第723話
「幼児用水着ってあんた・・・私にも着せたあれみたいな水着じゃないでしょうね?はっきり言ってあんなの水着でもなんでもないからね?何もかもはみ出て・・・」とケーコ。
「ち、違うってば。それにサンはお前より小さいし、多分あんなにはみ出ないだろ・・・きっと。多分」
「競泳水着ったって、どうせネットかなんかで売ってるような『なんちゃって競泳水着』でしょ?あんなの裸と変わらないんだからね。マイクロビキニが一番マトモってどうなってんのよ、あんたの倫理観」
「それはまあ本物のではないけど、でも裸よりはマシというか・・・確かに商品画像は、大事な部分がハートマークになってたやつけども。水に入ったらもっと透けるってだけでそこまでは」
「呆れた。透けてるのがもっと透けるってことでしょうよそれ。で、私の水着は?」
「お前も行く気なのかよ」
ケーコは胸のサイズがサンと似ているため、サンと同室になり一緒に水着の試着。
ナナとシンシアは向こうで買ってきた水着をあれこれ試着しては、ドモンに脱がされていた。
そもそもナナの体型では、ビキニタイプの水着は全てマイクロビキニ扱いになってしまうし、ワンピース型はプロレスの時のように胸の間とお尻の間に生地が挟まって、一本の紐になってしまうだけ。
結局ナナは自分で選んで買ったビキニに、ドモンのTシャツを上から着ることに。
シンシアは何故か紐のようなマイクロビキニが気に入り、海水浴に行く日を楽しみにしていた。
それから数日後。
ドモンが中立国であるドワーフ王国に入国したことを知ったドモンの命を狙う軍勢は、流石に手出しすることは出来ずに立ち往生。
各部隊、各パーティーは、一度撤退を余儀なくされた。
身の安全が確保されたことにより、ドモンらもようやく街の散策へ。
食べる物はいまいちだったが、武器や防具は当然のこと、珍しい服や超一流の革製品の専門店などがズラリ。
中でも道具屋は一昔前の秋葉原のようで、ドモンはひとりで大興奮。
道具屋の方も、ドモンが持つ向こうの世界の機械やギドが作った道具で大騒ぎ。
女性陣が今度行われる貴族とのパーティーで着る衣装を吟味している間、工場のある道具屋であれこれ話を続けていた。
「そのモーターってのの仕組みがよくわからねぇなぁ。どうやって軸を回してるんだ」「ギドって奴は聞いたことあるぞ」と職人達。
「車を分解して見せるわけにもいかないしな・・・あ、これにも一応モーターは使われてるけど。でもこれは振動を与えるものなんだよな」
ポケットからドモンが出したのは、一番小型のマッサージ機。
「振動与えるだけ?そんなもん何に使うんだい。全く男共ときたら相変わらずわけのわからない道具を。ほらさエールだよ。冷たいうちに飲みな」少し恰幅の良い道具屋の奥さんが、みんなの分のエールを持ってやってきた。
「おう悪いね。だったらほら、お礼に奥さんにこの道具使わせてやるよ。使い方はゴニョゴニョ・・・」奥さんとその旦那にそっと耳打ち。
「な?!」「バ、バカ言ってんじゃないよ!もう!」
「いいからいいから。裏でちょっと試してみろって」
ドモンから借りた物を持って夫婦が隣の部屋に行き、一分ほどして旦那だけが戻ってきた。
その顔は真っ赤。
「凄いなこれは。魔法のようだった。俺達もこんな物を作れるようにならねぇとな。うん、必ず作って見せるぜ」赤い顔で道具をドモンに返した店の主人。
「何があったんだよ、おいお前」「なんだかお前の嫁の妙な声が聞こえたような気が・・・いや気のせいか」
エールを飲みながら待っていた職人達は不思議顔。
更に三分ほど経って、奥さんがまたエールを持って出てきた。店の主人よりも赤い顔をして。
「なんてものをあたしに覚えさせんだい!女があんなになるってことは噂に聞いたこともあったけどさ、まさかこの歳になって初めて経験するだなんて・・・これからあたしゃどうすりゃいいんだい、このバカ!」エールのおかわりを作業台に置くなり、ドモンの頭を引っ叩いた奥さん。
「あイテ!悪い悪い!とにかくモーターはこうやって回転させるだけじゃなく、振動を起こすことも出来るから、これを大きくすれば硬い岩盤なんかも崩せたりするし、色々便利なんだよ」
そうドモンが言うと、職人達全員がハッとした顔をした。
モノ作り王国であるこの国のドワーフ達にとって、鉱石掘りは無くてはならないものである。
その際硬い岩盤にぶち当たることもしばしばあり、そうなればもう諦めるしかなかったのだ。
鉱石が魔石と同じように高価なのはその理由。
それがドモンのお陰で解決するかもしれないのだと理解したのだった。
ドモンはモーターの仕組みを皆に教えた。
ほぼギドからの受け売りな上に、なんともちゃらんぽらんな説明だったけれど、モノ作りの天才集団であるドワーフはすぐにその仕組みを把握。
「こうしちゃいられねぇ!すぐに俺も工場に戻らねぇと!」「ワシも帰るとしよう」「ご馳走になったな!じゃ!」「そのギドって職人に会いに行ってみるかの」
この店の主人であるドワーフとその奥さんとドモンを残し、遊びに来ていた職人達は一斉に立ち上がり、急ぎ足で帰っていく。
店を閉めた奥さんが旦那の横に腰掛け、旦那が残していたエールを飲み干した。
「慌ただしいなぁあいつら。そんな慌てることでもないだろうに」ドモンもエールを飲み干す。
「そりゃドモンさんあんた、職人なら血が騒いで仕方ねぇさ。それに上手くいきゃ自分だけじゃなく、国にも莫大な利益をもたらすだろうしな。にしても異世界人ってのはスゲェんだなぁ、噂にゃ聞いていたが。他にもたくさんあるんだろ?聞かせてくれないか?」
ドワーフの主人は前のめり。
「他にもって、そんなホイホイ出てくるもんじゃないよ。異世界人ってだけで、他には何にもないんだから。ドワーフ王国のためになるものねぇ・・・」
「そ、そんなんじゃなくってさ、ほら。まだあるんじゃないの?ねぇあんた・・・さっきのみたいなさぁ。大事なものは他の職人に任せたっていいんだから、あたしらはそのさ・・・ねぇあんた」奥さんの横槍。
「あ?あ、あぁそうだなハハハ。フゥフゥ・・・で、どうなんだい?」旦那も真っ赤な顔。
更にもう一杯冷たいエールを貰ったドモンは、皮で出来た特殊な衣装や拘束具、様々なムチや軽い拷問器具、その他諸々の『大人が夜に楽しめる』道具や衣装の存在を詳しく教えることになった。
早速試作品の革製品を完成させたドモン達。そこへナナ達が買い物を終えやってきた。
「お待たせ~・・・ってドモン!!あんた何やってんのよ!!ちょっと奥さん大丈夫?!」とナナ。
ドモンがこの夫婦相手に何をやっていたのかは絶対に詳しくは説明出来ないが、この世界に初めて大人のための玩具屋が誕生し、世界中から愛好家が集まったことにより、とてつもない金額の財を成すこととなった。
それと同時に、やはりそれを狙う者達の標的にもなってしまったのだった。
クールワン咳止め薬すごいぜ・・・
完治はしていないけど、久々に数時間寝られるようになった。