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第613話

「御主人様・・・じゃなかった、あなたぁ!見てくだ・・見て、輪投げというものがありますよ~。知っていましたか?やってみたいなぁ」

「ああ知ってるよ。じゃあやってみようか」


折角の機会だし、御主人様と呼ぶのと敬語を禁止したものの、慣れておらず、なかなか上手くはいかないサン。

だけどもそれでもやはり嬉しそう。


「もっと前かがみになって手を伸ばして、ギリギリまで近づくんだ。運だけじゃなかなか入らないよ」

「で、でも・・・あのあの・・・こうでしょ・・・こうかな?」

「ウォッホン!ゴホゴホ!」


おじさん店員のわざとらしい咳払い。

サンは赤い顔をしながら輪を投げ、見事に景品をゲット。

貰ったのは明らかに安物とわかる髪留めだったが、サンはその場で付けた。


その時両手を上に上げたことで、ドモンもようやく気がついた。


「サン、下着を着けてなかったのか」

「は、はい。以前この浴衣というものを初めて着用する時、ごしゅ、あなたが下着は着けないものだと言っていたから・・・奥様も着けてらっしゃらなかったですし」

「まあそうなんだけど、これだけ大人数がいるお祭りのような場所だと流石にまずいんじゃ・・・それにサンの場合、胸元がカパカパな上に先っぽだけは結構大きいから・・・」

「だ、だめぇ!シーッですぅ!」


店員の咳払いの理由を理解したふたりは、脱兎のごとくその場を逃げ出し、綿あめづくり体験の行列に並んだ。


「フゥフゥ・・・」

「ほらサン、浴衣がはだけてるぞ。どれ俺が直してやるから真っすぐ立ってて」

「ごめんなさい、まだ慣れていなくて」

「浴衣の合わせ方も逆だな。服と違って、浴衣は男も女も左側が上に来るように着るんだよ。サッと直すから、胸元だけ隠しておいて」

「え?は、はい!で、でもあの」


浴衣の帯を少しだけ緩め、並んでいる人達から見えないように、サッと浴衣を開いて左右を入れ替え、サッと閉じたドモン。

帯も締め直し終わったが、ドモンはその場にしゃがんだまま。


「下も着けてなかったんだ・・・なんかさっき走った時、結構はだけていたように見えたけど・・・」

「は、はい・・・皆様の視線がもう痛いほどサンの下半身に・・・」

「俺には今すぐ壺が必要だよ。もしくはもういっそのことここでふたりで」

「???」


そんなドモンの気持ちも知らずに、順番が来たサンは浴衣がはだけるのも構わず無邪気に綿あめ作り。

ドモンもさり気なくサンの浴衣を何度も直していたが、ピョンピョンクルクルと激しく動くサンについには諦めムード。

サンも綿あめが出来た頃にようやく、自分が『全裸にマント一枚』のような格好になっていると気が付き、愕然とした。


「もうこの辺にいる人達に全部見られちゃったな・・・」

「はい~・・・ごめんなさいあなた。サンの体はあなたのものなのに、サンが勝手に見せてしまって」

「え?俺のもの?!」

「そうですぅ。ごしゅ・・・あなたから命令もされていないのに、勝手に辱めを受けてしまって・・・本当にごめんなさい」


しょんぼりとしたサンだったが、なんだかドモンが考えていたものと違っていた。


「それって俺がここで裸になれと言ったら・・・」

「ウフフ。だってサンはあなたのものですし、だから命令通り下着だって着けてこなかったんですから。サンならなんでも出来ます!この場で裸になってあなたのおしっムググ」

「何を言おうとしたんだよ!バカ!わかったから早く立ち上がれ!あーもう壺を早く・・・」


その場に跪いて、うっとりとした顔で口を開けるサンを無理やり立たせたドモン。

どうやら今まで恥ずかしさどうこうではなく、ナナやシンシアに対して躊躇があっただけだったと判明。


二人きりとなった今それがなくなり、今日この日だけは『ドモンに好き勝手に扱われ、辱めを受けたい』という願望があったことをドモンに告白した。


「スケベな小説じゃないんだから・・・」

「小説でもなんでもいいの。もう抑えきれないです」

「とにかくここでは駄目だ。子供も多いしな。我慢しろ。これは命令ね」

「うぅおあずけ・・・はい」


今のサンにとってドモンの命令は絶対。というよりもドモンが絶対。

ドモンに従うことが生きることであり、ドモンに従うことが自分の存在意義である。

そこへ元からあった被虐願望が重なったのと、この日受け続けた羞恥により感情が爆発した。


悪魔的なドモンの手によって滅茶苦茶にされたい。シンシアよりも。


「ほらほら!向こうにジンギスカン屋があるよ。あれ食べたらもうひとっ風呂浴びようよ」

「はい」

「お腹いっぱい?」

「はい」

「どっちなの?」

「はい」

「駄目だこりゃ」

「ふぁい」


ドモンに返事をする度に瞳がうるうると輝き、幸せそうな表情を浮かべるサン。

我慢をしろと命令されてから完全に何かのスイッチが入ったのか、ドモンに何かを言われるだけでただ嬉しくて、自分にブンブンと振る犬の尻尾がないのが悔しくなるほど。


「ほ、ほら、あっちに可愛い小動物が飼われてるみたいだぞ?あれはリスかな?それともハツカネズミのようなものかな?見てる子供らも楽しそうだな」

「可愛い小さな娘が飼われてハズカシメのようなものを?!・・・フゥフゥ羨ましいです。あなた・・・ううん御主人様、サンにも早く・・・」

「こりゃもう我慢の限界だな。サンも俺も・・・」


ふたりは着替えを済ませ、急いで予約をしていた高級宿の方に向かった。

サンがこうなってしまった理由はドモンにあったが、そこにはドモンが想像もしていなかったような深刻な問題があった。




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