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第717話

ドモン達が囚人二人を自動車に乗せ門をくぐり街に入ると、何人かの本物の門番と、たくさんの野次馬がやってきた。

シンシアが助手席から門番とやり取りしていると、沿道にズラズラとドワーフ達が立ち並んでいて、まるでマラソンの応援のよう。


「もう行って宜しいそうですよ。このまま王宮の方まで直接いらして欲しいと」面倒な交渉をさらっと済ませたシンシアは流石の一言。

「うん、それはありがたいけどさ、俺等のこと怖がってた割に、なんでこんなに人集まってんだ?じわじわ寄ってきて、運転しづらいったらありゃしないよ」


片側三車線ほどの大通りだが、沿道のドワーフ達がジリジリにじり寄り、気がつけば片側一車線くらいの道幅に。

左右がガードレールならそれでも問題ないが、それが人となれば話は別。ぶつからないように進むのにノロノロ運転で行くしかない。


「なんか面白そうな店あるのになぁ・・・寄り道できなさそうだ」

「見てドモン!あの皮で出来た鎧?服?あんなのここでしか買えないよきっと!寄っていきましょうよ!」


ナナは大興奮。

運転しながらちらりと見た沿道の店には、武器や防具、そしてドワーフ自慢の機械類だけではなく、今囚人達が着ているような伸縮性のありそうな服や立派な革製品まで、職人達が腕によりをかけて作った品が並んでいる。

特にナナが指を差した革製品は、ここで買って元の世界で売ればあっという間に億万長者になれそうな超高級革ジャンやバッグ、シルバーや革で作られた小物などが店頭に並んでいて、ドモンも今すぐ車を飛び降りたい気分。


「寄っていきたいけど、人が集まってきて行けないよ。そんなに物珍しいかね?こんなおじさん魔王が。ハァ」ため息ひとつ吐いたドモン。小雨が窓に当たり、ワイパーを一度動かした。

「すげぇ!」「人力か?あの動きはそうに思えないけど」「あの照明どうなってるのよ・・・」「私聞いてくるかな?」「よせってバカ」


それに対してドワーフ達は大騒ぎ。

主に女性達が自動車のボディーに触れるくらいの所までやって来て、ついには身動きが取れなくなった。


「どうしたもんかなこれ。女達が寄ってきちゃったぞ。もしかして俺ってドワーフ好みの顔してるのかな?」

「でも先生ヒゲないし、腕もヒョロヒョロでお腹もポッコリだからそんなことないよ?」とボニー。


「おい身も蓋もねぇな!じゃあなんで女の方が近寄ってくるんだよ」

「こういう場合、案外女の方が覚悟が決まってるからと言いますか、開き直れちゃうと言いますか・・・煮るなり焼くなり好きにして!と思えたら、もう怖いものもないですから」と終身刑の女。


プップーとギドに付けてもらっていたクラクションを初めて鳴らすと、確かに男達だけが後ずさり。

それでもそこをどかない女達に窓を開けて「危ないからどいてくれ!」とドモンが声を掛けると、反対にワッと窓際に女達が集まってきて、ちょっとだけドモンは良い気分。


「魔王さん!魔石を動力にして動いてるってのは本当かい?!答えとくれ!」

「一回ちびっちまえばもう関係ないや!なあ足回りを旦那に見せてやってよ!新型馬車のサスペンションってのは見たけど、この馬のいらない新型馬車は別もんだって聞いたよ!悪魔なんだって?なら少しくらいあたしの魂持っていっていいからさ!」「バカお前!滅多なこと言うなってば!」

「一度でいいから乗せてよ!」「そこのドワーフふたりはなんなの?どうして乗せてもらえたのよ」「ずるい!」

「うちの人は王宮にも出入りしたこともある一流整備士なんだ。ぜひ紹介させておくれよ!」

「うちの工場で車輪の交換していきません?私暑がりだからすぐに服を脱いじゃうかも?」「何よこの小娘!色目使っちゃって!」


会話を聞く限り、言い寄られてるのともまた違う。

その会話は、ドワーフ王国がモノ作り王国と呼ばれているのも納得の内容だ。


男の職人達が尻込みする中、女達が色目を使いながら、なんとかその技術に触れようと必死に。

自動車に乗っている囚人ふたりは、フロントガラス越しにその様子を見て鼻高々。


「そりゃ魔王だろうが悪魔だろうが、これを見れば女なら寄ってくるでしょうね」とボニーは得意気にヤレヤレのポーズ。

「ドワーフで最初に乗ったのって私達ってことになりますよね?ね?あ、でも先に乗ったのって私でしたっけ?じゃあ私が一番かぁ!嬉しい!」と終身刑の女。

「ほぼ横に並んでたし、私が先に足を入れたような気がするけど・・・」

「先に手で触れたのは私ですから!ね?ドモンさんそうですよね?!」


ボディコン姿のまま、運転中のドモンの真後ろから腕を絡ませた囚人ふたり。

全く被害者が現れなかったことにより、ドモンに危険がないことはこのふたりだけではなく、この場にいたドワーフ達にも知れ渡った。


結果的にドモンとドモンが持つ知識は、ドワーフ達に大歓迎で迎えられることになった。




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