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第663話

「おぉウェダーよ、可哀想に・・・ウェダー・・・ウェダー・・・」「姉貴・・・」


審判長とライデンは、ふと幼き頃のウェダーの姿を思い出していた。

イジメられていた弟の前に、6歳になったばかりの姉が立ち塞がり、何歳も年上のイジメっ子達から守りきった。


引っ叩かれ、突き飛ばされ、何度も転ばされ。それでもウェダーは立ち上がる。

それを見つけた審判長がすぐに救い出したが、ウェダーは泣くこともせず「やってやったわ!」と不敵に笑っていた。


「うぉりゃあ!」


顔を上げ睨み返してくるウェダーの姿に、思わずミレイもつい力が入ってしまい、背中が赤く腫れるほど叩いてしまった。が、ウェダーは怯まず片膝を立てた。


「ウェダーよ!立てぃ!」「姉貴ぃ!」そんな審判長とライデンの声に呼応するように、周囲からも応援の声が出始め、あっという間にコロシアム全体にまで広がってゆく。


「ウェダー!ウェダー!ウェダー!」「ウェダー!ウェダー!ウェダー!」「ウェダー!ウェダー!ウェダー!」


周囲の声援の圧と、闘志をみなぎらせ睨み返し続けるウェダーに、ミレイはもう『スーパーストロングウーマン』を演じることが出来なくなり始めていた。

体ごと薙ぎ払うかの如く、ウェダーの右肩に逆水平チョップをフルスイングしたが、ウェダーは体を半回転だけしてその場に踏みとどまった。そしてすぐに体をミレイの方に向き直し、両膝をマットにつけたまま、天に向かって「ウワァァァ!!」と吠えた。


「こ、この・・・クソ!」


いつからか気迫に圧され、ミレイは攻撃しながらも後ずさり。

攻撃すればするほどウェダーの身体が起き上がっていき、更に闘志を溜めているのがわかったからだ。


大声援の中、ミレイが7発ほど攻撃を加えたところでウェダーは完全に立ち上がり、空手の三戦立ちと呼ばれるポーズでまた仁王立ちとなった。


母を亡くした時「今度から私が弟を守るの!私、強くなりたい!」と願ったウェダーに、父である審判長が最初に教えた構えである。

イジメられていたライデンを守った時も、この構えで乗り切った。


ドモンの予定よりも少し早いが、ここからは真剣勝負。気迫、気力、闘志を、両手に握った拳に込めるウェダー。


「ウェダー選手、攻撃されてもまーったく怯みません!一歩一歩スーパーストロングウーマン選手に迫っていきます!スーパーストロングウーマン選手も思わず後ずさり!」ドモンの実況にも力が入る。この先どうなるのかはドモンも知らない。

「ウェダー!ウェダー!ウェダー!」「ウェダー!ウェダー!ウェダー!」「ウェダー!ウェダー!ウェダー!」


耳をつんざくようなウェダーへの声援。

その声援に背中を押され、ウェダーはもう負ける気がしない。審判長とライデンは、ウェダーへの声援に大号泣。


「右手の拳を振り上げ・・・ウェダーがいったあああああああ!!ウェダー選手!怒りの鉄拳制裁!!!」

「ウォォォ!!」「いっけぇぇぇ!!」「やっちまえぇぇ!!」「がんばれぇぇぇ!!」

「いったいった!ウェダーがいった!!止まらない止まらない止まらなーい!!」


グーパンチは反則のはずだが、なぜかこういう時は許されるのがプロレス。

盛り上がればそれで二人とも勝利。


だがそれでもリング上の二人は、決着をつけねばならない。



試合はコーナー付近でフラフラとしているミレイに、コーナーポストに駆け上がったウェダーが、必殺の空中回転延髄斬りを決めてマットに沈めたものの、カウントはツーで跳ね返されてしまい、ミレイのジャンピングパワーボムの反撃でウェダーが敗北した。


ド派手な技の応酬とあまりにも衝撃的な結末に、観客達もはじめは呆然としていたが、健闘を讃えてパチパチと拍手を始めた審判長とライデンに倣って、皆拍手を始めた。

ミレイが人差し指を立てて「もう一度やろう」という意思をジェスチャーで示してウェダーと握手をすると、拍手は更に大きくなって会場全体を包みこんだ。


「ど、どうだったかな?・・・最後は負けちゃったけど」実況席の父親と弟のところへやってきたウェダー。

「うむ、これが『プロレス』か。だが負けてしまってはな。これからも精進し、技を磨くと良い」との審判長の言葉に「・・・うん」とウェダーは下を向いた。


「しかし試合では負けてしまったが、勝負には負けてはいなかったぞ。誰よりも太陽のように熱く輝いていた。この声援がその答えだよウェダー。つ、強くなったな・・・天国で母さんも、きっと喜んでいることだろう。うぅぅ」

「ちょ、ちょっとみっともない!こんなとこで泣かないでよお父さん・・・私まで泣いちゃうじゃない」


観客達の『ウェダーコール』はまだまだ止む気配がなかった。


酔っ払いの男など、もう怖くはない。

酔っ払いの方も絡んでくることはないだろう。

この村だけではなく、世界でも語り継がれることになる、あのウェダーの『鉄拳制裁』が待っているのだから。





戦闘描写に手こずって、普通に一日飛ばしてしまった。

プロレスを文字で表すのは難しい。



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