第692話
「まあ確かに銭湯の中みたいな雰囲気だもんな。勘違いもするよ」そう言ってサンを慰めたドモン。
「気にすることありませんわ。ワタクシも勘違いしていましたもの」本当は勘違いなどしておらず、多分まだ皆は他の温泉に入っているだろうと考え、シンシアは冷蔵庫から冷たい飲み物を持ってこようとしていた。結果的にトロール達が普通に部屋の真ん中にいたが。
「うぅ・・・裸を見られたことはありますけど、自分から裸で飛び出してしまっただなんて・・・」
「ぎゃっひゃっひゃっひゃっ!ヒィィィ可笑しいニヒヒヒヒ~はぁ~涙出てくる」
裸で飛び出してしまったサンは、すぐにトロール達と鉢合わせしてしまったが、つい自分がドジをしてしまった事を隠そうとしてしまい、さも『始めからそのつもりで出てきたのですけれど』とすました顔で、向かい合って座るトロール達の間をスタスタと歩いて通り抜け、驚くトロール達に「御主人様の命令で、お風呂の時はいつもこうですので」と会釈して通り抜けた。
戻る時もナナの替えの下着で軽く胸を隠しながら悠々と戻ってきて、ドモン達の前に到着するなりその場に崩れ落ちた。
その様子の一部始終を見ていたナナは大爆笑。
いつもドジな天然行動をして笑われる立場なので、自分以外の失敗はこれでもかと遠慮なしに笑うのだ。
まだ裸だというのに床に寝転がり、腹を抱えて大股開きで足をジタバタ。
「ブフッ!サンのあの顔ったらプークスクス・・・あー可愛い」
「もう笑わないでください奥様!あぁもうムギュ」
柔らかな双丘の間に抱きしめたサンの頭を挟み、ワシャワシャとまだ濡れている髪を掻きむしったナナ。
サンはもう何度もそれを味わっているが、一向に慣れる気配がない。
「じゃあ折角だし、サンの言ってることが本当だって証明するために、みんな裸で料理でもするか。みんなで裸になっちまえば恥ずかしさも四等分されるだろ」とドモン。
「本気で言ってる?!」「冗談ですわよね??」「・・・え?」
「そうと決まればほら行くぞ!躊躇してたらどんどん恥ずかしくなるぞ」
「わ、わかったわよ!行けばいいんでしょ行けば!」
胸を張って仕切りから飛び出してキッチンへと向かうナナ。
スタスタと裸で歩いて横切るナナに、またもトロール達は驚きの視線を向けたが、ナナもサンと同じようにすました顔で通り抜けた。
そしてちらっと後ろを振り返り、誰も付いてきてないことに気がついた。いつものドモンのイタズラだ。
が、ここまで来たらもう引くには引けない女の意地。
「悪いわね、体が乾くまでいつも裸なのよ。私あちこち水が溜まりやすいから。それよりも大変なの!ドモンが温泉でのぼせちゃって、大事なとこを元気にしながら大の字で伸びちゃってて!それで急いで冷たい飲み物を取りに来たってわけ」
「あ、あぁそうだったんだべか」「それなら仕方ねえべさな」「あぁ」「大事なところが元気に・・??」
見てはいけないと思いつつも、どうしたって視線に入ってしまうナナの体に、トロール達も顔が真っ赤。
まともな判断も出来なくなり、なぜドモンが大事な部分を元気にしながらのぼせなければならないのかの意味もよくわからず、聞いたそのままで納得せざる得なかった。
「みんな急いでドモンのところへ行ったげて!そうすれば大事な部分も治まると思うから!ほら早く!ドモン死んじゃうわよ?」ドモンがいる方を指差すナナ。
「なっ?!あいつ何言ってんだ?!」
「ドモン様は早く横に!嘘をついたと思われてはサンまで疑われますわ!」「サンもお手伝いをしますから今すぐ元気に!」
「えっ?!え?え?え?ちょっ嘘だろ???」
あれよあれよとドモンは床に大の字で寝転され、サンとシンシアによってすぐにナニかを元気にさせられた。
サンのお手伝いがほっぺにチューだったのが可愛いところであり、一番効果的でもあった。
「ドモン様大丈夫だか?!」「あらま!」「ほんに大事なとこだけ元気だべな」ファサッとサンとシンシアに、タオル代わりの布を被せるトロール達。
「・・・・」
「ドモンさん倒れたって本当かい?!」「私に任せて!氷魔法で体を冷やせばイヤァァァァ!!」騒ぎにアーサーとソフィアもやってきた。
「・・・・」
一番最後に持ってきていた別の服に着替えたナナが、ニヤニヤしながらやってきた。
「ほらドモン大丈夫?冷たぁいお水を持ってきたわよー。あぁしまった、手が滑っちゃったー」コップの水を裸のドモンにぶっかけたナナ。
「おいやめろバカ!ぎゃあああ冷た・・・くなかった」温泉のお湯だったのはナナの優しさ。
「よくもやってくれたわね、あんた達。お詫びにいつも面倒くさいって言って作ってくれなかった例のやつ、作ってもらうわよ。いいわね?」
「なんで・・・まあそうだな。わかったよ」
ナナの仕返しと要求に渋い顔をしたドモンだったが、ひとしきり思案したあと、その要求を飲むことに決めた。
更新する寸前で寝てしまった・・・




