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第597話

「馬鹿者!どこへ行っておったのだ!!」

「あら?カールもここにいたんだ。トッポはまだ中?」

「貴様、また王のことをなんて呼び方を・・・義父とふたりまだ中だ。で、どこに行っていたのだ」

「あぁ、向こうの世界に戻ってたんだよ。ちょっと待ってお土産あるから」

「何?!今なんと言った?!」


車の冷凍庫に入れていたシェークを袋に戻し、カールや勇者達、そしてチィとミィにもバーガーセットを袋ごと渡していくドモン。


「ん~~~!!美味しい~~~!!」

「あぁ、皆慌てて食べるな!今コック長を呼んだ故に・・・」

「これがドモンさんの世界の軽食だっていうの?ほらソフィア、こっちも食べてごらんよ」「私のも食べてみて!」

「待て!待ってください皆様!!それはこの世界で食すことが出来ない、貴重なものなのです!!」


むっしゃむしゃと食べる勇者パーティーとチィとミィ。

その貴重さを知っているカールは大慌て。


「あぁこのような貴重なものをあっさりと・・・」

「ナナなんてひとりで8袋分も一気に食べたんだぞ。そしてとんでもない量のうんこをして、トイレを壊したんだ」

「そのような量、一体どこに入るというのだまったく」


「だから入り切らなかったんだって。溢れちゃったと言うか飛び出しちゃったと言うか」身振り手振りでどれだけ出たかを示すドモン。

「たまたま今日は便器に収まらなかっただけよ!いつもはこまめに流しながらしてるけど、ドモンが異世界の妙な薬をお尻に入れたから、途中で止められなかったの!」カールからのまさかの追求に、ナナに動揺が走る。

「誰もシモの話などしとらん!その細い体によくそれだけの食べ物が収まったと言っておるのだ!そしてどうせその薬とやらも貴重なものなのであろう?ハァ・・・」


カールに細いと言われ、「そお?」と服を捲ってオヘソを見せて、上機嫌に腰をくねらせたナナ。

実際ウエスト周りは現在70センチ近くあるのだが、ボン・キュッ・ボンのボン部分があまりに大きいため、ものすごく細く見えている。


カールはどうせ向こうに戻るならば一言知らせてくれればとも考えたが、そうなれば現在のドモンの人間関係上、各方面から様々な頼まれごとをされてしまうのだろうということも瞬時に理解し心の奥にとどめ、ため息ひとつで済ませたのだ。


「まあほら、カールからしてみればお宝とも言えるような本とかもたくさん買ってきたからさ、それで勘弁してよ。この世界を発展させてくれるなら、独り占めするなり誰かに売り飛ばすなり、好きにしたって構わないから」

「貴様がそのようなことは控えろと言っておったであろう。どういった風の吹き回しだ。まさか・・・例のあの事で自暴自棄になっておるのではあるまいな?」


例のあの事とはドモンの寿命の件。

親友であるカールは、ヨハンと一緒に話は聞いている。


「それはない・・・とは正直言い切れないな。ただヤケというよりもし万が一を考えて、ある程度この世界が発展できるくらいの手助けがしたかったんだ。魔法で出来ることの限界もなんとなく見えたし。ギドみたいな天才がいりゃ、いつかこの世界にもこいつが出来るぜ?」


ドモンはポケットからスマホを取り出し、画面をポンと押した。


『ドモン好き~』『私はヨハンが大好きだよぉ』跳ねる4つの脂肪の塊と、それをじっと見つめるカールの姿が映し出される。

「よさぬか!まだあったのか、そんなものが!!」「わぁ懐かしい!ドモンが来たばっかりの頃ね!」


にっこり笑って動画を停止。

よく見ればナナの胸が一回り小さいように見え、「あの頃は若かったわ」とナナが遠い目で夜空を見上げたが、曇っていて特に何もなかった。


「まあ独り占めは言いすぎたけど、もう戦争なんて起こらないだろ?しばらくは」

「起こらぬであろうな。あの様子であれば」サミットを思い出すカール。


サミットの開催、そして協定による連合国家の設立。

ドモンの思うままに事は進み、近隣の国家同士の争いはなくなった。


「あとひとつ、絶対にやらなきゃならない事がある。その為なら俺はなんだってやる」

「何をだ」

「人権宣言。この世界から身分の違いと人種差別を消す。王族も貴族も人間も魔物も皆平等とする」

「・・・はぁ?」


ドモンの答えに変な声が出たカール。

この街で不敬罪が無くなったことすら歴史的な大改革なのである。


ドモンは気軽に王族と話をしているが、実際には王族は神格化までされており、ドモンの言っていることはあまりにもあり得ないことだ。

人と魔物との差別を無くすという理想は理解できるけれど、実際には魔物達が単独で土地や家を持つことは認められておらず、商売も間に人間が入っていた。

ザックとジルの店やゴブリンの村の温泉も、貴族や王族が認めてようやく商売が出来るようになっている。


そもそもその考えなら、あの魔王も王として認め、そしてその国も認めなければならない。


「国王陛下に王をやめろというのか・・・」

「そんなことはないよ。王様は王様でいいけど、ひとりの人間だよってだけだ。もちろんカールもな。役職が貴族ってだけになるけども」

「そんな事がこの世界で許されると思っているのか?!」

「許してもらうさ。無理やりな」


ドモンはポンと一度、胸ポケット辺りを叩いて笑ってみせた。




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