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第593話

ゴブリンの村を出発したドモン達は、また異世界と繋がる出入り口がある崖へとやってきた。


以前までは自分達の役に立つ物や調味料などが買い物のメインだったが、今はあの時と事情が違う。

なんでも作ることの出来る天才のギドがいて、権力のある国王も友人だ。


もっと住みよい世の中に・・・なんて高尚な考えはドモンにはないが、やはりこの世界は電気工学が必要。

その為の本を山程買ってこようと思っていたのだ。自分の命が尽きる前に。


もちろん披露宴に必要なものや新しい服も購入するつもりだが、大量の薬と医学書も購入予定。

こうなればもう自棄ではないが、残る者達のため、この世界を一気に発展させるつもりであった。


ついでに六芒星の光が時間経過によって復活していないか?の確認と、向こうの医療でなんとか寿命を伸ばすことが出来ないか?も調べたい。

それが出来ないならば・・・母やケーコに最期のお別れをしておきたいところ。


「これがあんた達・・・ドモン様が言っていた異世界の入口?」とアイ。

「だからその呼び方はやめろって。まあ入口というか、俺にとっては出口だけどな」


「光は・・・増えていないわね。残りひとつのままだわ」崖の六芒星を覗き込んだナナ。

「時間で光が増えるってことはないかぁ。残念だけど今回ナナを連れては行けないな」

「行けたとしても私はもう遠慮しとくわ。どうせまた酷いこと言われるだけだし」

「まあ、確かにな」


ナナはもうこりごり。

ドモンには悪いが、向こうの世界など滅んでしまっても構わないとさえ思っていたこともあった。


そのせいもあってか元の世界は各地で天変地異が起こり、大変なことになっているということは、ドモンもナナも知らない。



「じゃあナナ、金貨10枚また借りとくよ」

「ケーコさんと連絡取れたらいいね。・・・でもスケベなことは」

「しないってば!それと連絡が取れなくても、ケーコがいくらかはお金を通帳に入れてくれてるはずだから、多分それで間に合うよ。今回は買う物も大体決まってるし、時間もお金もそれほどかかんないだろうしな」

「約束よ?じゃあほら、いつものして」


胸を突き出し目を瞑るナナ。アイが不思議そうにキョロキョロと、ふたりの顔を交互に覗き込んでいる。


「なにしてるの?あなた達」

「おまじないなのよ。これをするとドモンがきちんと帰ってこれるから。ほらドモン、早くして」

「別にそんなおまじないなんかない気がするんだけど・・・多分向こうにもう行けなくなるだけで、帰ってはこれると思うぞ?」

「は・や・く!」「???」

「わかったよもう・・・じゃあやるぞ?」


両手でむんずとナナの何かを鷲掴みにし、これでもかというくらい濃厚な口づけをしたドモン。

それをされたナナも、それを見てしまったアイも、へなへなとその場に座り込んだ。


「じゃあアイちゃん行ってくるから、ナナが起きたら車の中で一緒に待っててくれ。それと最初に食べ物を先に届けるから、ナナと一緒に食べてて。食べ物が届いたなら俺も帰れるってことだから、安心していいって言ってたとナナに伝えといてよ」

「わかったわ。あ、あとほら・・・一応私にもおまじないしときなさいよ、今のうちに。でもあんな激しくじゃなくていいからね?」

「・・・もうどうなっても知らんぞ」

「え?ちょ?!おほおおお・・・」


結局アイも失神してしまい、ナナと一緒に草むらにゴロリ。

それと同時に木陰にいたオークキングが現れ「お二人のことは、目覚めるまで見守りしておりますのでご安心ください」と、ドモンに声をかけた。

ナナとアイは気がついていなかったが、ドモンはかなり前から見つけていたのだ。


「うん、頼むよ。オークキングも一応おまじないしておくか?」

「お、お気持ちだけ受け取っておきます」

「アハハ冗談だよ冗談!じゃあ行ってくるわ」

「行ってらっしゃいませ」


崖にある六芒星に手を当て、白い粒子となって消えていくドモンを見送るオークキング。

そんな趣味はないはずなのに、ナニかを異常なほど元気にさせてしまった姿を、オークの女達がニヤニヤしながら見守っていた。



ドモン、再びウオンへ。

とりあえずケーコにメッセージを送ってみたが、仕事中なのか既読にならず。

仕方なくATMへ貯金を下ろしに行ったところ、百万円近くの残高になっておりドモンは驚いた。

恐らくケーコが最後に渡した金貨を換金し、入れておいてくれたのだろうと思われる。


「じゃあ少し奮発して、オーク達の分のハンバーガーも買ってやるか。あの時ももうかなり値上げになってたから、ワックも俺に取っちゃ高級品だからな」


・・・などとブツブツ言いながら、メニュー表を見てもっと大きな声を出した。

この半年か一年で何があったのか、全ての価格がとんでもなく跳ね上がっていたのだ。


「嘘だろ・・・バーガーセットの値段でラーメン食えるじゃねぇか!何があったんだよ」


ドモンは知らなかった。

世界中で起きた天変地異、戦争、そして流行り病。それらによる大不況。


「株価が上がったって、俺らには関係ねぇもんなぁ。給料はさほど上がってねぇのに値上げばっかりだ」

「しょうがないよ。雨は続くし地震も起きるし。ガソリンだって173円とかなんだよ?原材料から何から輸送費が跳ね上がってるんだから。世界中どこも一緒よ」

「チッ!せめてガソリンだけでもなんとかしろよ、あのバカゴミ増税クソメガ・・・」


メニューを睨むドモンの後ろを通り過ぎたカップルが、親切にも現在の情勢を語ってくれた。

どうやら日本だけではなく、世界中がとんでもないことになっているのだと・・・。


「ま、もう俺の知ったこっちゃないけどな」

「いらっしゃいませ~・・・ってあれ?!」


ドモンの接客を行ったワックの店員が、素っ頓狂な声を上げ、周囲の人々の視線がドモンに集まった。




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