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第603話

「ワタクシはそのままでも・・・いえ、むしろそのままの方が宜しいかと」

「はい!サンもそう思います。フゥフゥ」

「嫌だよ。なんでだよ!まったく・・・」


披露宴を明日に控えた夜、折角だからとサンとシンシアの部屋で過ごしたドモン。代わりにアイはナナの部屋へ。

今までのことやこれからのことを真面目に話し合っていたけれど、話はすぐにドモンの症状の話となり、ふたりの希望もあって急遽シンシアも交え予行演習を行ったのだ。


結婚式自体はもう済ませていたこともあり、皆終始リラックスムード。

ツヤツヤピカピカの状態で披露宴当日の朝を迎えた。



今朝の朝食も当然ドモンの出番。

ドモン特製の『ふわとろとん平焼き』を手際良く作り、サンが出来たものから順にテーブルへと運んでいる。


「あなた達、寝不足じゃないの?今日大丈夫?夜の間ずっと一体何をしていたのよぅ?」と聞いたエリーが一番眠たそうな顔をしていた。

「ええ。ドモン様に後ろ手に縛られ、天井から吊るされた糸に背伸びをした状態で胸の先を結ばれたりしていましたわ。踵を床につけば、胸が引き千切れんばかりに引っ張られ、強烈な痛みが全身を襲うのですわ」

「は?!」「えぇ?!」

「なにやってんのよ、あんた達。あんなに叱ったってのにまた・・・ナナもちょっとなんとか言ってやんなさいよ」「やだもう!サンも??」


「いいえ。サンはワタクシが力尽きるまでの間に、ドモン様をスッキリさせることが出来れば、ワタクシを救うことが出来るという決まりで、必死にドモン様にご奉仕をしていたのです。ですがその間もドモン様がサンを責め立て、失神させてしまうの」

「おいシンシア!!なに余計なことベラベラと普通に喋ってんだよ!!」「シ、シンシア様!!」


ようやくドモンとサンが気がついて、シンシアを止めた。

こういったところは、やはり常識外れのトンデモお姫様である。


「く、詳しく聞かせてシンシアちゃん。どうだったの?ドモンさんにイジメられて興奮したの?あんなに激しい声出してウフフ」

「それはもう惨めで惨めで・・・ですが、心も身体も支配される喜びが下半身から止め処無く溢れ出・・・」

「シンシア!エリーもやめろってば!」「ちょっとお母さん?!」焦るドモンと恥ずかしがるナナ。


「いいじゃなぁ~い。私達、何度中の様子を覗こうかと思ったことか。ヨハンったらもう扉を開けてしまおうかと言いながら、私に抱きついて腰を振・・・」

「エ、エリー!!」「ちょっとぉ!!ふたりともリビングで何してたのよ!!」


シンシアにつられてしまい、すっかり開放的な発言となってしまったエリーにヨハンも焦る。

ナナはトイレか何かで部屋を出て、そんな両親と鉢合わせなかったことを神に感謝した。


「朝からなんて会話してるのよ。折角の食事も台無しだわ・・・ん・・・!?なにこれフワッフワのトロットロ!濃厚な卵の味にお肉とお野菜もあってるし、このソースも絶品よ!」付き合いきれないアイは、一足先に食事開始。

「私も先程御主人様に味見させていただいた時、驚きました。一皿に卵はひとつしか使用していないはずなのに、まるで何個も使ったかのように濃厚で、本当に魔法のようです!」サンもアイの横に着席。


「これは卵に小麦粉と、あと片栗粉と重曹ってのが入っているんだよ。焼き方も一工夫必要だけどな。蒸すくらいのつもりの低温で中に火を入れて行くんだ。・・・電子レンジがあれば話は早いんだけどな」


片栗粉はこの世界でもすでに作られ始め、重曹はその内ギドがなんとかしてくれることだろう。

電子レンジは流石にまだまだ遠いだろうけれども。その為の本はすべて購入済み。


「食べ過ぎちゃう~!ドレス入るかなぁ?」


ナナの何気ない一言。

しかしその一言で突然ドモンとサンとシンシアにも、結婚披露宴を行うということに対しての実感が湧いてきた。


確かに結婚式は済ませている。

あれはあれで幸せなことであったし、戸籍上でドモンと結ばれることが出来たことは、この上ないほど嬉しいことだ。


ただやはり形式上だけではなく、皆に祝福されてこそ実感も湧くというもの。

妻を娶ったことを、夫を持つ身になったことを皆に知らしめ、認めてもらう。それが披露宴。


逆にそこで祝福もされず、認められもしなければ、いくら形式上は夫婦とはいえ、色々とギクシャクしてしまうことも多くなるだろう。


元の世界で言うならば、内縁の妻がなかなか周囲に理解されないのと同じ。

自分達だけが夫婦として暮らしているが、他所から見れば『他人同士の男女が一緒に暮らしている』としか思われないのだ。


「きゅ、急に緊張してきましたわ。お父様とお母様もすでに宿の方で準備をしているはずですが、きちんと打ち合わせた通りのドレスをお選びになったかしら?お母様は気分屋ですし、突如ドレスの変更などをして、万が一ワタクシ達と同色のものを選んでしまっては・・・」

「そ、それは大丈夫かと思われます。一応シンシア様のドレスは複数持っていきますし、私はいざとなれば最後に着る予定の、御主人様が誂えてくださった黒のドレスへと着替えますので」


「ワタクシ達の心配などしていないのサン!お母様が心配だと言っているの!」

「だから平気だとさっきから言っているじゃないですか!もう!どうしてシンシア様は、いつもサンの言う事を聞いてくださらないのですか!」

「聞いてますわよ!!大きな声を出さないでちょうだい!!」「だって!」

「やめろやめろ!ふたりとも!」


緊張から突如不安になり、言葉数も増えたシンシアとサン。

さっきまでの機嫌の良さは何だったのかと思えるほど情緒不安定となり、初めての喧嘩をした。




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