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第550話

「ん?どうした?」


ドモンがトイレから戻ると、部屋はなんとも重苦しい雰囲気。

ナナは鳴らない口笛を吹きながら、ソファーに寄りかかってそっぽを向いていた。


「まあその謎の人物のことは置いといて、問題はこの宿をこれからどうするかだよな」

「あ、あの・・・」「えぇと」「・・・・」

「ん?どうかしたか?」

「ド、ドモンあのね・・・どうせこのまま黙っていてもいずれバレちゃうだろうし、言っちゃったのよドモンのこと」ポリポリと頭をかくナナ。

「お前な・・・お前も仲間なんだから、懸賞金は出ねぇからな?ま、いいや、その時はその時だ。いざとなったら騎士かオーガあたりに助けてもらおうっと」


正体がバレても特に焦ることのないドモンとナナ。

今何かあったとしても、呼べば外にいるオーク達が駆けつけてくれることだろう。

オーナーらも当然それを理解していて、事を荒立てるつもりもないし、もうあんな目に遭いたくもない。


「憲兵どころか、き、騎士やオーガに助けてもらおうだなんて・・・それにボスが懸賞金を出すだなんて言ったのも初めてのことだ。あんたら一体何者なんだ?!」「そうよ!騎士なんて、貴族や王族じゃないと動かせないわよ」オーナー夫婦はもう逆らうつもりもない。

「オーガなんて、たとえ王族だって従わせるのは無理じゃないか??あ、いや、最近オーガが王の護衛に就いたとかいう噂は聞いたか」雇われ店長も思わず口を出した。


「あんたら実は『王族でした』だなんて冗談みたいなこと言うんじゃないだろうな?もしそうなら、ボスからの報復よりも恐ろしい結末しか想像つかねぇよ」オーナーがヤレヤレのポーズ。

「私達は王族なんかじゃないわよ。まあ王様がドモンの子分みたいな感じにはなっているけど。ね?ドモン」ちょっと自慢げなナナ。

「バカ!子分なんて持っちゃいないよ俺は。知り合い・・・まあ友達なだけだ」トッポが聞けば飛んで喜びそうなドモンの言葉。


「それにさっき一緒にお風呂に入っていたのが、この前戦争になった国のお姫様よ?その裸を見せて商売してたとあっちの国の王様に知られたら、あなた達の首がどうとかよりも、まーた戦争になりかねないんだから」

「ひ、ひぃぃ!」「嘘?!どうしてこんなとこにお姫様がいるのよ?!」

「それには深い理由が・・・」「ドモンがお姫様を第三夫人として娶ったから、友好関係が結ばれたようなものなのよ」

「あ、あんた本当に一体何者なんだ?!??」


調子に乗り、ポンポンポンポンと出てくるナナのドモン自慢。

自分を狙っているであろう野盗のボスに、あまり素性を知られたくないドモンはなるべく隠そうとしていたが、ナナのせいで全てが台無し。



「異世界人!そして生き返ったってのも本当のことだったのか!」驚いたオーナー。

「そうよ。そしてすっごくスケベなの!死んでる間、こっちは心配してたってのに、元の世界でスケベな店を何軒もはしごして!」

「そ、それは今は関係ねぇだろ!いい加減黙れよクソおっぱい!脳みそ空っぽのくせにおっぱいばっかり詰まりやがって!」

「それがどうかした?だからお母さんだってあんな感じなのよ!文句ある?!」

「文句ねぇけど・・・お前やエリーが寝てるとこ見てるだけで幸せだっつうの」

「そうでしょう~エヘヘ。お母さんのはダメだけど、私のはいくらでも見てちょうだい」


ここにきてドモンの『巨乳さん天然説』が立証されそうな深夜二時。

ナナは早いとこドモンと部屋に戻り、身も心もスッキリしたい所存。


「ん?ああそうか・・・」

「見るだけじゃなくって触りたいんでしょ?いいわよ、早く部屋戻ろうよ」

「いやそうじゃなくて、覗き部屋はそのまま利用してもいいんじゃないかなって。俺の世界にもあったんだよ。マジックミラー越しに覗ける店が」

「今の商売を続けろっていうの?!あんなの犯罪よ??」

「いやいや、覗かれる方の女性は雇うんだよ。金を出してな」


ドモンはきちんとした風俗店としての営業を提案。

すすきので遊び回った経験が、今ここにきて活きた。


「人前でスケベを見せつけたい夫婦や恋人なんかも呼べばいい。世の中には必ずそういった趣味の人間がいるんだ。そんな奴らには説明をきちんとして、宿代をタダにでもしてやれば良い」

「・・・なんかお母さん、『別にいいわよぅ~』って言いそうで怖いわ」

「・・・まあ確かに・・・」


巨乳さんは天然でおおらかだけども、案外したたかでもある。

そしてサービス精神も旺盛で、つい男の期待に応えてしまうフシがある。


「いやいやいや。とてもじゃないけど、そんな店を正式に営業することなんて許されるはずがない。そんな事が出来たならとっくにやってるよ、こっちだって」「ホントよ」「確かに」オーナーやその妻、店長も口を揃える。

「それはまあ・・・きっとなんとかなるわよ。どうせなんとかするんでしょ?」チラッとドモンの方を見たナナ。

「まあね。ただそれによって、俺の居場所がそのボスとやらにバレるんじゃないかって心配はあるけどな」


ドモンが何かの文章を書いてドモンの印を押し、街道の見回りをしていた憲兵にそれを渡すと、飛び跳ねるように馬を反転させ、憲兵はカルロス領の方へと去っていった。その様子を傍で見守った一同。


「本当に・・・あんたは一体何者なんだ・・・」

「だ・か・ら!元ギャンブラーからやってきた異世界スケベ人間よ」

「お前な、それを言うなら『異世界からやってきた元スケベのギャンブラー』だろ。ん?あれ?なんか違うな??」

「あんたはまだ現役でスケベよ。さあさっさと部屋に戻ってすることして寝ましょ」

「しないよ」「するわよ」「もう寝ようよ」「絶対に寝かさないわ」


ナナはドモンの右腕を掴んで胸に挟み込むようにしがみつき、部屋へと戻っていった。





あけましておめでとうございます。


酒や煙草はなんとなく行けるようになったけど、喉のヒューヒューゼーゼーが治まらない。

花火やって煙を吸い込んで、しばらく喉がヒューピーと鳴ることがあるけど、あれが10日以上続いている状態。まいったなぁ。



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