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第686話

翌朝目が覚め、残してきた子供達のことで不安になり始めたケーコ。

ドワーフ国王にここに来た経緯を話し、ケーコがやってきたと思われる場所の一斉捜索が行われた。


ただ異世界人だという話を聞いても、まだ誰一人ピンときていない状態。

神の世界からやってきたのだと思う方が納得出来るといったところ。


「ありましたぁ!怪しげに光る印が向こうの岩肌に!」

「いくつかの飲み物と思われる物が入った白い袋も発見いたしました!」次々と走ってくる兵士。


「あ!買ったコーヒーとか忘れちゃってた!まーたやっちゃった・・・三回に一回は買った物忘れて帰ってきちゃうんだよねハハハ・・・」

「お嬢、そっちではないぞ?見つけたのはあちら側だそうだ」反対方向に向かったケーコに指摘した国王。


ドモンがナナの天然に対応出来るのは、それと同じくらいのケーコで馴れていたためだ。

ただ今回はその忘れ物のお陰で、出てきた場所が確定出来た。


「まあ多分また来るハメになると思うから、買えるだけお薬とか必要な物買ってくるわよ。お世話になったみんなにもお土産買ってくるから」

「すぐに戻ってこられるのですかな?」と大臣のひとり。

「二時間もあればね。それで来なかったら裏切ったとかじゃなく、こっちに来られなかったって思って」

「自身の意志ではどうにもならないのであれば仕方あるまいな」


国王は内心ドキドキ。正直もっともっと話がしたかった。

そんな国王の気持ちも知らず、ケーコは何の躊躇いもなく、六芒星に手を当てて元の世界へ戻っていった。

六芒星のことも戻り方も、当然ドモンから話は聞いている。回数制限があることも。



ウオン店内に戻ったケーコのスマホがすぐに鳴った。

スマホの画面に表示されていたのはドモンの母親の名だったが、その相手はドモン・・・ではない方のドモン。


「お前はどうして戻ってきた!バカか?!」

「どうしてって子供達が心配だからに決まってるでしょ!」

「だーかーら!預けた母親と一緒に、もう向こうの世界に避難させたんだっての!死ぬぞお前!さっさとあっち行け!」

「どうして私が死ぬのよ。てか避難って何??」


世界中で治療法が確立されていない病気が流行りだしていることは、ニュースを一切見ないケーコでも知っている。

だけど隔離されることはあっても、避難しなければならないとは思えなかった。


「いいから!買い物があるならさっさと買って、向こうの世界に行ってろ。子供らもあっちにいるから、その内会える。無事というよりメチャメチャ元気だ」

「本当ね?!信じるわよ??」

「ああ任せろ。もうあと何日かすれば、こっちは買い物も出来ないくらいになるだろうからな」

「だからそれどういうこ・・・ねえちょっと!切ったあのバカ!!」


ケーコはブツブツと文句を言いながら、薬や化粧品、下着や生理用品、お菓子や飲み物やタバコ、あとは100円ショップの商品も大量に購入。

消臭剤やトイレットペーパー、ティッシュ、ボールペンとメモ帳、シャンプーにコンディショナーなどなど。ドモンと違い、お土産以外はほぼ自分の為の物である。

折角だからと王様へのお礼にワックのハンバーガーをいくつかと、ドワーフ王国にはたくさんの子供達がいたので、子供が遊べるようなおもちゃも買った。


すでに顔見知りとなったウオンの店長などに手伝ってもらいながら荷物を異世界に送っていると、またもケーコのスマホが鳴る。

どうせあの違う方のドモンだろうとケーコは無視し、最後にお酒売り場に向かった。当然自分好みの酎ハイを選ぶためである。


そこへ向かう途中の家電売り場のテレビから、なんとも物騒なニュースが流れているのを見た。


「〇〇による死者は、世界ですでに一千万人を超え・・・」

「都心では食品を中心とする買い占めが行われ・・・」

「悪天候による災害で避難経路を絶たれた人々が、世界各地で助けを求め・・・」

「すでに物流が完全に麻痺した国では食糧難により・・・」

「〇〇からの攻撃により多数の死者が出ており、××への報復行為が繰り返されております」


病気に食糧難、自然災害やテロ、そして戦争。

それらのニュースを流すテレビ画面の端には『国民保護情報』の文字も見えた。

そこでもう一度鳴る電話。


「物騒過ぎ。なんなのこれ。はいもしもし、ドモンじゃないドモン?忙しいんだから何回もかけないでよ」

「は・や・く・行・け!相変わらずモタモタモタモタ・・・こっちはもう始めちまってんだから」

「始めた?何を?」

「チッ!知らねぇよ!いいから早くしろ!もう待たねぇぞ!」


世界の終わりを告げる落雷と豪雨を自動ドアのガラス越しに見ながら、ケーコは穏やかに晴れた異世界へとまた旅だった。




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