第714話
結界にパシュンと魔法が当たる音や、カシャンと矢か何かが当たる音を聞きながら、聞き取り調査の開始。
この様子であれば、本当に口封じをしようとしていたのかもしれないと囚人達も青褪めた。
それと同時にドモンへの恐怖心は綺麗サッパリ無くなり、この身の全てを捧げてもいい決心もついた。
「ふぅん・・・やっぱり囚人で、俺と対峙して反応を見つつ、もし運良く生き残ったら自由の身ってとこだったのか」
「えぇ」「はい・・・」
「それにしたって死刑と終身刑って・・・お前ら何やったんだ?」
「私は・・・とある貴族の方と一晩お付き合いすれば仕事で良い役職に就かせるからと迫られて、半ば強引に・・・そうしたらそれが世間に知られることになり、貴族を誑かせた罪に問われてしまったんです。いくら理由を話しても権力のない私の方が一方的に・・・ウゥゥ」
内気に見えた終身刑の女性の方から話し始めたが、これまで余程我慢をしていたのか、死刑囚の方もびっくりするくらい饒舌に語り始めた。
ドモンならばなんとかしてくれる気がしたのだろう。
「貴族相手とかだと、罪に問われた時結構重くなるんだな。で、その貴族の方はどうなったの?」
「はい。口封じに私の家族にいくらか支払い、今ものうのうと貴族を続けています。私それが許せなくて!」
つまりは枕営業のようなもの。
昔から組織ぐるみで、綺麗な女性が就職しては貴族達に紹介して懇親会を開くのが習わしで、その中で気に入られた者が重要な役職に就けると噂があった。
それが今回明るみに出たことで、世間は大騒ぎになったとのこと。
「しかしまあ、今までバレてなかったものが、どうして急に騒ぎになったんだ?」
「それは・・・私が新聞記者につい・・・でも私悔しくて!私みたいな女の子が一人でも減ればと!」
「嘘つけよ。上っ面だけ良い子ぶりやがって。金と地位を身体で得ようと思ったら上手く行かなくて、悔しいから痛い目に遭わせてやろうとバラしただけだろお前。嫌なら最初から行かなきゃいい話だし、いくらでも断れるだろうに」
「え・・?」
ドモンの予想外の反応に驚きを隠せない終身刑の女性。
なんとなくその雰囲気で、ドモンならば同情してくれると思っていた。
「あんたね、ちょっと図々しすぎるんじゃない?そんなんで良い役職貰えるってんなら、今頃私は女王にでもなってるわよ。ま、そんなので抱けるほど私は安くないけど」全力のヤレヤレのポーズをかますナナ。
「そんなもの、ワタクシの世界ではいくらでもある話でしてよ?どうにもならないお付き合いをしなければならないことも多々ありますが、一線を越えるか超えぬかは自らの判断。それとも武器や暴力で脅されて強姦されたのですか?それならば話は変わりますわ」冷静なシンシア。
「そこまでは・・・ですが無理やり御酌させられたり、お酒も飲まされたりもしましたし・・・女性として屈辱的な・・・」
「それ私の店の普段の仕事じゃないのよ。しかもお酒まで奢ってもらえるってただの上客よ?お母さんなら喜んでそのお客の腕に絡みついて、おっぱい押し付けながらお酒飲んでるわ。あとうちの女性客も男達と飲み会するの大好きだし」ナナはそう言ったが、正直最近のエリーはそれよりもっとやり過ぎな時もある。
「そ、そんなのと私を一緒にしないでください!!」激昂した終身刑の女。
「なんですって?!そんなのとは何よそんなのとは!お高く止まって!!キィー!」
今にも取っ組み合いになりそうな終身刑の女とナナを引き離す勇者パーティー。
ただ女性の話を聞けば聞くほど、どう考えてもただの飲み会であり、いわゆる合コンとしかドモンは思えない。
合コンなんて、あわよくばズッポシしたい男と、あわよくばイイ男と知り合いたいか玉の輿になりたい女の遊びの場。
ダメなら縁がなかったと解散して、あとでその話を酒の肴にするだけのものだ。
世間では権力者相手に鬱憤を晴らしたい庶民が今、声を荒げて女の味方をしているらしい。
話を聞いているだけでドモンはうんざり。
「くっだらねぇ・・・元の世界なら今頃、自分のことを棚に上げた頭の悪い偽善者が、SNSで正義の味方のフリしながらイイネを稼いでそうだな。お前関係ねぇだろって奴らが、嘘と憶測と文句投稿してはの繰り返しだ。どうもこっちの世界も変わらなそうだけども」
どう考えてもどっちも悪い。いや、はっきり言ってしまえば、双方悪くもなんともないとも言える。
つまりは心の底からどうでもいい話。
「俺が間に入ってやるから、その貴族と和解でもするんだな。飲み会セッティングしてやるから、この格好で参加しろ」
「い、いやです!しかもこんな格好だなんて!」
「うるせぇ!俺の飲み会は全員強制参加だボケカス!文句があるならお前をベロベロに酔っ払わせて、一晩中そのスケベなポッチを弄り倒すからな。覚悟しておけイヒヒ。あとナナとサンとシンシアも同じのを着るように」
「なんで私が!」「サンもですか?!」「宜しくてよ。ドモン様がそうおっしゃられるのならば」
「その貴族を悩殺して骨抜きにしてしまえば話が早いからさ、どうにか頼むよ。ナナは胸の谷間に酒注いで・・・」
何故かボディコンを着て飲み会に参加することになった女性陣。
いかに男を誑かせるか?を、幼少の頃から学んできたシンシアは案外乗り気。
終身刑の女は今、自身が参加させられていた酒の席が、どれだけ生ぬるいものだったのかを知った。