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第610話

デザートのアイスクリームは大量に作っていたこともあり、来客者全員に振る舞われた。

バニラにイチゴ味、そしてチョコレート味。

どれも大変好評で、ここへ来た者達を納得させるに十分なもの。


ナナは当然全てを何度も食べ、屋敷のトイレをも破壊しに席を立った。

それよりも前に、着ていたドレスのボタンが破壊されかけたけれども。


そうして万事無事とは言えないけれど、なんとか披露宴は済んだ。

新婚旅行は魔王の城への旅となるので、明日からシンシアとサン、そして嫉妬したナナとひとりずつ交代で、ドモンと二人きりで過ごすことがそれの代わりとなる。一泊だけの小さな新婚旅行。


よって旅への出発は四日後と決まった。



「ドドドモン様、本日はどう致しましょう?どう致しましょうか?」庶民の服を着たシンシア。

「今日は普通の女の子みたいに話そうって昨日決めただろ?ドモンって呼び捨てでもいいし、あなたでもなんでもいいよ」

「クハッ・・・そんなこと無理ですわ!無理でしゅ・・・」

「ワハハ、緊張した時のサンみたいな話し方だな。とにかく緊張を解くために、朝だけど一杯引っ掛けようか?」


行ってらっしゃいと皆に見送られ、手を繋いでドモンとシンシアはお泊りデートに出発。

こうする事をドモンに伝えられてから、ナナとサンも交えて女三人で色々相談をしたけれど、その何もかもが吹っ飛んでしまったシンシア。

いつもの店でエールを一杯飲んだが、酔いが全く回らないのですぐに店を出た。


「ナ、ナナはいつもこんな感じでドモン様・・・あ、あなたと過ごしていたのかしら?」

「どうだろ?ナナは緊張するような性格してないからなぁ」

「ではサンはどうでしょう?あの子はきっと緊張しますわよ!サンならどうするのでしょう?」

「今はナナのこともサンのことも一旦忘れろ。ふたりきりなんだから」

「ふぁぁい・・・」


手を繋いだまま、真っ赤な顔で街を歩くシンシア。

生まれて初めての自由行動だというのに、今はもうそれどころではない。


「どうも雲行きが怪しいな。随分湿った空気だし、ひと雨くるかなこりゃ。一旦あの店に避難しようか」

「し、湿ってなんておりませんわ!!あ、あの・・・ほんの少しだけおしめりはしてしまいましたけれども、決してそんなつもりでは」

「????」

「うぅそうですわ!推察通り、もうワタクシ我慢の限界が・・・」

「何の話だよ?!とにかくあのアクセサリー屋に入るぞ」


以前貴族の子供達がナナに指輪を飼ったアクセサリー屋に入り、同じ指輪をシンシアにも購入。

結婚式で指輪の交換をした時の指輪も持っていたが、ナナと同じ物も欲しいというので買うことに。


店の外は雨。

軒下の長椅子で手を繋ぎ座り、雨が上がるのを待つ。


「もう・・・死んでも構いません。今日この時がワタクシの・・・人生最良の日でございます」

「バカ。そんな事で死ぬなんて言うなよ。これから人生最良の日なんていくらでもやってくるし、やってくるように努力するからさ」


雨の中を小走りで往来する人々を横目に、ドモンはシンシアに口づけをした。

シンシアの瞳から流れる涙は、キラキラと輝いている。



雨もようやく上がり、いくつかの食材と小さなナイフなどの雑貨を購入したシンシア。

生まれて初めてひとりでの買い物がしてみたいとのことで、ドモンは店の外で待つ。


「何を買ったんだ?」麻で出来た買い物袋の中を覗くドモン。

「ま、まだ見てはいけませんわ!ささ、早く宿の方へと参りましょう」

「???まあいいや。それにしても食事も出ないような安宿で本当に良いのか?冒険者が泊まるような宿だぞ?」

「ええ、構いません」


まだ夕方前だというのに、早々と安宿に入ったふたり。

狭い部屋にベッドがひとつと、自炊用の小さなキッチンと小さなコンロがあるのみ。


「ワタクシ、途中で思いつきましたの。ドモン様・・・あなたにワタクシが作る手料理を食していただこうと」

「ああ、それでこんなに食材を買い込んでたのか。でも料理ってシンシアは・・・」

「は、初めてですわ。でも本などで読みまして、ずっと憧れておりましたの。だ、旦那様にお料理を作ることを・・・」

「そうか。まあ出来ないことがあれば手伝うからさ。でも怪我だけはしないでくれよ?」

「わかりましたわ!では早速」


袋の中から先程買ったと思われる新品のエプロンを出したシンシアは、そのままスルスルとドレスを脱ぎ始め、裸になってからエプロンを着けた。

ベッドでラッパ飲みしていたワインを盛大に吹き出すドモン。シンシアは一体どんな本を読んでいたのか?


シンシアの初めての料理は仕方ないことだがなかなか進まず、ドモンの酔いもすっかり回ってしまい、ついには我慢の限界を迎えてしまった。


「キャッ!ド・・あなたったら、お料理中なんですからイタズラしちゃダ・メ・で・す・よ?ウフ」待ってましたとばかりのシンシア。

「ハァハァ・・・もうおあずけも限界だよ!」

「あん!隙間から手を入れちゃダメ!ほらお料理が焦げちゃいますわ」


その後食べたゴツゴツの少し焦げた野菜炒めは、苦くともなんだか幸せな味で、とても美味しかった。




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