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第651話

意を決し、もうどうにでもなれとばかりに、ドモンはアーサーに向かって話し始めた。


「えぇ~っとなんだ・・・このエルがさ、お前に憧れててな?せめて初めてはお前がいいって言うんだけど、処女のままじゃなけりゃ駄目みたいでその~・・・ソフィアには悪いんだけど、ズッポシはなしでエルの初めてを奪ってやってくれないか?」

「な?!嘘でしょ??俺が??」「駄目よ!!」

「別にいいじゃないか。減るもんじゃあるまいし」


ソフィアは即お断り。アーサーは一瞬だけ満更でもない様子だったが、怒るソフィアを見てすぐに考えを改めた。

これが普通の人の反応で、別にいいと思うドモンがおかしい。


エルはもうひとつ小さな溜め息をし、ヤレヤレのポーズで苦笑した。


「あのねぇドモン、そういうのは第三者が頼んでするものじゃないの。わかる?そんなので結ばれても、私が嬉しいはずがないじゃない。ましてや誰かを悲しませるようなことまでして」

「そうかなぁ?まぁそういうもんなのか・・・」


ドモンの曲がった服の襟を正しながら、諭すように優しく語りかけ続けるエル。

見た目は子供っぽいが、中身はそうではないのだと周りの者達も把握した。

その途端ナナはすっかり安心し「ドモンはしっかりエルさんの話を聞きなさい」と、ウンウン頷いている。


「・・・わかった?ドモン。それに私の初めてなんて・・・あげられるわけないじゃない」

「そこまで深い仲になれなんて言わないよ?俺も。でもちょっとチュッとするくらいなら許されるんじゃないか?思い出にさ」

「だーかーら!初めてはもう無理だって言ってるの。鈍い人ね・・・」

「???」


勘の良いシンシアと頭の良いソフィアは何かを察し、ハッとした表情に。

ドモンを含む他の者達はポカンとした顔。


「今朝、初めては済ませたから・・・もう初めてにはならないって言ってるの」

「え?誰と??」

「あなた以外誰がいるのよ・・・」

「お、俺?!いつの間・・・待て待てナナ!違う誤解だって!イタタタ耳千切れる!!」


心配していた通りになったと憤慨したナナによりドモンは耳を引っ張られ、馬乗りになられて引っ叩かれて駆逐された。

エルはそれを見つめながら涼しい顔。


エルがいきなり勇者に出会っても、ドモンにたくさんの妻がいても動揺しなかったのは、すでにドモンとの結びつきが出来ていたためである。


長い寿命を持つエルフにとって、口づけだけとは言えども、初めての相手はとても重要。

数百年から千年以上、その記憶に残り続けるためだ。

その結びつきは、たとえ別の人と結婚しても生涯消えることはない。



「・・・というわけで、私はドモンに救われたから、私もドモンを救うことに決めたの。この生涯を捧げて。エルフの里も救われたしね」今までの経緯を話したエル。

「そんな事が・・・」「あったのですか」シンシアとサンも納得。


「本っ当にそれ以上のことはしてないでしょうね?この人寝てても・・・元気になるし」疑り深いナナ。

「さあそれはどうかしら?ね?ドモン。とにかく私がいれば、この人の寿命に関する異常への心配は無くなるでしょう」

「ムグググ・・・ちょっとなんなのよ!人の弱みに付け込んで!ドモンをどうするつもり?!」

「私を必要としているのは、ドモンとあなた達の方でしょ?さぁドモン、旅のためにエルフの秘薬が必要でしょう?どこかふたりきりになれる場所へ行きましょう」


ドモンと腕を組み、この中の誰よりも貴重な存在だと示すため、必要以上にエルフの長耳を立てたエル。

ちなみに魔力は多少消費するが、長耳を隠すことも可能。


真っ赤な顔で「キィィィ!」と怒るナナを皆でなだめ、ドモンとエルを見送った。

とても貴重なエルフの秘薬を手に入れるためなのだから仕方ない。

ドモンとエルは自動車の中へ。



「ドモンの寿命はそうね・・・半年くらい伸びているかしら?本来なら数十年から数百年伸びたっておかしくないんだけどな。呪いかどうかわからないけど、余程身体が弱っているのねぇ」じっとドモンの目を見つめて、何かを探ったエル。

「結構ギリギリだったみたいだから、それだけ伸びたら十分だよ。悪いな」


「心配だから、もう少し寿命を伸ばしてから出発した方がいいわ。そして携帯用の物もいくつか用意しておくから、それも一応持っていってね。本当ならついていけたら一番いいんでしょうけど、私に万が一のことがあればドモンも大変だから」

「携帯用ってその・・・長老が言っていた処女のエルフの血だか、分泌物だか体液だかってやつか?いいのか?」

「・・・ドモンならいいわよ。今度はしっかり受け取ってよね。今朝はほとんど手で拭ってしまったし」


車内のベッドに腰掛け、そっと目を閉じるエル。

ドモンはゴクリとツバを飲み込み、エルの正面に回って両肩に手をやり、そのまま後ろへ押し倒した。


「キャッ!そんな情熱的な・・・」

「じゃ、じゃあいただきます」

「え?ちょ?!ちが・・・待って!別に口づ・・・イヤァ~アアアァ・・・」


エルフは魔法特化型であり、非力である。

武器は成人男性で超小型の弓を引くのがやっと。

狩猟できるほどもっと力があったならば、食生活も肉食になっていたかもしれないが、エルフ達は数千年数万年以上も前にそれを諦めたのだった。


ドモンの大きな勘違いにより、あっさりと下着を剥ぎ取られてしまったエル。

ドモンのためにもその貞操は守らねばならないと、5キロの氷の塊をドモンの頭の上に落とした。




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