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第738話

海に着き、まずは漁船の確認。

今回用意出来たのは、大きな網を引いて魚を獲る曳き網漁船と、太い一本の縄から針の付いた枝縄を一定間隔で何本も付けた漁具を使用するはえ縄漁船の二隻。


ギドが設計図を描いた船のエンジンやロープの巻き上げ機もしっかりと搭載されており、まさにドモンがイメージしたままの漁船である。

ただし海図やコンパスは随分と原始的なもので、今はまだ遠くまで行く段階ではない。


出港する漁船に手を振り、見送ったドモン達。


「ドモン様はついて行かなくて宜しかったのですか?」とシンシア。

「漁のやり方は知っていても、道具や機械の使い方は俺も知らないもん。ギドから直接教わっていたあいつらの方が余程詳しいよ」


そんな言い訳をして、ドモンは面倒な仕事から逃げた。

力仕事はまっぴら御免な上に、危険なことに足を突っ込みたくないというのもあった。

「人には適材適所ってもんがある。俺には向いてないだけだ。めんどくせぇし」と、うっかり漏れる心の声。


「皆様~温かいスープをご用意致しましたよ~」とサンが、ナナと一緒に鍋を持ってやってきた。

「材料は全部揃ってないけど、ドモンが言ってた『ファッキューショー』だかってやつの作り方で作ったスープよ。海で獲れたものも入れたらもっと美味しくなるんだろうけど、これでもすっごく美味しいの!みんなも飲んでみてよ!」ナナは一足先に5杯ほど味見済み。

仏跳牆ファッチューションな。いい加減にしないとお前は、身体も言動も全て放送禁止のピーになるぞ」

「ピーって何??絶対良い事じゃない気がする」


憤慨するナナを横目にサンから器を受け取り、まずはドモンが味見で一口。

色々出汁となる物を入れて煮ただけのスープなのだから、まあ想像通りの味だろうと高をくくっていたドモンも、これには思わず面食らった。


「うわ何だこれ?!なんなら苦手な椎茸の出汁の味に近いものになると思っていたのに、想像の遥か上を行ってんな。塩も入れてないんだろ?」クイッと器を傾け、ドモンは全て飲み干した。

「はい!御主人様達がツバメの巣を獲りに行っている間、言われていた通りに奥様と干してあった材料を水で戻し、煮込み続けたのです。その他は一切手を加えてはいません」とサンはニッコリ。


「身体もぽかぽかと温まってきた。海に入るなら先に飲んだ方がいいぞ?」とドモンももう一杯おかわり。

「私は入るつもりはなかったんです!それにまさか子供の前でこんな恥ずかしい格好をするなんて」ドモン提供のやや小さめのサイズのビキニを着た母親。


「でもほら息子の為だし。さっきも言っただろ?母のおっぱいは子供の夢を叶える・・・じゃなくてなんだっけ?母の想い??ま、まぁとにかくお前の子供が、街ゆく人々のおっぱいを片っ端から触って歩けるようになるよう頑張れよ。親なら子供の夢を奪うような真似するな!」

「そんなこと言ってませんでした!」「そんなこと言ってないよ!」


なにか格好の良いことを言うはずだったドモンだったが、思っていたよりも重量感のある母親の胸を見ている内に、すっかりさっき何を言っていたか忘れてしまった。

が、ドモンが言いたかったことはなんとなく理解できるし、子を想う母の気持ちも確かにここにある。


息子に向かってウンと一度頷いて、母はサンからスープの入った器を受け取り、ボニーもそれに続く。

フーッと溜め息なのかスープを冷ましたのかわからない音を立て、ふたり同時にスープに口をつけた。


「え!え、美味しい?!」「これって一体??何の味?何の味なの?!」

「なになに?どうしたのふたりとも??ねぇ、僕も飲んでいいかな?」


驚く母とボニーの姿に、感謝の気持ちよりも思わず好奇心がつい出てしまった息子。

自分に向かって優しい笑みを浮かべていたはずの母が、数秒後には夢中でスープを飲んでいるのだから、気になるのも仕方ない。


「はい、ではこちらをどうぞ。お子様向けに苦みとクセを少し抑えたものになります。基本的には同じ作りになってますし、私としてもこちらの方が飲みやすくて好きです」

「ありがとうサンさん!」

「サンでいいですよ。その方が嬉しいんです」

「わかったよ。じゃあいただきますサン」


車椅子に座ったままスープを受け取った息子は、フーフーと少し冷まして一口飲んだあと、熱いのに大丈夫か?と皆が思うほど無言でゴクゴクと飲み干し、空を見上げて満足そうにゲップをしていた。


「さあ行くわよ。波は高くないけど気を付けてね?混乱した時は力を抜いて、まず水面の明るい方へ顔を向けること」とボニー。

「わかっています。あなたこそ油断は禁物ですよ。お互い無理をしないように」


ボニーと母親はそう言い残し、砂浜から大きな岩のある磯に向かって歩いていった。

岩場の潮の流れが砂浜とは全く別物であるということも知らずに・・・。



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