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第697話

洞窟地下深くの空洞・・・と呼ぶにはあまりに広すぎる空間に、魔王の城はあった。

城の周りには真っ赤に染まった池や、鍾乳洞をひっくり返したような棘のある岩山、大きな炎がいくつも吹き出す岩盤やブクブクと音を立てて沸騰している泥の沼などがあった。


「これは・・・俺が想像していた通りの地獄ってやつだな。こんなところを進まないと城まで行けないのか。大変そうだ」籠から顔を出し、辺りの様子を見回すドモン。

「少しでも道を外れたら命の保証はない。恐ろしい場所だよ、何度来ても」アーサーが深刻そうな顔で籠の横を歩く。


「あぁ、それは心配ねぇだよ」「向こうから回れば橋が下ろしてあるがら、そこから行くだ」「今見えているのは、実は城の裏手だべな」

「な、なんだってー?!」


トロール達の説明に驚きの声を上げたアーサー。

そんなアーサーを無視し、トロール達は真っ赤に染まった池、俗に言う血の池にジャボジャボと足を踏み入れ、その真ん中を渡っていった。

池の深さは、足のくるぶしが隠れるか隠れないか程度。


「真ん中は浅くなってるんだべ」「他もさほど深くはないんだけんども」「底が見えねぇべから皆深いと勘違いするでなワハハ」

「でもこの色は血の色だろう?それとも毒があるとか」皮で出来た冒険用のブーツなので勇者達もついて歩く。


「これは血じゃねぇけんど、なして赤くなるのか、おで達も知らねぇんだべ」「しょっぱい水だからだんべかな?」

「ハアハア大体察しがついたぞ。俺の世界のアフリカのタンザニアって地域にも真っ赤な湖があるんだよ。確か菌かなんかが塩分に反応すると赤い色を出すって、前にユーチュ・・・情報を見たことがある。体には良くないから飲んじゃ駄目だぞ」とドモン。

「へぁ~やっぱすドモン様は博識でなぁ」

「そうよ!ドモンってホント凄いんだから!」いつものようにナナが代わりに鼻高々。


いつも仕事に行く前のケーコに「あんたは家でゴロゴロしてなさいよ!遊びに行ったらどうせ怪我して帰ってくるか、浮気してくるんだから!」と言われて、仕方なく動画サイトを漁る毎日だった。ドモンの知識の半分はこういったところから。

それでも浮気して怪我をしてくるから、ついには追い出された。時折会ってはいたが。


血の池を渡ると山のように大きな岩があり、トロールがそれを横にずらすと真っ黒な岩盤が現れた。

その壁を松明で灯すと、目の前に真っ暗なトンネルがあることにドモン達もようやく気がついた。


「ここを抜けていくのか・・・こんなの気が付かないよ」とアーサー。

「気がついたところで、ミレイでもあの岩をどかすことは出来ないでしょうね」横に首を振ったソフィア。


ドモンは籠の中で呑気に「あー!」と叫んでトンネル内の反響を楽しんだり、暗いのを良いことにナナにいたずらしたり。

暗いトンネル内にナナの「ちょっとやめなさいこら!あぁんもう駄目だってば」というような声が響き渡る。


そんなナナの息遣いが徐々に荒くなってきた頃、ようやく一行はトンネルを抜けた。

トロール達が前かがみにさえなってなければ10分もあれば抜けられたところ、結局20分かかった。


トンネルの先には城側から下ろされた跳ね橋がかかっていて、その先には立派な石畳の道、更にその向こう側には城から直接下ろされている跳ね橋がもうひとつある。

当然跳ね橋は侵入者対策だけれども、この日ばかりは橋から城門から全開。


「ドモン様、すまねぇけんど、ここからはご自身の足で城の方まで向かってくだせぇ」と壺型の籠の中に声をかけたトロール。

「え?今じゃないとダメ?ナナ、ダメだってよ。ほら早く服着ろ」

「ちょ、ちょっとぉ!ここまでしといてそれはないんじゃない?!こっちはもう覚悟決まっちゃってるってのに」

「ダメだってば・・・俺だって我慢するんだから。普通逆だぞ、このやり取り」


ドモンに促され渋々ナナが服を着ている間、一足先にサンとシンシアが籠から降りた。

降りるなり、口をあんぐりと開けた勇者パーティーがまず目に入り、そして次に見えた光景でその理由を理解した。


「た、大変です御主人様・・・!」

「ちょ、ちょっといきなり蓋を捲っちゃダメよ、サン」

「でも大変なんですぅ!」


慌ててかけてきたサンがドモン達の籠にかかっていた蓋を開けると、慌てて着替え中の裸のナナが出てきたが、サンはそれどころではないといった様子。


「どれどれ・・・あらま!これはやべぇな。どうしたもんか・・・」

「ドモンもほら下穿いちゃって。あららすっかり元気なくなっちゃったね。ズボンもはい・・・って、えー!!」


ドモンの横から顔を出したナナも大声で叫んだ。




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