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第724話

そこから更に数日後。

ドモンの取り計らいにより、終身刑の女性と問題となった貴族との間で、また会食が行われることになった。

ナナ達の他にも、街で知り合った貴族に取り入ろうとする女連中も参加予定。


つまりは合コンである。


「いいかみんな、俺達も上手いことその貴族に取り入るぞ。いざという時に腰の重い王族と違って、貴族は味方にすればすぐに騎士とかを寄越してくれるからな。カールみたいに」

「確かに」「そうですね」ナナとサンも納得。

「立場上認めたくはないですが、王族は庶民ひとりのために軍隊を動かしたりはしづらいですわね。国の為のものですから」


王族であるシンシアも不本意ながらその言葉に納得。


「俺も街で知り合った女をバンバン上納して顔を覚えてもらうから、お前達も色仕掛けで気に入られるようにするんだぞ。合コン・・・じゃなくて会食なんてその為のようなものなんだから。スケベ目的でもあるけどな、男も女も」

「・・・さいってい!女を自分のための道具にするなんて。無理やり何かされたらどうするつもり?」


ドモンの言葉に思わずそう吐き捨てた終身刑の女。

素知らぬ顔でドモンがタバコに火をつけると、シンシアが反論した。


「ナナも以前言ってましたが、王族であってもこのようなことは行われておりますわ。政略結婚だけではなく、意中の男性をどう口説き落とすか、いえ、口説き落としに来ていただけるかを考え、常日頃から己を磨き上げるのが女としての務め。それには王族も貴族も庶民も、そこにいる小鳥だって変わらないですわ」

「意中の男性ならいいけれど、そうじゃない人に無理やり迫られたらどうする気なのよ」憮然とした表情のままの終身刑の女。

「お断りしますわ。何をおっしゃられるのやら。それこそ小鳥にだって出来ますわよ?」シンシアの華麗なヤレヤレのポーズ。

「く・・・」


味方であるはずの女性側の立場からのまさかの反論に、終身刑の女は苦虫を噛み潰したような顔。


「不思議だったんだけど、大体なんでそんな会食に参加したの?仕事辞める覚悟で記者に告発出来るくらいなら、その時点でお断り出来たんじゃない?何なら仮病だっていいわけだし」とナナ。

「そ、それは・・・参加しないと立場が悪くなるから・・・記者に訴えたのもそういう悪い慣習を無くしたくて私」

「参加しないで訴えればいいじゃない。参加しといて美味い汁吸えなかったからって、後出しで復讐がてら全部記者にバラしただけでしょ」

「そんな事ないです!それに中には無理やり抱かれた女性だっているって・・・酷い乱暴をされて」


今度はナナがヤレヤレのポーズ。


「そこまで乱暴されたのなら、憲兵の方なりなんなりに、まず訴えた方が宜しいかと思います。それは事件ですので。それにそのあの・・・男女の営みに関しては、私が言うのもおこがましい事なのですが・・・その~」と今度はサンが口を開く。

「なによあなたまで」

「お互いの協力がなければ、上手くその・・・出来ないと言いますかその~」


サンは真っ赤な顔になり、胸の前で人差し指同士をちょんちょん。


「簡単にはズッポシ出来ないのよ、はっきり言って。脚閉じたり、お尻を突き出さなかったりすれば。ね?ドモン。ドモンってば女の子の日なのに無理に迫ってくる時があるから、そういう時はクルって反対向いて、脚閉じてピンと伸ばせばもう終わりよ。サンやシンシアもドモンにおあずけする時そうでしょ?」ナナの横やりが入る。

「確かにズッポシできない・・・」「あの・・・はい。でもお、おあずけって御主人様に・・・」「そうですわね。余程固く縛られでもしない限り」


ドモン達の反応に「ほらね」と何故かナナは得意気。

だが終身刑の女の反論はまだ続く。


「それこそ縛られたの!後ろ手に縛られて、脚も開かされるような格好にされたのよ!大変だったんだから。脚をしっかり抱えるように持てだのなんだのうるさくて。それも全部記者にバラしてやったわ」

「でもあなたもしっかりその要望に応えたんでしょ?ナイフで脅されでもしたの?」


多少ドモンに縛られたこともあるナナは不思議顔。嫌なら協力しなければいい話なのを知っていたからだ。

手を上げてだの首を下げてだのと大変だった。

抵抗している者を無理やり縛り上げるならば、相当な技術と力を持った者か、数人の屈強な男達が協力しなくては到底出来るはずもない。


「それは・・・あの人がそうしたいって言ったから。断れる雰囲気でもなかったし、そうしないと仕事が・・・」

「やっぱり甘い汁を吸おうとしてたんじゃない、結局」「こらナナ、言い過ぎだぞ」


「あいつがあんな変態だなんて思ってなかったの!だから恥をかかせる為に、あいつの性癖全部バラしてやったのよ!ハァハァ」

「他人の性癖みんなにバラすのはかなり性格悪いぞお前も・・・人間として最低以下だぞ」今度はドモンが苦虫を噛み潰したような顔に。

「うるさいわね!私も着替えるからもう出ていってちょうだい!」


城の中のドレスルームにて、各自購入した自慢の服に着替える女性陣。

サンは新調した可愛いメイド服だけれども、ナナとシンシアは伸縮性のある素材を利用した服を仕立てて貰っていた。


ナナはピタピタのチューブトップのへそ出しスタイルで、下はフレアのミニスカート。

シンシアは白のレオタードの上から、透けたレースのワンピースドレスを重ねて着る、上品且つセクシーなもの。バレエスタイルとでも言うべきか?


「お待たせしました。さあ行きましょう」

「うおっ!あ、あぁ行こうか」


思わず動揺を隠しきれなかったドモン。

最後に部屋から出てきた終身刑の女は、ススキノのキャバクラ嬢のような胸元も露わな超ミニスカワンピース。それはまさしく夜の蝶。

キャバクラに行ったことがある人なら分かる、ハンカチを腿の上に置かなければ絶対に下着が丸見えになってしまう例のアレ。

最初に会った時の怯え恥ずかしがっていた姿はすでになく、自分がナンバーワンなんだという自信に満ち溢れた顔をしていた。


「あなた達と話していたら、なんだかもう良い子でいるのもバカバカしくなってきた。こうなったら女の魅力を最大の武器にして、存分に振るってやるわよ。そして私に惚れた瞬間、振ってやる!女の恐ろしさを見せてやるんだから!」


そう言って自動車の乗り込んだ終身刑の女の顔は、なにか憑き物が落ちたような清々しい顔をしていた。




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