第734話
「ブハァ!フゥフゥ・・・やっぱりサンが一番駄目ですぅ」とサン。
「でも30秒も息を止められるようになったぞ。だけど無理だけはするなよ?」サンの顔を王宮仕様のふわふわタオルで拭くドモン。
「だぁぁ!!ドボン今だんびょお?!」
「うわ鼻水!きったねぇナナ!今47秒だよ。一分まで惜しかったな」
ギャグ漫画みたいな鼻水を垂らしながら、洗面器から顔を上げた残念美女のナナ。
その鼻水顔が見たくなって、シンシアもすぐに顔を上げ、ケタケタと大笑い。ナナもエヘヘと照れ笑いしながら、ほっぺたをパンパンに膨らませたサンからタオルを受け取った。
まだ真面目に息止め練習をしていたボニーは、怒りで体をプルプルと震わせていた。
「58、59、ちょうど一分だ。ボニー無理するなよ?苦しくて体が震えてるぞ」
「ボハァ!!違うわよっ!!こっちは真剣にやってるのにみんな遊んでるから!!もう!!」
サンが手渡した新しいタオルで顔を拭くボニー。
あれから城に戻った後、早速息止めの練習だとやらされたのが、この洗面器での息止め練習。
ドモンから聞いていた話とまるで違っていて、ボニーはすっかり拍子抜け。
一緒に海に行って遊ぶつもりのナナ達も練習に参加していた。
「ああやって言っとけば、多分向こうも感謝するだろ?少しでも恩を売って、許してもらえれば御の字ってもんだろよ」
「こっちは真剣に覚悟を決めてたのに人を騙して!詐欺師!悪魔のような特訓はどうなったのよ!」
「やるわけ無いだろ。恐怖で体が強張って、却って息が続かなくなるだけだよ。練習にもならないし、何より非効率的だ。水の中で頭を押さえつけられるのって本当に怖いんだぞ?」最近ドモンも自然にヤレヤレのポーズが出るようになってきた。
「サ、サンに試しにやってみてください御主人様。先程と同じく三十秒だけでも」何故か目を輝かすサン。
口いっぱいに空気を含み、柔らかいほっぺたをさっき以上にプクッと膨らませ、ちゃぽんと洗面器の水に顔を付けるサン。
しょうがないなとドモンが軽くサンの頭を押さえつけた瞬間、ブクブクと一気に空気を吐き出し、イヤイヤをするように頭を振りながら足をジタバタとさせた。
更にそこからほんの3秒だけ頭を押さえつけたままでいると、サンはテーブルの上にあった洗面器を手で払いのけるように横に飛ばし、号泣しながらドモンに抱きついた。
本気で殺されてしまうのかと思ったのだ。漏らさなかった自分を褒めてあげたいくらい。
「ちょっと可哀想よ!サン大丈夫?!」心配するボニー。
「まだ15秒くらいだよ。サンどうだった?」
「ヒック・・・恐ろしくて苦しくて不安で、頭が混乱してしまいました・・・もう何もかもおしまいなのだと思うとハァハァ・・・」
ドモンの胸の中でガタガタと震えながら、激しく呼吸をするサン。
「見ての通りだよ。水中で混乱すると息も続かないし、それがさらなる混乱を招く悪循環になる。だから無理に息止めの練習するよりも、まず水の中で冷静になる練習から始めた方が良いんだ」
「ハイハイよくわかりました」ボニーはドモンの言い分に納得せざる得なかった。
「心を無にして冷静に。少し苦しいと思ったら無理をせず呼吸しに行く。それでももし溺れそうになったら、バシャバシャと暴れたくなる気持ちはわかるけど、とにかく明るい水面に体を向けて、首と体を伸ばして脱力すること。そうすれば体は勝手に浮く。あとで少し風呂で練習して、明日みんなで湖へ予行演習に行こうな」
「わかりました」「はい!」「やったぁ!」「ワタクシに出来ますかしら?」
風呂での特訓は困難を極めた。
絶対に動じない心を持つためだと『例のキノコ』をドモンにひとかじりさせられ、全裸になって湯船のお湯に浮かぶというもの。
湯船は四人が並んで寝転がっても余裕があるくらいの大きさの特注品。モノ作りの得意なドワーフにとっては朝飯前。
それでドモンが敏感な部分を触るイタズラをし、一分間耐えられたら成功というもの。
誰かひとりでも暴れたり沈んでしまった場合は、全員最初からやり直し。
結局三十分近く成功しないまま、誰から聞いたのかケーコが鬼のような形相でやってきてお開きとなった。
翌朝白鳥のいる湖までやってきた一行。
サドが付けた護衛の騎士十名と、ケーコがやってきた異世界への出入り口を守る王宮の騎士四名、身の回りの世話をするメイドや執事など六名に見守られながら、豪華な王宮の馬車の中で水着に着替える。
「楽しみねー水遊び!」
「最近は少し汗ばむほどの陽気になりましたので、サッパリ出来ますわね」
「この国自体ちょっと暑い地方みたいだからな。俺のいた世界の俺の住んでた地方だと、この時期湖になんか入ったら凍って死ぬぜ」
「白鳥さんがいませんね御主人様。もう北の方へと渡っていったのでしょうか?一緒に泳いでみたかったです・・・」
「・・・・」
ドモン達の会話を聞き、無言でプルプルと震えるボニー。
「遊びに来たんじゃないんですからね?!特訓しに来たのよ私は!」
「なによ、付き合ってあげてるんだから怒ることないじゃない。そんなに汗だくになってるからイライラするのよ。そうだ!湖でサッパリ汗を流したら、身も心もスッキリするわよきっと」「そうですわね」「サンはスッキリしてます」
鼻歌交じりに水遊びを楽しみにしているナナ達にとっては、正直特訓などどうでもいい。
「あなた達はそりゃスッキリもしてるでしょうけどね。こっちは独り身なのよ?あんな中途半端で部屋にひとりにされて、隣から一晩中あなた達の変な声聞かされたら、もうたまったもんじゃないわよ!」
「欲求不満はたまったのにな。なんつってフフフ。そんな種馬みたいに鼻息荒くすんなってボニー」
「誰が種馬ですって?!私は女よ!それなら今この格好で、あんたの顔の上に馬乗りになってあげましょうか?!ああもう私何言ってんの?!」
「いいから早く水着着ろってば。女ってのは一度裸見られたらもう平気になるってのは本当だな」
「うるさい!こんな胸の人や美しいお姫様や可愛い子が妻なら、私の裸なんてどうだっていいでしょ。あなたもさっさと着替えなさいよ!全部ケーコ様に言いつけてやるんだから!」
「絶対やめろ馬鹿野郎!死んでも殺すぞこのクソ女。俺が死んでもどうだっていいっていうのか」
すっかり仲良くなったドモンとボニー。
正直こうしてドモンに対して悪態をつくのが心地良くもある。まるで自分の夫と軽い口喧嘩をしている気分。
いっそのこと昨日抱いてくれてさえいれば色々気持ちは吹っ切れていたのにと、やはりボニーは苛立ちを隠せなかった。
大騒ぎしながら水着に着替え終えた一同。
サンがフーフーと浮き輪を膨らませている時、「お久しぶりです!」と聞き馴染みのある声が響き渡った。
もういよいよ限界で病院行ったら「呼吸器内科ないです」と言われすごすご帰宅。
ケーコが内科の予約入れてくれたけど、電話で「あー呼吸器内科ないですね。ある病院に行った方が良いかと」と同じ事を言われ、「どこかいいとこありますか?」「わからないです」「ああそうですか」で終了(笑)
もういいやとパチンコしに行って、99連チャン後発作&嘔吐。
なお0.2円パチンコのため2500円にしかならなかったというね・・・
そんなとこで更新遅れてしまった。明日こそ病院行く予定で、万が一更新遅れた場合はその点ご了承を。