第698話
「んだばまた後で」「これかたして(片付けて)くるでな」「おめの娘こさ、あなとこでおっちゃんこして(座って)待っとるでな、はよ行かねば」
また籠を担いでスタコラと去っていくトロール達を見つめる一行。
その眼前には数千ほどの魔物達が左右に分かれ、ドモン達を待ち構えていた。
「違うとは信じたいですけど・・・」ギュッと杖を握りしめたソフィア。
「罠かもしれないな」続けたアーサーは、ゴクリと唾を飲み込む。
「もし襲われでもすれば・・・まあ十秒も持たんじゃろうなフォフォフォ」開き直りの大魔法使い。
「流石のアタイもチビッちまいそうだ」というミレイの言葉に大きく頷いたサン。ただしサンだけもう手遅れ。
手前には多くのゴブリンやオーク達、魔王の城に近づくにつれオーガやトロール、更には見たことがないような屈強な魔物が待ち構えている。
ゴブリン達は比較的フレンドリーで、拍手や歓声でドモン達をお出迎え。
「あれがドモン様かぁ」「思っていたよりずっと優しそうね!」
「ジルって娘はドモン様からご寵愛いただいたそうよ」「バ、バカお前、ジル様と呼べ!俺達とはもう立場が違うんだぞ!」
「俺ザック様と話したことがあるってゴブリンの、その友達だっていうゴブリンの知り合いと食事の時隣になったことあるんだ」「よくわからないけどすげぇな。ザック様は魔物の未来を切り開いた勇者だもんな!」
ドモンと、そして街で人間達と交流を行ったゴブリンのザックは、全ての魔物どころか魔王からも一目置かれる存在である。
ゴブリンロードやゴブリンキングとしての称号や力を魔王は授けようとしたが、ザックは丁重に断りアップルパイ屋を続けている。
ドモンと知り合いのザックとジルですらこの扱いなのだから、ドモン本人は更に別格。
直接話しかけるなんてことは以ての外で、遠くから手を振るのが精一杯。
そしてオークの場合は手を振ることもなく頭を垂れ、オーガは片膝をつき出迎えた。
今まで出会った魔物達と同じく、強い個体であればあるほどドモンの内面にあるものがよくわかり、気軽に接することが出来なくなるのだ。
「なんかもう端っこ歩きたいな・・・器じゃねぇよ俺なんか。こんなとこ歩くの恥ずかしい」ナナと腕を組んで歩くドモン。
「王様になったみたいでいいじゃない。そうすると私はお妃様ね!ホーッホッホッホ」
「王様というか、ヤクザの親分の襲名披露に呼ばれたちょっと偉い人みたいだよ」
「なにそれ???まあ偉いなら別にいいでしょ」
「良かないよ、まったく」
皆の態度で歓迎してくれているのは分かった。今のところは危険はなさそうで一安心。
そのまま200メートルほど歩を進めていると、先程トロールが言っていた娘らしきトロールと、その友人達がドモンの前に飛び出してきた。
魔物達は突然のことで、全員顔面蒼白。
「・・・ドモン様、これお花だ。貰ってけろ」
小学一年生くらいの背丈のトロールの女の子。
体の大きなトロールでも、子どものうちは人間と同じくらい小さいらしい。
「ナナ様!オラ達も花摘んできただ!あとこれ、めんずらしいカエルも」男の子の手から、大きなカエルがナナに向かってジャンプ。
「ヒィィィィ!!!ちょっとあんた!なんてもの持ってくるのよ!!」カエルと同じくらい後ろに飛んだナナ。
「サン様、シンシア様。これはオラ達が汲んできた体に良い湧き水だ」
「サン様は身重だど聞いたでな、ふたりで遠くまで汲みに・・・あら?あぶね」
水の入った小さな壺を運んできた女の子二人組みだったが、その内のひとりが躓き、サンの下半身辺りに水をぶち撒けてしまった。
「きゃあ冷たい!」よく冷やされた水に、サンは驚き尻もち。
「サン大丈夫?!あなた達私のサンになってことを!」大慌てでサンを抱き起こすシンシア。
「あわわわ・・・」「わ、わざとじゃねぇだ」
その場にへたり込むトロールの娘達。花を持ってきた女の子もカエルを持ってきた男の子も顔が真っ青。
「あぁドモン様たつに、おめらなんてことを!」慌てて飛び出した父親。
「許してけんろ!この子達ぁ皆いい子で・・・私の首さ差し出しますけぇ、どうかどうか子供らのお命だけは勘弁してくだせぇ!」「オラも同じだぁ!それでなんとかお怒りをお鎮めくだせぇ!」母親達も飛び出しドモンに土下座。
あれよあれよという間におかしなことになり、城の門番をしている鎧を着たオーガの近衛兵達が駆け寄ってきた。
周りの者に理由を聞くなりトロール達親子を横一列に正座させ、一斉に剣を抜いた。
HDDのアクセスランプが突然点きっぱなしに。
その後何もかもスローになっている。もちろん今も。
文字を打っても一文字ずつゆっくり表示される感じで、どうにもこうにもならず。再起動に一時間以上かかる。
2日かけてとりあえず小説を外付けドライブに退避。更新遅れて申し訳ない。
一応一旦報告まで。