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第672話

「おぉ、随分時間かかったな。そんなに遠くまで行ってたのか?」

「あぁうん、そこまで遠くに行っていたわけじゃないよ」

「あれ?ソフィアは?おい大丈夫か?!」

「彼女はすぐに戻ってくるかと。うん。心配はいらない」


ドモンの質問に、どうにも歯切れの悪い回答をしたアーサー。

それにはここにいた全員が不思議顔。


「で、この先には何があったの?」とナナ。

「あぁそうだ。みんな聞いてくれ。この先に山小屋があったんだよ。それが丁寧にもベッドや食料まで用意されていて・・・」

「それで軽くズッポシしてきたのか」

「そうそ・・・な、何言ってるんだいドモンさん!そんなことあるはずがないじゃないか!」

「お前、ズボンが裏返しだぞさっきから」

「あ!!!!」「もう観念しなさいアーサー。だからすぐにバレると言ったでしょう」


必死に誤魔化すアーサーの後ろから、法衣を脱いで薄着になったソフィアが、タオルで髪を拭きながら戻ってきた。

赤い顔をしていたが、一度開き直ってしまえば女の方が強い。

初めて『致す前』までは下着を見られるのも恥ずかしがるのに、一度『致した後』だと、裸で部屋を歩いてメークを直したりトイレに行ったりするんだよなぁと、変なことを思い出したドモンであった。


「そっちのテントは片付けても良さそうよ。何もいないけど、一応結界ももう張ってあるから、みんなで見てきてはどうかしら?話はその方が早いと思います」

「え?行ってみる!」「ワタクシも見てきますわ」


ソフィアの言葉に、スタスタと先に進むナナとシンシア。ミレイや大魔法使いもついて行った。

サンはドモンと一緒に片付け中。「サンも行っといで」とドモンが声をかけたが、サンはニッコリ微笑むのみ。



「たーいへんよ~ドモーン!すんごいお家が建ってるよー!それに猪肉の他に牛肉まであるのー!」五分もしないうちにナナが戻ってきた。

「大丈夫か?それ。普通に考えりゃ罠だろ。毒とか入ってるんじゃ・・・」

「それはない。すでにソフィアの鑑定も済んでるよ。獲れたての新しい肉ではないけれど、腐ってもいない」とアーサー。

「うーん」と唸る疑り深いドモンに、戻ってきたシンシアも「ドモン様自らご覧になって判断した方が賢明ですわ」と勧めた。


一旦テントなどを自動車に戻し、ドモン達も森の奥へ。

百メートルも歩いたか歩かないかの距離に、公園程度の草原と、山小屋というにはあまりにも大きな二階建てのログハウスが建てられていた。


「立派だけど、ところどころ歪んでいるところを見ると、どうやら伐ったばかりの木を乾燥させずに慌てて建てたんだな、きっとこれは」ドモンは階段代わりに置かれていた丸太を踏んで、その感触を確かめた。生木の感覚が靴越しにも伝わった。

「でも新築ってことでしょう?それはそれでいいじゃない。ほら、中に入ってみてよ」我が家へどうぞと言わんばかりに扉を開けたナナ。


「いやぁこれはなかなかの力技だな。柱も梁も強引に突き刺して、壁も床も引き裂いた板を無理矢理に柱の木にめり込ましてやがる。強度は問題なさそうだから崩れる心配はないだろうけどさ・・・」

「何よ!ドモンってば文句ばっかり!てっきり大喜びするもんだと思ってたのに!」


ドモンの予想外の冷静さに、なんだかガッカリしてしまったナナ。

一緒にはしゃいでくれるものだと思っていた。


「悪い悪い。俺はてっきりオーガの仕業じゃないかと思ってたんだけどさ、青い布のこともあったし。でもどうも様子が違うんだよ。これはオークか、また別の誰かが建てたんじゃないかな?だとしたら勝手に入るのは・・・」

「それはきっと大丈夫だと思います。御主人様これを」


サンはそう言って、一枚のメモ代わりの板を持ってきた。

木で出来た窓を開けた際に小さな板が立て掛けてあり、そこにメッセージらしきものが書いてあったのだ。


『ドモンきま ごじゆうに ごしよくだきい』


「あらら、なんとも惜しいことハハハ。オーガ達はもっと字が書けたはずだから、やっぱりオークかな?ゴブリン達はまだ勉強中だったし、こんな力技出来ないもんな。ま、オーガの指示であるのは間違いないとは思うけど。それ以外の魔物だとしても、オーガの指示であるなら安全か」

「きっとそうよ!だから今日はここに泊まろうよ?ドモン」


一階には木枠に藁を敷き詰め、麻布のシーツが掛けられたベッドが三つ。

それとキッチンらしきもののそばに、冷蔵庫代わりと思われる氷柱がいくつか敷き詰められた大きめの木箱がひとつあり、肉や卵やミルクが入っている。

その横には水浴び場と、トイレと思われる蓋のついた穴があった。至れり尽くせりだが、残念ながら水道などの設備はない。


「氷は本来上に置くべきなんだけどな。熱は上昇するから、これじゃ冷えた空気が下に溜まるだけだ。まあこれも俺らに万が一がないように気遣ってくれたのか。これだけの氷が落ちてきたら無事では済まないだろうし」

「そんなの私も知らなかったわよ。ほら、二階も見てみましょう?」ドモンの背中を押すナナ。早く二階を見せたい。


二階には四人が大の字で並んで寝転がる事が出来るくらいの大きさの、スーパーキングサイズと言えるほどの大きなベッドがひとつ。

そのベッドの周りにはたくさんの綺麗な花と、テーブルの上には果物と何かの宝石、そしてなぜか例のキノコが添えられてあった。


「明らかにこれは、俺らに使えってことなんだろうな。変に気を回しやがって」必死にもてなしてくれたゴブリン達のことを思い出し、ドモンは苦笑い。

「そ、そうだねきっと。うん、間違いない。だから俺達は下で寝よう」そそくさとその場を去ろうとしたアーサー。そしてソフィア。

「あれ?なんだかベッドの真ん中が湿ってるな。クンクンクン・・・なんだか頭の良さそうなスケベなメスのニオイがするぞ?スーハー」

「えっ嘘でしょう?!イヤよヤメて!嗅がないでお願い!」


カマをかけたドモンの罠にソフィアはあっさりと引っかかり、このベッドでスケベを行ったことがバレた。

流石の賢者も心理戦ともなれば、ドモンには敵わないのであった。





結局明日から二日、また旅のお供。旅の費用は全部向こう持ちだから別にいいけれど。

遊び人は遊ぶのに付き合うのも、ある意味仕事。恐らく更新はまた飛ぶ。


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