第710話
アルラウネのいる場所まで戻ってきた一行は、ここでしばしの休憩。
やはり長時間同じ姿勢でいるのはかなりきつい。
加えてトロール達も急ぎ足で籠を運んでいたため、かなり籠も揺れて体力を消耗してしまったのだ。
なにせナナが着替えも出来ず、裸でひっくり返るほど揺れていたのだから。
「いやぁステータスオープンどころか、ナナの全てをオープンしちゃったな」とタバコに火をつけたドモン。流石に揺れる籠の中ではタバコは吸えなかった。
「ドモンが勝手にオープンしちゃったんでしょうが!他のことは何にもオープン出来ないくせに!あ・・・」ナナはすぐに失言に気がついた。
「・・・・」
「な、なーんちゃって。もしかしたら私がオープンしちゃったのも、ドモンの能力だったりしてエヘヘ。もう一度試してみたらどうかしら?わ、私にオープン!ってしてみてよ」
落ち込んだドモンを励ますために、もうナナは何だってする覚悟。
トロール達にはもう全てを見られたし、アルラウネ達にはもっと恥ずかしい姿を見せている。勇者達も今更だ。
さあ来るなら来いと、先程また着たばかりの白いガウンに手をかけたナナ。そのやり取りを見ていたシンシアはヤレヤレのポーズ。
「別にナナをオープンしたいわけじゃないんだよな。ステータス画面をオープンしたかっただけで。でもまあ一応試してみるか・・・シンシアで」
「ワタクシ?!え?ワタクシですの?!?」
シンシアは城を出た時から着替えもせず、白いガウンのまま。サンはどうやったのか、きちんとメイド服に着替えている。
ギョッとしたナナがシンシアに向けて、猛烈に目配せで合図を送った。
「シンシアオープン」
「え?ちょ・・・あ、あれぇ~手が勝手に動いてしまいますの!は、恥ずかしいですわ!」露出狂のようにガバっとガウンを開いてみせたシンシア。
「脚を開いてお股もオープン!ついでにステータスもオープン!」
「えぇ?!」「あ、こ、今度はサンが勝手に動いてしまいますぅ!見ないでぇ~」
シンシアを庇うように、せっせと自分の下着を下ろし始めるサン。
ドモンも当然こんな能力があるとは思っておらず、どこまで茶番に付き合ってくれるのか見ながら誂っていただけだ。
今のナナやサンだと本当にやってしまいかねないと思いシンシアに向けて言ったのだが、冷静に「そんな事するはずありませんわ」と返ってくるかと思いきや、まさかの意外な行動に。
なので必ず断るであろう更に無茶な注文をしたのだが、サンが代わりにやろうとしてしまい、ドモンも大慌てで待ったをかけた。
「サン待て!ストップ!わかったわかった!俺には能力があったんだな。もういいよ」
「そうよ、ドモンはすごいのよ」ウンウンと頷くナナの横で「サンもやりますぅ!また奥様とシンシア様だけ!着替えなければ良かったウゥ~・・・」となぜか嘆くサン。
「裸体を見られるのは平気ですが、痴態を自ら見せるというのはなかなかにこれは・・・ナナの気持ちが少し理解できましたの」
「私は自ら痴態を見せようとはしてないから!体が勝手に痴態をばら撒いてんの!でもお母さんよりマシ!」
やいのやいのとナナとシンシアが言い合う中、ドモンの目の白目の部分にまた文字が浮かび上がる。
ドモンのステータスはしっかりと表示されていたのだ。
だが、ドモンが鏡を見るまでそれに気がつくことはない。
小休憩のあと、また直ぐに出発。行きの時ほどゆっくり寛ぐ時間はない。
ドモン討伐隊の先発組は、すでにドワーフが建てた日本家屋の家まで到着したとの報告があった。
このままの調子であれば、ドモン脱出前に洞窟入口まで到着してしまうので、ここは更に妨害工作。
今度はドモンの指示で、最後に休憩した城に酒や食料を大量に置くことになった。
先発組を買って出るような連中は、倒木などの障害などあっさりと越える能力を持っているはず。足止めにもならない。
であれば、人間の欲につけ込むしかない。
どんなに急いでいても、一分一秒を争う時やたとえ親の死に目であったとしても、目の前に札束やお宝が落ちていれば足を止めるのが人間。
そして恐らく先発組は組織立って動く騎士などではなく、冒険者であるのが有力。
ならば食料の大切さを考え、きっとその足は止まるはずとドモンは予想した。
その目論見が見事にハマり、ドモン達はなんとか討伐隊到着前に脱出することに成功したのだった。