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第701話

「ドモン様これうめすなぁ!」「おらドモン様の家来になるべな」「バカこくでね!おめさがなれるわけねぇべよ!」大騒ぎのトロールの子供達。

「ドモン様ぁ、羊肉十頭分持ってきただよ。これで間に合うべか?」「野菜とリンゴさ、ここ置いとくだ」

「あんたこれ洗ってきたのけ?」「リンゴの皮さ剥いて全部すり下ろせばいいのけ?」


トロールの親達も恩返しだと、ここぞとばかりに張り切って働いている。


城の前の大きな広場にて、魔王と近衛兵を除くほぼ全員がジンギスカンパーティー。

ちなみに勇者パーティーが魔王と対したのはこの場である。



夜6時過ぎに部屋で窓を開けてジンギスカンをやっていたところ、モクモクとしたイイ匂いの煙が外に広がり、まずは隣の部屋の勇者パーティーが、次に報告を受けた白雪が部屋に飛び込んできた。


「んっがぁ!食べても食べてもお腹空くぅ~!サン、ご飯のおかわり頂戴!あとエールも」「ワタクシもお願い」「はいっ!」ほっぺたに米粒を一粒付けたサンが、ナナとシンシアのお椀に炊き立ての米を盛り付ける。

「あらら、やっぱりバレちゃったか。まあみんな味見する分くらいなら用意できるから、少し食べていけよ」


おかわりのエールを入れながら、ドアの方を見たドモン。

だがそんなドモンの声も聞こえているのか聞こえていないのか、白雪とお付きのゴブリン侍女ふたり、そしてアーサー達は目を丸くしてドアの前の廊下で立ち尽くしていた。



冷蔵庫にあった調味料と食材でドモンがまず作ったのは、ジンギスカンのタレ。

リンゴや玉ねぎや生姜やニンニクをすりおろし、煮立たせた醤油と果実酢と酒と蜂蜜の中へたっぷり投入。

そのまま冷ますだけで、ドモン家特製のジンギスカンのタレの出来上がり。

濃いめのタレなので、食べる寸前にすり下ろしたリンゴを更に追加するのもポイント。


このタレに漬けて焼いたジンギスカンのニオイが、とてつもなく食欲のそそる匂いを放ってしまったのだ。

散々食べてきた道民のドモンですら、焼いている最中に「やべぇなこれ」と困惑して窓を開けたほど。ひと切れつまんではエール一杯一気飲み。

最高級レベルの調味料と食材を、惜しむことなく使用したおかげだろう。


底が少しデコボコの石の鍋は、肉の余分な脂と滲み出たタレがその隙間に落ち、かぼちゃや玉ねぎやもやしが、その脂とタレを吸い上げる。

反対に野菜から出た水蒸気がラム肉を柔らかく美味しく、焼きながら蒸し上げる。美味さの永久機関。至高のギブアンドテイク。


「そ、そんなつもりじゃ・・・私・・・」今食べれば、まず間違いなく止まらない。白雪の直感。

「白雪様、本日は魔王様とご一緒にお食事の予定が」「やだもうお腹が!ごめんなさい!勝手にお腹が鳴ってしまって!」生まれてこの方、こんなにもお腹が鳴ったことはない侍女。

「俺達は悪いけどいただくよ。この匂いに耐えられる自信がないし」「食べなきゃ寝られそうにないもんね」アーサーに同意するソフィア。


「いいからいいから!食べてごらんって」タレの入った器に焼いたラム肉を三枚入れて立ち上がり、侍女ふたり、そして白雪の口にいきなり突っ込む失礼なナナ。

「ちょ、ナナさ・・・え?!!!!!!!」「!!!!!!!!!」「!!!!!!!!!」


突き抜ける衝撃。味覚の常識の崩壊。口福革命。

道外から来た人が北海道の新千歳空港内にある、数年連続で全国ソフトクリームランキング一位に輝く店でソフトクリームを食べて、あまりの美味しさにショックを受けるのと似ている。


全くの別物。今まで食べていたものは何だったんだと、口と脳がパニック状態になるのだ。


もう戻れない。戻りたくない。

各所でドモンが引き起こしたその現象を、ここでも起こした。


「ドモン様~、アタイこんなんじゃ足りないよ」肉を焼くスピードよりも、ミレイの食べる速さの方が上。

「ワシもこの歳になって肉をこんなにも食べられるなんて思わなんだ。もっと肉を焼いてくれぃ」と大魔法使い。


「あ!ナナさん!それ私が手塩をかけて育てていたお肉!」

「へっへ~ん、早い者勝ち~!ングッ」

「返して私のお肉!返してちょうだい!あぁあなた達まで私の育てていたかぼちゃを!」

「申し訳ございません」「焦げちゃうかなーって思ってエヘヘ」


しっかり焼きたい派の白雪は、悲しき奪われし者。

白雪はナナだけじゃなく侍女達にまで裏切られ、失意のどん底の中、焦げて石鍋と同化しそうな真っ黒なもやしをタレに漬けて食べていた。

それもまた美味しく、米に合うのが嬉しいやら悔しいやら。


「ちょっと味見したら帰ると思ったのに・・・もう肉を切る握力もねぇし、そもそも石鍋ひとつじゃ限界ってもんだ」

「お店の忙しい時よりも大変ですね、御主人様」「何度ここを往復させる気なんですの?」


ひたすら肉を切るドモンと、ひたすら野菜を切るお手伝いのサン。

ようやくお腹が膨れたシンシアが、生まれて初めての給仕係。



気がつけば窓の外には匂いにつられたのかたくさんの魔物達が集まっており、白雪の叫び声に聞き耳を立てながら、ガヤガヤと騒いでいた。

近衛兵の帰れ帰れの声もただ虚しく響くだけで、魔物達は増える一方。


「わかった!ねぇドモンさん、お外で皆さんに振る舞いましょうよ!先程のトロール達にお詫びの意味も込めて。それならお城のお鍋も使えますし」騒ぎを窓から覗いて、ポンと手を叩きながらそう言った白雪。

「あの人数に振る舞える肉はないだろ。それにタレも足りないし肉を切るのだって・・・」

「これらの食材ならいくらでも調達できるはずですよ。それにきっと皆さんもお手伝いしてくれるはずですから。ね?」

「どうしてこんなことに。てか白雪さんが食べたいだけなんじゃ」


困惑のドモン。

ナナへのお詫びの意味も込めて、ひょっこり見つけた羊肉で軽くジンギスカンパーティーをしようと思っていただけなのに、とんでもない大事になってしまった。


結局お詫びをしようとしていた相手のトロール達が張り切りに張り切って、ドモンは指示をするだけで済んだ。

そしてしっかりと魔物達の胃袋と心をつかみ、ドモンは本当の意味で魔物達に受け入れられた。


それはまるで魔物の王、魔王のようだった。




更にHDDを買ってきて壊れかけのHDDをクローンして、ほぼほぼ復旧完了。


しかしHDDを買いに行った際、ケーコが中古のタブレット型のノートPCをつられて購入し、「古いやつから引っ越ししておいてよ」と。

ほぼタブレットのようなものなのでSSDの換装などは出来ず、様々なソフトを駆使して引越し作業をするも失敗。


結局1から全て手作業で引越し作業したものの、今は何かとセキュリティーがうるさくて、アカウントがどうの、パスワードがどうの、ワンタイムパスワードで本人確認がどうの、大文字小文字英数字記号を組み合わせてがどうの、それを山程繰り返す内に何がなんだか分からなくなり一睡もしないまま2日が経過。ようやく昨日終わってPCを引き渡した次第。

「やったーサクサク動くありがとね~」という勿体無き御言葉を頂戴した。遊び人の仕事って結構ハード。


バックアップ大切。これに尽きる。


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