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第676話

結局その後もたもたとしている内に日が暮れてしまい、再出発は一日遅れに。

なので折角だからと、ドモンが宿の準備と食料を貰ったお礼に、サンと一緒にお菓子作り。


「御主人様ー、クッキーの型抜きはすべて終えましたぁ~」

「どれどれ、おぉ流石にサンは仕事が早いな。ありがとう。じゃあ次はミキサーを使ってメレンゲ作りを頼むよ」

「はぁい。あ、でもその前にまたご褒美を・・・」

「じゃあ目を瞑って。チュッ」

「ウフフありがとうございます!では自動車にミキサーを取りに行ってまいります。あ、結界が張られているのでひとりで大丈夫ですよ。そんなに心配しないでくださいね?」


鼻歌交じりにミキサーを取りにサンが出ていく様子を、驚愕の表情で見つめたナナ。

他の者達もポカンと口が開いている。


「あ・・あ・・・ふ、普通にチュウしてった・・・あのサンが・・・」ナナはポロリとフォークは落としたが、ステーキはしっかり口の中。ちなみに食べているのはナナひとり。

「お、落ち着きなさいナナ。サンも第二夫人としての自覚を自覚にめざ、目覚めたのですわ」シンシアも動揺が隠しきれない。

「昼に水浴びした時にでも何かあったのかなぁ?ソフィアは何か聞いてないか?」とミレイ。

「うーん、それらしい事は特に・・・『やはりサンには出来ました』と言いながら、手を繋ぎながら水浴び場から出てきたくらいで」首を傾げたソフィア。


ドモンのいるキッチンからは、ものすごい勢いでカシャカシャと肉をスライスしている音が響いた。

明らかに動揺が隠しきれていないが、サンが戻るとドモンも落ち着いた様子に。


グギギギ・・・と歯ぎしりを立てながら席を立とうとしたナナを見て、直ぐ様サンが駆け寄り何やら耳打ち。

ナナの怒りが収まった様子に、ドモンはまたホッと一安心。


「サンはなんですって?」とシンシア。

「なんでも今日だけは、ドモンからご褒美を貰うのを許してほしいんだって。そのかわりにドモンから預かっていた大切な物を、全部私とシンシアにくれるみたい」

「まあなんでしょう?」

「よくわかんない。なんか向こうの世界で買ってきていた物みたいよ?例のサンが管理してる『大切な物入れ』に入ってる物のひとつみたい」

「それなら何か素晴らしい物なのでしょう。でもあんなに嬉しそうなサンの顔を見れば、今は黙っておくしかありませんわね」

「うん」


みんなの前には牛しゃぶが山盛り。

新鮮な大根も貰った物の中にあったので、今夜は向こうで買ってきたポン酢も大奮発。


「んがぁ~!オ・コ・メ!お米があれば!もう~お肉はこんなに美味しいのにぃ!!」肉を口いっぱいに詰め込み、頭を抱えて悶絶するナナ。

「お前な・・・最初におかわりはナシだって言ったのに、特別に一回だけ大盛りでおかわりした挙げ句、俺の分どころかサンの米まで持っていって、よく言えるなそんなこと」


ドモンの言葉に頷く勇者パーティーの面々。冒険ならば、ここでパーティー崩壊もあり得るくらいの暴挙だ。


「そ、それは・・・わかった!これは右のオッパイの分の栄養だったのよ!だから同じだけ左のオッパイにも栄養を与えないとならないなって・・・あとお尻と・・・」言い訳の最中にこれは苦しいと、流石のナナも薄っすら気がついた。しかも恥ずかしい。

「だったらサンが一番食べなきゃ駄目だろ!サンは今お前と違って・・・その、なんだ・・・胸が小さいから・・・」ドモンも途中で何かを誤魔化したが、なんだか色々と失敗した気がした。

「ご、御主人様酷いです・・・フフ」


長椅子でドモンの左に座っていたサンは、ドモンの左腕に腕を絡ませ、その上腕に自分の頬を擦り寄せた。


そのままスンスンとドモンの胸元辺りのニオイを嗅いで「また汗かいちゃいましたね。サンは平気ですけど、あとでまた水浴びしましょうね?」と言ってから、またスゥと大きく深呼吸。

「ふぅ安心します」と言って、ニコッと笑顔をドモンに見せた。


「ん、ング!ねぇちょっと何があったの?随分とサンとドモンが近いようなげぇぇーっぷ!あ、ごめん!!」反対側から負け時とドモンにくっついたナナだったが、お腹が押されゲップが出た。

「バ、バカ押すな!サンほら気をつけろ!うわっ肉クサッ!」「だ、大丈夫です」


ゲップのことよりも先にサンの心配をしたドモンの様子に、ナナだけじゃなくシンシアも違和感を覚える。

それが正しいことなんだけれども、何かが違う。


「ちょっとドモン!怒らないから白状なさい!サンに何をしたのよ?こっそりスケベしたってこと?それとももっと他の何か?言いなさいよコノヤロー!!」ドモンの襟を掴んで前後に揺するナナ。怒ってついプロレスの練習成果が出た。

「ち、ちがっ!苦しい!」「ナナおやめなさい!」「奥様おやめ下さい!誤解ですぅ!」


シンシアとナナが慌ててナナを止め、すぐにその場は収まったが、ナナの気持ちはまだ収まらない。

「うびぃぃん」と泣きながら、ヤケ食いで肉を頬張り続けている。

このままでは埒が明かないので、結局サンの方から説明することとなった。



「昨夜、私が御主人様の顔の上で粗相をしてしまったらしく、今日水浴びしてる時に同じ目に合わせていただいたんです。お仕置きしていただきたくて。それでその時・・・」

「え?」「待って待って!」「なんてことをしたのですか女性に!あなたという人は!!」「な、なんですって?!」「それは酷い・・・まさしく悪魔の所業だ・・・」

「ウフフ!で、その時に」「違う違う!!誤解だ!!目に石鹸が入ってる時にくすぐってきたから力んじまってつい・・・で、知らねぇ間にサンが勝手に・・・」


何があったかは書けないが、ふたりの詳しい話を聞いた限りでは、確かに誤解であった。

みんながゲッソリした顔の中、サンだけが嬉しそうな顔で体を左右に揺らしていた。




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