第671話
「おいおい・・こんな山奥なのかよ、魔王の居城って」
「もっともっと先だよ。今は道があるだけまだマシなんだ」
なんとなく方向はわかるが、もう自分がどこにいるかがわからないくらいの山の森の中。
富士の樹海なんて可愛いくらいに思えるほどの鬱蒼とした雰囲気に、すっかりグッタリとしてしまったドモンをアーサーが慰める。
ここからはどんな獣や魔物が襲ってくるかもわからないと、大賢者のソフィアも真剣な顔。
「それにしても、以前作った道もそろそろ荒れている頃じゃと思っておったのだが、案外キレイなままじゃの」と大魔法使い。
「それはあんなに強く魔法で焼き払ったから、草木もそうは生えてこないんじゃないかしら?」
山火事を起こす勢いで燃えた火を消火したのは、ソフィアの水魔法。
「魔法で森を燃やしまくったのか。環境破壊もいいとこだなお前ら」
「まあ仕方ないんだよ。以前は馬車も普通の馬車だったし、そうするしかなくて。ん?あれは・・・」
ドモンに対し言い訳をしていたアーサーが、道沿いに何かを発見。
「青い布がいくつもぶら下がってるわね。なんかどこかで見たような・・・」運転席に顔を覗かせるナナ。
「いやまさか・・・」うーんと唸り声を上げたドモン。
「ここまで人が入り込んでいるのかな?それなら道がキレイなのも納得行くけれど」アーサーも首をひねる。
ミレイの故郷の村を出発し、自動車で走ること一週間。
いくつもの山や谷、森を越え、かろうじて整備されていた道もついには途絶えた・・・と思われた矢先だった。
勇者パーティーが以前作った道になんとか抜け出て、そのまま五分ほど車を走らせたところ、車一台なら楽に走ることが出来そうな山道になっていたのだ。
不思議に思いつつも、青い布がぶら下がる木のそばの広々とした場所に車を停めた一行。
日も暮かけで、休むのには丁度良い頃合い。
「ここならテントも張れるわね。昨日はみんな自動車の中で寝たから窮屈で窮屈で。んー!」車から降り、声を出して伸びをしたナナ。
「ナナさんはまだいいじゃないか。アタイなんてトイレの前の床で寝ていたら、夜中ドモン様に顔と胸を踏んづけられちまったんだから。アタイじゃなかったら大怪我してるよ」ミレイは苦笑しつつヤレヤレのポーズ。
「あれは悪かったけどさ・・・あんなところで寝てるとは思ってなかったし。でも俺がベッドに戻る時にもお前、自分でこの辺を踏んづけていってくれって頼むから・・・胸を踏めだの顔を踏めだの、最後にはとんでもない場所を」ドモンも仕返しのヤレヤレのポーズ。
「ワーッ!ワーワーワー!!それは言いっこなしって約束だろ!元はと言えばドモン様も悪かったからって、ふたりの秘密にしようと約束したのに!」
「それでどんな気分でしたの?」唐突にドモンとミレイの会話に割り込むシンシア。
「そりゃ天にも昇るほどの気持ち良・・・何を言わせるんだよアタイに!あーもう余計なこと言っちまったよ、アタイときたら」
荷物を持ちながらミレイの話を聞き、ぷくっと膨れるサンをドモンが宥めた。
サンも同じお願いをしたことがあるが、絶対にドモンがやってくれないからだ。
「おーい!向こうの木にも青い布がかかっているから、ソフィアと少し調べてくるよ」とアーサー。
「おう頼んだ。もしかしてだけど・・・」ドモンは真剣な顔。
「・・・もしかしてだけど?」出発しかけたソフィアが、くるっとドモンの方に振り向いた。
「スケベするなら敷物を持って行った方が良いぞ。あと声は抑えめにな」
「しないわよ!!」「し、しないよ・・・多分」
アーサーとソフィアの禁欲生活も早一週間。
普通であれば耐えられないこともないが、同行者がスケベなドモンやナナなのが不運。
機会があれば少しくらいはと、正直アーサーも考えていた。
「冗談はさておき、多分あの布ってオーガ達の仕業のような気がするんだよな。前に温泉の目印で、あんな感じにぶら下がってたし」
「あー!どこかで見覚えあると思ったらそれね!」思い出して嬉しそうに相槌を打つナナ。
「でも、それを利用した罠とも考えられるから、少し警戒もするんだぞって話だ」
「なるほど承知した」「わかったわ」
そうしてアーサーとソフィアは森の中へ。ドモン達はテントの設営と食事の準備。
食材はミレイの村で山程調達してきたので、困ることはない。
そもそも勇者パーティーがいれば現地調達も可能で、その為かなり覚悟を決めて出発した冒険だったが、あまり緊張感もなくピクニック気分だ。
そして戻ってきたアーサーの言葉で、そのピクニック気分に拍車をかけることになる。
そろそろ最終章も近しということで、一日休んでプロット作り。
ただ風呂敷広げるのは簡単でも畳むのはなかなか難しくて、正直苦戦中。
海辺の町に行って漁業や魚料理の改善する話など、話の長さの都合上バッサリ行っちゃったけど、そういや水着買った話書いちゃったしどうしよう?ってんで、なんとかプロレスで回収したくらい。
そんなのが他にもないかどうかを確かめるのに、ちょこちょこと小説の確認もしなくちゃならなくて、時間がかかることかかること・・・
更新遅れたら、もうそこはご了承くだされ。多少息抜きはしてるけど、本気でサボってるわけではないので。