

「あ、はい!でもその・・・宜しいのでしょうか?」

「仕方ないだろ。まあ俺だと思ってサンもほら・・・な?」

「か、かしこまりました!では奥様こちらへ。そこを出るまで少し前かがみになっていただいて・・・そうですそうです!すぐに楽にしてあげますので」


言葉を濁しながらドモンはサンに何かを伝えた。

ハンカチでドモンの格好をしたナナの大事な部分を隠しながら、ゆっくり手を引いて歩くサンの姿はまるで介護士。


ドモンは体を無理やり入れ替わりさせられた怒りを除いて、意外と冷静だった。

『女の体になったらやってみたいこと』なんて色々あったはずなのに、今は全くその気がない。

素っ裸になって鏡の前に立ってやろうとか、女風呂に入るとか、なぜそんなバカなことを考えていたのか?と自分にガッカリするほど。


一応一度くらいは『女の幸せ』ってやつを味わってはみたいが、心が男のまま知らない男に抱かれるのも嫌だし、ましてや自分に抱かれるのなんて以ての外。

それよりも今はおしっこが上手く出来るかが心配。下半身の違和感がすごい。


「それについてはワタクシが指南致しますわ。ついていらして」

「おぉ悪いな・・・うわっあぶねっ!!いってぇ・・・」

「足元お気をつけなさいまし」

「気をつけろったって足元なんておっぱいのせいでまるで見えねーぞ。そりゃしょっちゅう転んで皿割るはずだ。ええとエリーが言うには階段は横向きでだったな」


転んでぶつけた膝が普段の数倍痛い。

ただその後、重い胸のせいでバランスを崩し何度か尻餅をついたが、ポヨンポヨンと跳ねただけで尻は全く痛くない。


「そんなに力まなくても・・・もっと力を抜くような感じで。尿道が切れてしまいますわよ?」

「だ、だってそんなこと言ったってよ・・・こうかな?あーなんか体の真ん中から全部抜けて・・・にしてもすごい勢いだな。尻の方まで垂れちまって・・・女ってのは大変だな」

「だからそこまで力を込めなくても宜しいのですわよ。さあ拭いて差し上げますわ」

「デカい胸のせいで拭かれてる様子が全く見えないから、なんか恥ずかしいなこれ。でもどうもこれ?・・・恥ずかしいのがそ、その・・・なんだか妙な気持ちだ」



・・・と、ドモン達が悪戦苦闘してる中、王宮の中は騒然としていた。

あの声は女神なのか悪魔なのか?

ただそれよりもこのドモンとナナの騒動により、あの大きな火の玉よりもすごい超常現象を現に見せられた。


やはり人がどうこう出来るものではない。命どころか、その魂すらその手に握られているのだから。



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