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第680話

「これは・・・多分オイスターソースか。引き戸やら線香花火やら、一体どうなってんだ?」


冷蔵庫に入っていた小瓶の調味料をひと舐めしたドモンは、またしても驚いた。

オイスターソースは向こうでもちろん買ってきてはいたが、この国では牡蠣が手に入らないこともあり、再現がかなり難しいだろうと踏んで、特別な時に内輪でしか使用してこなかったものである。

以前歯の悪いゴブリンの母に水餃子を作った際にも、ドモンはオイスターソースの使用を渋ったほど。結局あの時は使わずに作った。


「ん~じゃあ折角だから今回は中華で行くか。サンは餃子の皮作ってくれるかな?」

「かしこまりました。1、2、3・・・御主人様とサンで10だから皆さんと合わせて70と、ミレイ様と奥様の分を合わせると170枚というところでしょうか?」

「サン、それは見積もりが甘いよ。米のおかわりを禁止してるんだぞ?俺等はそれで足りたとしても、ナナとミレイが50ずつで足りるはずがないだろ。ミレイは遠慮して100でヤメたとしても、ナナは遠慮なんかしないんだからな?オッパイ片方に100ずつだとか言い出して、尻と合わせて300がまず最低限。そこからようやく本体が食べ始めて、途中ウンコして一度ゼロに戻るんだ。つまりあいつひとりで700枚は必要になる」

「全部聞いてたわよドモン、言ってくれるわね。本当に食べてみせましょうか?ちなみにお尻も片方100だから」ナナはドモンとサンの後ろで仁王立ち。

「フピッ!御主人様ったら」「冗談だよ」


同時にヤレヤレのポーズをしたドモンとナナを見て、クスクスと笑うサン。

もちろんサンにはそれがふたりの気遣いだとわかっていたが、随分と気持ちが楽になった。



冒険はその後も順調に続き、自動車ならばあと二日もすれば到着というところまで来た。

最後の家は石造りの城とも言っていいほどの立派な家が用意されており、流石に勇者パーティーも罠かと疑うほど。


「なんか向こうのディ・・・ネズミの国にある、なんちゃら城のミニチュア版だな」

「ドモンの世界にはネズミの国なんてあるの?!」

「正確には違うんだけど、そう言わなければならないルールがあるんだよ。実際は大人も子供も遊べる遊具がたくさんある、遊園地ってところだ」

「あ、わかった!向こうで一緒に買い物した時に、トラベルなんとかってところに宣伝の紙があったわ!大きなお城の絵が描いてあったから印象に残っているのよ。名前は確かディズ・・・」

「ナナ!それ以上言っちゃいけない。ネズミの国だ。いいね?それ以上言うと・・・」


ナナに向かって、手でちょんちょんとクビがハネられるジェスチャーをしたドモン。

夢ではない、厳しい現実を突きつけてくる恐ろしい存在。

よくわからないけれど、この建物に関わる名を口にすることは、ドモンら向こうの世界の人々にとって禁忌的なものだと知る。

そんなことで少し青ざめた表情の一同の前に、ズラズラと男達が姿を現せた。


背は少し低いが、ミレイの村の人々にも負けず劣らずの、筋骨隆々とした者達。

その中の数人は右腕だけが異常に太く、上着の右袖だけがビリビリに引き裂けていた。


ひと目見てドワーフだとドモンも気がついたが、まさしくドワーフというようなヒゲが生えているのは、残念ながら三人にひとり程度。


「よぉあんたがドモンとかいう異世界人か。俺たちゃお嬢と魔王に頼まれ、これを作りに来たドワーフだ。あっちの『ニホンカオク』とかいうのも、俺らの息子や弟子が作ったんだよ。そうすりゃあんたにも必ず伝わるはずだってよ」とドワーフの親方らしき人物。身長はドモンより数センチ低めだが、胸板から何から全ての厚みがドモンの倍はある。

「いやわかんねぇよ、どういう意味だ。そのお嬢って誰だよ?俺も人よりは察しの良い方だと自負してるけど、実際にこんな事されたら、さっぱりわからないもんだな」


日本家屋にガリガリさんや線香花火、そして見たことがあるようなこの城。

そこに何らかの意味深なメッセージが込められているらしいが、そんな回りくどいことをせずに手紙を寄越せとドモンは文句が言いたい。


「お嬢はお嬢。ま、名前は俺達も知らんのよ。名も名乗らねぇから、俺たちゃみんなお嬢と呼んでるよ。でもとにかく立派だろう?このシンデレ・・・フガフガフガ」

「おっと危ない!建物名はセーフな気もするけど、一応口は塞がせてもらうぞ。悪いな」サッと後ろに回って口を塞ぎ、なんとなく鼻もつまんだドモン。当然息は吸えない。

「ブベッ!な、何するんだオメェは!俺にはどうしても信じられねぇよ。こいつがお嬢の言うスゴい奴だなんてよ。料理だってお嬢の方が上手に決まってらぁ」


「そうだそうだ!」「お嬢の頼みだから来たけどよぅ。正直こっちは魔王なんてどうでもいいんだ」

「お嬢の作るハンバァグってやつぁ、どんな料理人だって敵いっこないさ!なんせ異世界では、ハンバァグの店を開いて繁盛してたってんだから、遊び人なんか目じゃないよ!あの少し焦げた香ばしい肉とパンの相性の良さったら・・・思い出しただけでヨダレが出ちまうね、アタシは」「わかるわかる」


職人気質のドワーフにとって、魔王や知らないドモンのことなど正直どうでもいい。

ただその『お嬢』と呼ばれる人物には返しきれないほどの恩があり、頼まれ事を聞いて願いを叶えただけだ。


実際にドモンに出会って、そのどうにもフザケた態度に怒りが湧き、一気に不満が爆発してしまった。


「向こうの世界でハンバーグの店・・・?って、もしかして・・・てかお前ら女も混ざってたのかよ。なんか顔が一回り小さいとは思ってたけど」そう言って胸を見たドモンだったが、かなり失礼な態度であり、ドワーフ達だけじゃなくナナやソフィアにまで睨まれた。

「はん!女じゃ悪いかい?遠路はるばるこんなとこにまで旅してきて城建てたってのに」「そうだそうだ」

「『きっともっと美味しい物を食べさせて貰える』だなんてお嬢は言ってたけど、期待できそうにねぇな。早いとこ戻ろうや」「お嬢のハンバァグ食いたいしな」


ゾロゾロと引き上げる準備を始めたドワーフ達に、ナナが「ちょっと待ちなさいよ!」と声をかけた。

いつもならば「面倒になるから黙っとけ」とドモンも言うところだが、どうにも気になる『お嬢』なる人物がいたため、仕方ないなとドモンも引き止める。


「まあまあ待てよ。せめて飯ぐらい食ってから判断してもいいだろ?作ってやるよ、本物のハンバーグってやつをな。手間がかかるからこっちでは今まで作らなかったんだけども、今日だけは本気で作ったのを食わせてやる」

「・・・」「・・・」「・・・」「・・・」「・・・」ドモンの言葉に黙って顔を見合わせたナナ達と勇者達。

「そこまで言うなら食っていってもいいけどよ、期待はしねぇぜ?」「アタシらはお嬢の料理食べてるしね」


普段面倒くさがりなドモンがおざなりに作った料理でも、この世界ではもちろん、向こうの世界でも「さっさと店を出せ」と言われる程の腕前だが、本当に極稀に本気で料理に取り組むことがある。


ナナが覚えているのでも数度。

結婚式の時でもなんでもない、ただの日常の店が暇な時に気まぐれで作る本気の料理。

いつものように話しかけてもドモンはほぼ反応せず、「ごめんナナ」と見向きもしない。


「・・・こりゃ売りもんに出来ないな、ドモンよ」と、ヨハンもその日は店を臨時休業にしたほど。

客が殺到するのは当然のこと、次からはそれ以上が期待され、求められてしまうためだ。

ちなみにその中の料理のひとつが、集団暴行にあった後の豚丼。その事はナナすら知らない。


否が応でもナナ達の期待は膨らみ、様子を見ていたドワーフ達もその異変を察知していた。





ケーコの車購入のため、ここ二日で膝の悪い俺が歩かされた距離、合計25000歩。

それでもまだあちこち行かなければならないらしい。

行ったところで別に何するわけでもなく、酒買ってもらって飲んでるだけなんだけども。


ともかく更新遅れてごめんなさいと。

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