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【幕間】温泉旅行にて その3

「えぇ?!外国の女優さんかい?!お忍びかね??いんや綺麗だねぇ!」「一緒にいるのはマネージャーさんってとこかね?あっちも綺麗だなやぁ」

「人間?!本物の人なの??嘘でしょ?!お人形じゃん!」「可愛い!!」「こっちおいでおいで!」

「いやぁあんなの勃っちまうよハハハ」「ちょっとやめなさいよ!みっともない」

「さっきのすげぇオッパイの美人もいいけど、オラァこっちだなぁ」「おめぇはそうだべなガハハ」


混浴露天風呂。

温泉だからスケベな目で見るのはマナー違反だとか、ジロジロ見る奴なんていないなんて事はまったくといってない。

ケーコが忠告していた通り、いくらでも他人の裸を見るし、スケベな気持ちで見る人もいる。


そこにあるのは見たい、見せたいというスケベ心に下心。開放的だから~なんてただの言い訳だ。

そして同じ目的でそこにいるからこそ、会話も弾む。スケベ話も。


ただし最後の一線だけは超えないのがお約束。

元からのパートナーとや、余程気が合って、同意の上でならば隅の方でこっそり・・・なんてこともあるかもしれないが、なにかの大人の映像のように、あちこちで相手をとっかえひっかえスケベしまくりなんてことはない。


ちなみに海外のヌーディストビーチも実はそんな感じで、自然体を楽しむなんてことはなく、あちこちでナニかを元気にしている人がうろちょろと歩いている。

女性も積極的な分、なかなかとんでもない事になる場合も多い。何が「日本の銭湯文化は信じられない。恥ずかしすぎる」なのだと、一晩中問い詰めたいほどである。


「お邪魔いたします!失礼いたします!」サンはペコペコしながら急いでお湯に飛び込んだ。

「あらま!日本語お上手!」「偉いわぁ。お箸とかも使えるの?」「こんな肌憧れるわぁ。お顔もちっちゃい」

「あのあの・・・お箸はまだ苦手かもです。ごめんなさい」


更にペコリと頭を下げるサン。ちなみに以前店での騒動で指を斬られて、人差し指の曲がりの悪いドモンよりも、サンはずっと上手である。


「いいのよぉ!」「変なこと聞いてしまってこっちこそごめんなさいね!」「あぁもう食べちゃいたい」「ごめん俺トイレ行ってくる。駄目だわもう」


あっという間にサンの周りに群がる人々。

ただし体型的にある意味で男性陣は近寄りがたく、集まったのは女性ばかり。

異常なまでのスキンシップと質問攻めに、サンは困った顔のまま苦笑するのみ。


「ドモンの奴いないわね?下の露天風呂かな?ちょっと見てくるわね」とケーコは全裸のままスタスタと通路のそばの階段へ向かうと、階下の露天風呂からドモンの声がした。

湯けむりの中、誰かとスケベなことでもしていないだろうかとケーコは聞き耳を立てたが、なにやら女性二人と言い争っている様子。


「痴漢よ、痴漢!痴漢になるんだから!」「そうよ!」

「だーかーら違うって!じゃあもし俺の手がブラだったとするだろ?フロントホックの。絶対に動かさないからちょっと付けてみ。それなら痴漢じゃないだろ」


「いや絶対手じゃんそれ!アハハ!」「何このおじさん」

「ホントにホントに。マジで動かさないから信じてよ。こうブラがあるわけだろ?俺は動かせないから自分で持ってつけてみてくれ。手の形のブラだと思って。中指の爪がホックね」


女性の後ろに回って、脇の下から両手を差し出すドモン。

「もー」と言いつつ実際にやってみて、「まあ確かにブラかも。ブフ!」「嘘でしょ?!あはは!」と盛り上がったところで、ダダダとケーコが階段を下りてきた。


「その人動かすわよ!ついでに先っぽも弄るから!」

「え?」「え?!ハゥッ!!ちょ、ちょっと動かさないって言ったのに」

「あまりの可愛さに、生まれて初めて嘘をついちまった。この悪いブラめ!」

「あぁん」


ケーコの忠告も虚しく、女子大生のひとりがドモンの犠牲となった。

しかし怒ってはおらず、ケーコを見るなり「またねおじさん」と手を振りながら、お尻丸出しで階段を上がっていった。


もちろんドモンの行為は、異世界を含む全世界共通のマナー違反だ。


「あれ?サンは?」

「上で女の人達に囲まれてるわ」

「まあそりゃそうだろうな。変装しててもすぐ人が集まっちゃうくらいだし。もっと色んなとこへ連れてってやりたかったんだけどなぁ」

「それは仕方ないわね。で?あの話の覚悟は決まったの?」

「気が進まねぇなぁやっぱり」


世界が崩壊しかけてから早二年。

ほんの少しずつではあるが、人々に笑顔が戻りかけていた。


だがその二年間で、ナナ達が全員で出かけたのは数えるほど。

特にナナに至っては、その体型故にあっという間に身バレしてしまうため、ほとんどの間家にいた。


「あんた達のことを思ってのことでもあるんでしょ?引き受けなさいよ。私達も行くからさ」

「だって札幌離れたくないし面倒だし、何よりどの面下げてそんなこと出来んだよ。さっきの女の子達の先輩や母親も、あん時のことで死んでんだぞ?」

「だったら尚更引き受けなさいよ。責任感じてるんだったら。ハァン」

「お前は政府の回し者かよ・・・たく」


温泉の中でケーコを膝の上に座らせ、ドモンは真面目な話。

行動は全くもって不真面目。


「ふふふ~ん♪御主人様~、ケーコ様~、こちらにいらして・・・あ!」


サンが機嫌よく階段を下りてきた。

が、ドモンの上に座るケーコを見て、ふたりの真正面に立ってジーッと睨んだ。


「違うのよサンちゃん、これは違うの。昔からドモンとお風呂に入る時は、ドモンの前に座るのが習慣だったから。何もしてないからね?」

「本当かなぁ~ケーコ様・・・ケーコさ・・・ケ・・・オロロロロ!!!」サン、突然の逆噴射。

「ギャアアア!!サン、お前いつの間に酔って!!」「サンちゃん!ボエェェエェ!!目が!目が開かない!すっぱっ!!」


被害は甚大。風呂の中には殆ど入らなかったのだけが不幸中の幸い。

ドモンは叫んではいたが、咄嗟にケーコの顔を盾にして自分の身を守りきった。最低な男である。




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