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第730話

「ドモン殿、此度の件、改めて感謝いたすぞ」

「いやそりゃどうも」

「それで私は、そなたへの全面支援を行うことに決めた。それと私とここにいる者達で、口添え出来る貴族らにも協力を願おうと考えておる。各国から命を狙われておるという話だったな?」

「まあそうらしいよ。俺は悪魔というか、魔王になっちゃったみたいだから。それでも守ってくれるの?魔王の護衛みたいに言われちゃうよ?」

「構わぬ。私が一度決めたことだ」


ドモンとサドのやり取りを聞いて、ナナは少し暗い顔。

今はドモンを守る行為をするだけで、この世界の敵になるのだと急に実感したためだ。

ということは自分も世界の敵になるのだから、今頃両親も大変な思いをしているのではないかと心配になったのだ。


そうなれば、この国の3割から4割の部隊が、ドモンの味方につくことになる。

これによりドワーフ王国の永世中立が放棄されることは必至。


「俺にとってはありがたいけど、あれしきのことでどうしてそこまでする必要がある?場合によっては責任追及されかねないんじゃ?」

「それは私がそうしたいと思ったからだ。それ以外の理由が必要であるか?」

「そりゃわがままってもんだろう。それで命を落とす方は、たまったもんじゃないぞ?」

「私が持つ部隊は、私のわがままを叶えるためにおる・・・は、流石に言い過ぎかフフフ。ではその価値があるのだと示すのみだ」


サドはドモンにそう言うと、騎士団全てを大きな中庭に集めさせた。その数約千名。

その数はカールが持つ騎士の十数倍、アンゴルモア王国の王宮所属の騎士の数に匹敵するほど。

しかもその騎士一人ひとりが、数名から十数名近くの兵を率いる部隊長クラスであるというのだから驚く他ない。


この武力こそが、ドワーフ王国を中立国家として成り立たせている理由。

中でもサドが持つ騎士団は、ドワーフ王国の中でも一大勢力と言われているものだった。

その説明を受けつつ、屋敷の二階のベランダ向かう一同。



「うわぁこれもう・・・なんちゃら連合とか、なんちゃら会とかと変わらねぇだろ・・・四代目にキリュウとかいう名前の会長いないだろうな?この全員を納得させる方法なんて、どう考えてもあるように思えないんだけど」


サドに対して片膝をついて頭を下げている騎士達を見ながら、流石のドモンも引きつり笑い。

これだけの人数が集まっているというのに、物音ひとつ聞こえない。聞こえるのは風の音のみ。


そうしてサドが右手を斜め前に高々と上げると、騎士達は一斉に立ち上がり敬礼を行った。

手を下ろすと騎士も気をつけのポーズに。


騎士達の先頭には、明らかに他とは違う鎧を着た屈強な騎士が並ぶ。

第一騎士団長から第十騎士団長の十名なのだと説明を受け、ドモンは「そりゃどこも攻め込んでこないわ」とますます怪訝な顔。

いけない某組織の連合総本部の会長の横に、理由もわからずいきなり立たされた気分。


「いやあのさ・・・やっぱり遠慮してお」

「ドモン殿を守る価値を示すなど、容易いことだ」


ドモンの言葉を遮ったサドは、右手を差し出して握手を交わした。

その瞬間、統率の取れていた騎士達から、ドッという声が漏れた。


聞けばサドは、たとえ相手が王族であっても、決して握手をかわさないとのこと。

それだけの力と権力を持ち、そしてプライドもあるのだ。


だからこそ王族は強権を発動し、ニキータを投獄して全てを揉み消そうとした。

全ては寝返られないようにするため。


そんなサドが握手を交わす。それはつまり、ドモンが自分と同等の立場であると示した形。


騎士達はもちろんだが、一番に焦ったのは厨房で一緒に料理をしていたコック達だ。

ついさっきまで「この味付けでいいかい?ドモン」「あんたなかなか良い腕前だねぇ。俺の弟子にしてやってもいいよ。一年は皿洗いやってもらうけどさ」なんて軽口を聞いていたのに、まさかの事態に顔面蒼白。


「あの・・・これがどうかしたの?」それでもまだ事態を飲み込めないドモン。

「ではドモン殿、軽く右手を掲げてみるがよい」

「え?あ、うん・・・皆さんどもどもハハハ」


ドモンが照れくさそうに、サラリーマンが混雑した場所を通り抜けるような手刀を数回軽く振ると、騎士達が一斉にドモンに向かって最敬礼を行った。


「わぁぁ!ナニコレすんごい!」「勇ましいですわねドモン様」「御主人様格好いいです!」

「マジかよこれ・・・どういうことだよ」

「言葉で価値を示す必要などない。理由も説明するまでもない。私の大切な友人だということを示したまでだ。そしてこれも示しておかねばならぬな」


今度はドモン達の代わりにニキータを登壇させ、サドは左手でそっとニキータの肩を抱くと、一瞬の静寂の後、騎士達は爆発したように歓喜した。


その特異な性格と性癖ゆえに相手が決まらず、ニキータの件があってからは特に塞ぎ込みがちで、「この家も私の代で終わりであろうな」と周りだけではなくサド本人も半ば諦めかけていたことが、今日ついに解決したのだ。


それでようやく騎士達もドモンの事が理解できた。恩人どころの話ではないのだと。


「合コンしただけなのに。下手すりゃハプニングバーのSMデーとやってること一緒だぞ」やはりドモンは呆れるばかり。

「む?何か言ったか?ドモン殿には今宵も会を取り仕切って貰うぞ。無論、その対価はいくらでも支払う」


「それなら代わりに美味い酒でも用意してくれ。金はいらないよ。そんなもの友人から貰うわけにはいかないだろ」

「ハハハ!ならば国一番のワインと、秘蔵の拘束具を用意してやろう。あれは素晴らしいぞ?絶望と快楽の狭間で歓喜の涙を流すことになるだろうな」

「まぁゾッとすること。まったく主様ったら・・・」苦笑するニキータ。


はしゃぐサドに、女性陣は皆ヤレヤレのポーズ。

そうしてこの世界にもサドとマゾ、つまりはSMという言葉が生まれることとなった。



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