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第577話

「何事だ。まだこっちの話は終わっておらぬぞ」

「も、申し訳ございません!ですが、すぐにお伝えしなければならない要件でありまして・・・」

「なんだ?」

「ハッ!国王、並びに王族の皆様方、更にシンシア様のご両親であられる国王様と皇后様がこちらに向けご出立なされたとのこと!」

「な、なにぃ?!」「え?」


ガタンと椅子を倒し、立ち上がったカール。

ドモンも思わずタバコの灰を床に落とした。


「ドモン貴様!!」

「違う違う!呼んでないよ俺は。大体向こうの城やシンシアの国の城でも披露宴をやるから、こっちには来なくていいって言ってたんだ。はっきりと」


サミットを行った時も、どれだけの期間をかけて準備をしたか。

警備に関するリハーサルを何度とこなし、段取りに関しての会議も数十回と行い、各国の一流料理人達が寝る間も惜しんで料理の準備を進め、住人達の協力だけではなく、ゴブリンやオーク、オーガの力も借り、それでようやくサミットを開催出来たのだ。


今でこそその恩恵を受け取れているが、かかった費用は年間予算の数十倍から数百倍。

ドモンが建てたビルがいくつか建てられるほどである。

資金繰りのため、恥を忍んでカールが各方面に頭を下げてきた。

この調子で税収が増えたなら、十数年で完済出来る予定だけれども。


「ここへはいつ?」

「ハッ!早くて五日後には・・・」

「五日・・・」


カール、ゆっくりと絶望の着席。

ドモンとヨハンは言葉もない。


元の世界で天皇陛下がただ道を車で通過するのにも、どれだけ警備や準備が必要なのかはドモンも知っている。

ドモンもたまたま見学の列に混ざり、そして取り押さえられた経験があった。

両手を上げてホールドアップしているドモンに向かって、車の窓から覗く陛下がニコニコと手を振っていたのは、ドモンにとって良い思い出なのか、悪い思い出なのか?


「ま、まあ俺からも言っとくよ。そんな準備はしてないから、過剰な期待はするなって」とカールを慰めたドモン。

「あ、あとその・・・国王陛下がその・・・この度ドモン様らが族に襲われたことに関して、かなりご立腹なご様子だと・・・」

「なに?!」

「返答によっては身分と財産を剥奪の上、その首はないと思えと伝えおけとのこと・・・」

「!!!!」


騎士の言葉に、ドモンも見たことがないほど顔面蒼白となるカール。

カールにとってドモンはかけがえのない友人だが、国王であるトッポにとってもまた、かけがえのない友人であり、先生であり、兄でもあった。


つまりドモンが襲われることは、国王自身が襲われたのとほぼ変わりがないということ。

わかっていたつもりだったが、カールにはまだそれを理解しきれていなかったのだ。


「だ、大丈夫だよ。ドモンがなんとかしてくれるし、俺からも言っておくよ。ここでは国王陛下も俺等の息子のようなものだし。なぁエリー」「そ、そうねぇ」・・・と、慰める他ないヨハンとエリー。

「ギロチンの刃はしっかり研いでおくんだぞ?カールがあまり痛くないように・・・」ポンとカールの肩を叩く無慈悲なドモン。

「ぐぬぬぬ・・・」

「短いようで長い、長いようで短い50年だったな。カールのお墓には毎年ザンギをひとつお供えするよイタァ!」


カールはドモンの頭にゲンコツをひとつ落とし、「明日必ず屋敷に来い!必ずだぞ!」と捨て台詞を吐いて去っていった。

ドモンがこう冗談を言ったということは、絶対にそうはさせないということ。帰りの馬車の中、カールはホッと胸を撫で下ろした。

それでも出来得る限りの最善を尽くさなければならないが。



「明日は早くに屋敷に行ってあげなさいよ?ドモンさん」カールが座っていた席に座るエリー。

「え?やっぱり行かないと駄目かな?街を見て回りたいんだけど。温泉も入りたいし、ボスの店で遊びた・・・挨拶もしに行きたいし」

「駄目よぅ!もうっ!」


久々に見たエリーのピョンピョンの迫力は、やはり桁外れ。

エミィも負けてはいないが、柔らかさが違う。何かの。


「まったくお前さんときたら・・・その襲われたってのは結局大丈夫だったんだろう?」とヨハン。

「ん?ああ・・・まあ。そうだ!そんなことより、そこの宿ってのが実は罠で、面白い話があるんだよ」


何があったのかを詳しく話し始めるドモン。

サンは赤い顔をして、アイが眠っている自分の部屋に引っ込んだ。目覚めたナナも何やら話があるとシンシアを連れて自室へ。


「なんだいそりゃ?!全部覗かれてたってのか!」「・・・・」

「そうなんだよ。こっちからは一切見えないのに、向こうからは丸見えで」

「まったく・・・で、これからは心を入れ替えて真面目に商売するって?」

「逆だよ逆。俺の考えで、反対にそれを利用することにした。裸を見せたい人に無料で宿を貸し、見物客から多く金を取ることにしたんだ。興奮した客から手出しされることはないし、安全にスケベな身体を見せつけることが出来るってことだ。もちろん、裸を見せて稼ぎたい女も雇うけども」

「ほ、ほほう。まあうちには縁がない話だな」「・・・・」


ドモンの話に妙にソワソワしだしたヨハンとエリー。

ガバっとエールを飲み干して、仲良く部屋に戻っていった。


ドモンはリビングに残りトッポへの手紙を書きつつ、そのままソファーでうたた寝してしまった。

やっぱりこの家が一番落ち着く。もう元の世界の元の家よりも。



後日談だが、ドモンらが再び旅立った数日後、店を休みにしたヨハンとエリーがどこかに小旅行に行き、ものすごく仲良くなって帰ってきたとのこと。

皆が何を聞いても、エリーはニコニコと「美味しいパスタを食べてきたの」と笑っていたとか。





天皇陛下通過時ホールドアップ事件も、当然実話である(恥)



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