第713話
「お前達が門番なの?ってかよく見たらボディコンかよ」と車から降りて話しかけたドモン。
タオル一枚巻き付けているのかと思ったが、実はチューブトップのワンピース。ドモン世代の人からすればボディコンといえば一発でわかるだろう。
何のためにそんな格好で立っていたのか?何のためにこんな弱そうな女性二人に門番をさせているのか?
ただそれを考えるよりも、この世界に来て初めてきちんと伸縮する素材で出来た布を見て、その技術力にドモンは感嘆した。
ホビットも器用だったが、やはりドワーフの技術力は桁外れ。頭一つ抜きん出た印象。
「そ、そうよ!私達がこのドワーフ王国の門番よ!」「はひぃ!」死刑囚の後ろに終身刑の女が隠れた。
「そうかそうか・・・って、そんなわけ無いだろうよ。武器は持ってませんよみたいな格好で、女ふたりが門番って。その尖った先っぽをポチッと押されて『ピンポ~ン!お邪魔しまーす』で全員門を通過しちまうっての。連打してやろうか?ツンツンポチポチと」
「きゃああ!」「見ないでよ!好きで着てるわけじゃないんだから!」胸を隠しながらしゃがみ込む囚人達。
「やっぱり。誰かに強制されたんだな?ってことはこりゃ罠だ。大方俺が手出しした瞬間に捕まえて追い出すつもりってとこか。チッ!ケーコめ・・・あいつを信じた俺がバカだった。あいつのことだから話が盛り上がって、俺についてのスケベな話しかしてないんじゃないか?」
「え・・・怖い」「どうしてそこまで・・・」
格好や態度、話しぶりから推察し、次々と事実を言い当てていくドモンに恐怖する囚人達。そして勇者達。
「ドモンはギャンブラーだからわかるのよ」とナナは得意気。
「何やったんだ?お前らは。そこまで怯えるって、金で雇われたって雰囲気じゃないだろ。脅されてるのか?それとも弱みでも」ドモンはタバコに火をつけた。
「脅されてなんかいない!私自ら立候補したのよ!」と死刑囚。
「立候補した割には、そんな服を着て恥ずかしがってるっておかしいだろうに。何かと引き換えに立候補したってとこか。自由の身か?家族かそれとも・・・お前達自身」
「ねぇ怖い!悪魔に心を読まれているのよ!もう終わりだわ!」
しゃがみこんだままの終身刑の女の下にある石畳の道の灰色の石が、ジワジワと黒色に染まってゆく。
しかし警戒しているのはドモンの方。
ドモンにはどう考えても、手を出した瞬間に大量の攻撃魔法が飛んでくるようにしか思えなかったからだ。
「そうよ・・・私達は囚人で、自由の身と引き換えに・・・」素性や理由等は言うなとは言われていたが、諦めて話し始めた死刑囚の女。
「シッ!ちょっと待て。ソフィア結界!アーサー何人いる?」タバコの煙を吐き出しながら、ドモンが叫んだ。
「任せて!」「隠れてるのは30人ってとこだけど、遠方からもドモンさん狙ってるみたいだね」
パッとソフィアが両手を広げて結界を張り、アーサーが気配を探る。ミレイと大魔法使いは、サンとシンシアを囲むようにその前と後ろへ。
アーサーの危機察知能力はさすがは勇者というもので、そのおかげでパーティーは何度も全滅を免れてきたのだ。
それ故にドモンに出会った頃、仕掛けることになったのだけれども。
突然結界に包まれて、思わず抱き合いながらキョロキョロと辺りを見回した囚人達。
そんなふたりの目の前に、ナナと一緒に座るドモン。
「悪い悪い。ほらこういうのって大抵、秘密を話し始めた瞬間口封じされたりするからさ。ソフィア今もう大丈夫なんだよね?」
「そこらの攻撃ではびくともしないはずよ。オーガやトロールほどの力がなければ吹き飛ばされないわ」
魔王の城に向かう途中の休憩中、試しにトロールに結界を殴らせてみたところ、十数発の全力のパンチで結界は砕けた。
つまり複数人のトロールに襲われれば、ほんの数秒で結界は突破されるということ。
反対にトロールの一発のパンチは、大魔法使いが一日に一度使えるかどうかの極大魔法に匹敵するほどなので、大魔法使いと同じレベルの魔法使いが十数人いなければ結界は突破されないということ。
ちなみに極大魔法は以前冗談でドモンの頭に隕石を落とそうとしたもので、地表到達時に約直径5メートルほどの隕石落下と同等の衝撃。
超高層ビルが丸ごとひとつ消し飛ぶほどの威力である。
「さて話を聞こうか。まずはお前らは何者なんだ?イチチチ!うわぁやめろナナ!!!」
「・・・・」「・・・・」
優しい笑顔で語りかけたドモンだったが、ずり上がったボディコンからはみ出た下着を眺めニヤニヤしていただけであった。
当然すぐにナナにそれがバレ、千切れんばかりにドモンの耳を引っ張りながら馬乗りに。
囚人達はキョトンとした顔でお互いに見つめ合った。