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第639話

「ちょいと、そこの騎士の方」

「なんだ?」


エイが馬上にいた騎士に話しかけるも、かなり威圧的な態度で睨まれた。

野盗のことでかなり神経を尖らせているのだろうが、確かにこれではサキュバス達も声はかけられないだろうとエイも納得。


「どうも怪しいな貴様ら」

「怪しいもんじゃないってば。あんたもドモンって人を知ってるだろう?その人から手紙を預かってるのよ」

「ハァまたか・・・偽の手紙を寄越してくる貴様らみたいなのが、今どれだけいると思っているのだ。私も暇ではない。さっさと諦めて行くがよい」

「取りつく島もないわねこりゃ」


あのエイですら門前払い。手紙の封すら開けてもらえず。

以前までのエイならこれでスゴスゴと引き下がっていただろうが、今はもう違う。

騎士を睨み返したエイを見て、サキュバス達は心臓が口から飛び出しそうな思い。


それから騎士とエイの押し問答は十数分続いた。


「まずは手紙を確認しなさいよ!それが本物だったなら、あんた国王陛下からこっぴどく叱られるよ!」

「あぁわかったわかった。どれ・・・何だこの字は!?全く読めぬ!それにドモン様の印も、最近は精巧な偽物まであるからな。これだけでは判断は出来ん」


「偽物だったらもっと読みやすい文字で書くでしょうに。金をせびるにしたって、それが伝わらなきゃ意味がないんだからさ」

「むむ?確かにそれは一理あるか。うむぅどれどれ・・・大しきゅうたのみがあるトッポ、ジジイでもだれでもいい・・・む?トッポとはもしや・・・!!」


ミミズが這ったような汚い字を、なんとか少しだけ読み進めた騎士だったが、ドモンが付けた国王の愛称であるトッポの文字を読むなり、馬から慌てて飛び降りた。


「し、失礼!きさ・・・皆様はドモン様とどのようなご関係で?」

「私はただの知り合いさ。名はエイ。ホークの娘で画家をやってるよ」

「なんと!!」


慌てて跪く騎士。

本来騎士がそこまでする必要はないけれど、無礼な態度を取り続けてしまったことをエイに詫びた。


「それとこの娘さん方は訳アリのお嬢さん方だけど、その手紙を書いた人にとっても、そしてあたしにとっても大切な客人さ。何かあればあんたの首が飛ぶだけじゃ済まないよ!」

「そ、そうでしたか!それは大変な失礼を。おいそこの憲兵!大至急団長をここに!」「は、はい!!」

「ど、どうなってるの?これは一体・・・」目に見えて急変した騎士の態度に驚くサキュバスの姉。


ドモンが異世界人で、この国にとっても重要な人物だということはわかっている。

だけどもドモンのその影響力は、サキュバス達が考えていたものを遥かに超えたもので、そんな人を監禁しようとしていた自分達に対してゾッとした。しかも勇者達がそばにいたというのに。


ドモンに万が一のことがあったならば、サキュバス達はこの世の全てを敵に回していたかも知れないのだ。


「失礼いたします!」「我らが王都まで皆様の護衛をさせていただきます!」

「オ、オーガ?!」「ひっ!」「アワワワ・・・」「よろしくお願いね」


騎士団長がやってくるよりも先に到着したオーガ達が、女性達の前に跪いた。

サキュバスにとって天敵ではないが、絶対に近づいてはならないとされている魔物である。


「預かり受けた手紙はこちらです団長」

「うむ、これは間違いない。正真正銘、ドモン様の手紙だ!」

「や、やはり」

「ふむふむなるほど・・・すぐに馬車の用意を!王宮まで手厚く保護するのだ!失敗は許されんぞ!!!」

「ハッ!」「ハッ!」「ハッ!」「ハッ!」「ハッ!」「ハッ!」「ハッ!」「ハッ!」「ハッ!」「ハッ!」「ハッ!」「ハッ!」


怒涛の展開にオロオロし続けるサキュバス姉妹の前に、森の中にはあまりにも不釣り合いな白く綺麗なテーブルと椅子が用意され、温かな食事と高級そうな紅茶が並べられた。

テーブルを囲む女性達の左右にはオーガ、周囲には騎士達が輪になるようにズラリ。


「申し訳ございませんが、馬車が到着するまでこちらにて待機を」と騎士団長。

「あの・・・」「・・・」「私達どうしたら」

「慣れるしかないさ。あの人に関わったのが運の尽き。それにこんなのはまだまだ序の口だよ」それをよく知っているエイはヤレヤレのポーズ。

「本当に王宮に連れて行かれるんじゃ・・・」

「そりゃそうさ。だから言ったじゃないの」


そのまま三時間半ほど待ちやってきたのは、なんとも豪華絢爛できらびやかな高級新型馬車と更に多くの騎士達。それにコックや侍女達が乗っている馬車数台。

それにはさすがのエイも乾いた笑いが出たが、ドモンの手紙にはそれほど大切に扱うようにと書かれていたので納得するしかない。


「ではそろそろご出発のご準備を。必ず無事に王宮までお送りいたします」


サキュバス達とエイは、お姫様以上の手厚い保護を受けながら王都へと出発。

サキュバス達にとっては、それはまるで夢のような旅であった。




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